VSアイドル③
6ターン目。
空 ライフ15 手札4。
みかん ライフ8 手札3。
空のターン。
真琴は闘技場の外から、空の戦況を分析していた。
(あの大魔王ドールを破壊しないかぎり、師匠に勝機はない。でも、呪文は人形師と身代わり人形のコンボで防がれてしまう。だったら人形師を先に攻撃して破壊してから、そのあとで、呪文で、大魔王ドールを狙えば・・・・)
「オレのターンドロー・・オレはダメージリフレクトスライムを召喚」
空の場に、鏡のようなスライム族モンスターが召喚される。
カード情報。
ダメージリフレクトスライム レベル2 種族 スライム族 属性水 超能力????
「ダ―メジリフレクトスライムで人形師を攻撃!リフレクトチョプ」
鏡の横で殴るような一撃が、人形師を襲う。
「甘々よ空!あたしは大魔王ドールの超能力を発動。大魔王ドールは、他の人形族モンスターへの攻撃を、変わりに受けることができる」
「!」
身代わりとなった、大魔王ドールと、ダメージリフレクトスライムの攻撃がぶつかる。
「リフレクトチョップ」
「大魔王インパクト」
レベル2対レベル16の戦い。
初めから勝負は見えていた。
ギュアアアアアアアアアアアアアア。
大魔王ドールのミキサーパンチが、ダメージリフレクトスライムを粉砕する。
「ダメージリフレクトスライムを破壊」
「ああっ!」
真琴はその惨劇に声をあげる。
だが空は、手札に触れ、モンスターの超能力を発動させた。
「オレは手札のリバイブススライムの超能を力発動。このモンスターを手札から相手に見せることによって、このバトル中1度だけ、レベル3以下のスライム族モンスターを再生させることができる」
破壊されたダメージリフレクトスライムは、墓地にはいかず、その場で再生された。
「はふー助かった・・」
真琴は大きく息を吐く。
みかんはいま、自分が有利、そう判断して空に言う。
「ふふん。どう、あたし強い?」
「ああ強いぜ でも負けないぜ」
「あ・・あたしだって、絶対負けるわけにはいかないんだからね」
回想。
7年ほど前のこと。
みかんの自宅で、空とみかんは、カードバトルをしていた。
「空、あたしが勝ったらいうこと1つ聞いてもらうからね」
「うん、いいけど」
二つ返事で空は答えた。
それを聞いていた、みかんの母は。
「あら みかんちゃん・・空くんのお嫁さんにしてもらうの?」
「なっなななななななななな・・ち・・ちがうもん!何いってるのママぁ!バカじゃない」
その言葉にみかんは、顔を真っ赤にして否定する。
「あらそうなの?・・・でもこのまえ、空くんがみかんちゃんの失くした大切なカードを見つけてくれた時、ママに言ったじゃない、空くんの・・・」
「わーわーうるさいママのバカーーーどっかいってーバカーーー」
回想終了
かあああああ。
みかんは過去のことを思い出し赤面する。
その様子を見て空は。
「?・・どうしたみかん?さっきから顔が赤いぜ」
「な・・なんでもないわよ、バカぁ」
「・・・そっか、じゃあオレのターンは終わりだ」
7ターン目。
空 ライフ14 手札3。
みかん ライフ8 手札3。
みかんのターン
「あたしのターンドロー」
みかんは戦況を分析した。
(あたしの手札には身代わり人形2枚。モンスターカード1枚、呪文カード1枚の計4枚。
そして場には魔王ドールと人形師がいる。この状況は断然あたしが有利ね・・・・でも、相手はあの空。油断できないわね、それに・・・あのダメージリフレクトスライムってモンスター・・何かやっかいな超能力を持っていそう・・・・うかつに攻撃しないほうがいいわね・・なら)
みかんは呪文を発動させた。
「あたしは呪文ドールアタックを発動!墓地にいる人形族モンスター2体をデッキの一番下に戻すことによって、レベル5以下の相手モンスター1体を破壊する。あたしはダメージリフレクトスライムを選択」
墓地にいる2体の人形族モンスターの魂が、ダメージリフレクトスライムを襲う。
「ダブルドールアタック!」
その瞬間、空は呪文を発動させた。
「呪文発動スライムシャッフル!場にあるスライム族モンスター1体を手札に戻すことによって、手札にある別のモンスター1体を場に呪文召喚できる」
呪文効果によって、ダメージリフレクトスライムは手札に戻る。
「呪文で回避された!」
(・・・でも、ダメージリフレクトスライムは場から消えたわ)
そして、ダメージリフレクトスライムの代わりに、あらたなモンスターがでてくる。
「オレは鏡の国のアリスを出す」
場に、レベル5の、鏡の盾を持つ女性型モンスターが呪文召喚される。
(!・・・あのカードは・・・・まさか・・!)
そのモンスターを見たみかんは驚く、そして過去の出来事を思いだす。
「みつけたよみかん」
「ありがとう空」
「それ大切なカードなの?」
「うん、お母さんに買ってもらった大切なカードなの」
「空、引っ越すの!」
「・・・うん」
「・・ううっ・・・じゃあコレあげるぅ・・」
「いいの?大切なカードなんじゃ・・・」
「いいからあげる・・・ううっ」
「じゃあオレからはこれをあげる」
(あれは・・・あたしと交換したカード。ずっと持っていてくれたんだ・・・・・でも、いまは破壊させてもらう。勝つために)
「大魔王ドール 鏡の国のアリスに攻撃!大魔王インパクトオ!」
大魔王ドールの一撃が、鏡の国のアリスを襲う。
その瞬間空は、超能力を発動させる。
「鏡の国のアリスの超能力発動!手札のカード1枚墓地に捨てることによって、場にあるモンスター1体の超能力をコピーする」
「!」
(・・・まさか、あの超能力!)
「オレがコピーするのは・・・人形師!」
空は人形師を指さし選択した。
鏡の国のアリスの持つ、鏡の盾に、人形師が映り込む。
「!・・・・空、あんた・・・・・手札から出す気?」
「ああ、場にいないなら・・・手札からひねりだせばいい。コピーした人形師の超能力でダメージリフレクトスライムを超能力召喚」
鏡の盾から、人形師のあやつり糸が射出される。
空のバーチャル手札の1枚を捕え、そのカードのモンスターを引きずり出すように場に、超能力召喚させた。
そのモンスターは、ダメージリフレクトスライム。
「すごい師匠!相手の超能力を利用して、ダメージリフレクトスライムを出すなんて。あんな戦い方・・・ボクには思いつかないよ」
真琴は空の頭脳プレイに関心する。
だが空は、考えたと言うより直感でプレイしていた。
「そしてさらに手札を1枚墓地に捨てることによって。ダメージリフレクトスライムの超能力をコピーする」
「!」
鏡の国のアリスの持つ、鏡の盾が、今度はダメージリフレクトスライムの姿を映しこむ。
「ダメ―ジリフレクトスライムの超能力は、相手モンスターに攻撃されたとき一度だけ、そのレベル分のダメージを相手プレイヤーに跳ね返す」
「なっ!」
大魔王ドールのレベルは16。
この攻撃が反射されれば、ライフ8のみかんは負けてしまう。
「だ・・ダメェ!大魔王ドールの攻撃が止まらない。」
大魔王の攻撃は反射され、みかんを直撃。
「大魔王インパクト返し!」
「きゃああああああああああああああ!」
みかんは16のダメージを受け、ライフ0となる。
『勝者 空選手』
勝利者のアナウンスが流れる。
「はあ・・・負けた・・・・ふぅー・・・でも強いわね空・・・やっぱり」
負けたみかんの顔は、どこか晴ればれとしていた。
きっと空が、昔のまま強かったことが、嬉しかったのだろう。
みかんは空に近づき、少しモジモジしながら尋ねる。
「そ・・その・・・空」
「ん!」
「これだけやりあったんだし、もうあたしのこと思い出したでしょ?」
「まったく」
ブチブチブチッ。
血管がたくさん切れる音がした。
「ううっ・・・・うがーーーーーーーーーーーーー!」
「!」
みかんは大声で叫び出すと、涙目で。
「もう知らない。空なんてバカッ帰る。バカバカバカバカバカバカバカバカバ――――――――――カ空なんてバ―――カ」
みかんは去っていた。
「・・・・・帰っちゃいましたね」
「ああ、楽しいバトルだったな」
次の日、教室。
「空!コレを見なさい」
「!」
いきなり現れたみかんは、空にこう言った。
昨夜のこと、みかんの自宅。
リビングにはみかんと、その母親がいた。
母親はあきれた顔で言う。
「もうみかんちゃんったら素直じゃないわねー教えてあげればいいのに、正体」
「やだ」
みかんは不貞腐れた顔で言う。
母親は、ふぅっと息を吐き、諭すように言った
「このまま教えなくていいって・・ホントにそう思っているの?」
「・・・・・・・・・・・やだ」
「じゃあ、勇気出して言わなくちゃ」
「・・・・いまさら言えるわけないよぉ」
すこし涙目だ。
「じゃあ言わなきゃいいのよ」
「?」
「あのカードを、あの思い出のカードを見せればいいのよ」
「・・・・・・・・あのカード」
教室。
みかんは空に命令する。
「空、目をつぶりなさい」
「?・・・なんで?」
「いいから早く!」
「・・・・・・・・」
空は椅子に座ったまま目をつぶった。
ゴソゴソ。
みかんはバックから、一枚のカードを取り出す。
(このカードは、あのとき交換したカード。あたし達の思い出のカード・・・コレを見せれば絶対に思い出すはず)
みかんはバンっと、空の目の前で見せようと思い。
カードを持つ手を、振りかぶり、目の前まで勢いよく振り下ろす。
その姿は一見、みかんが空を殴ろうとしているようにも見えた。
「あ!ダメですよ!ケンカしちゃ」
その場面を偶然手洗いから帰ってきた真琴が、目撃してしまう。
その光景をケンカと勘違いして、止めようとダッシュで駆け寄る。
ガッ。
「あ!」
真琴はつまづき、そのまま勢いよく、みかんの背中にタックルする形でぶつかる。
ドン。
「!」
そのまま、みかんは前に倒れ、空とキスしてしまう。
「んゆぅ~~~~!」
「!」
みかんは奇声をあげながら、目をパチクリした。
いきなりの出来事に、茫然としてしまい、結構長くキスしてしまった。
「ぷはぁ・・・・」
二人のキスは終わった。
「な・・・なななっ・・・」
みかんの顔が湯でタコのように真っ赤になっていく。
そして空に向かって怒鳴る。
「な・・・何てことしてくれてんのよ!」
「いや、されたんだけど・・・・・・・・・・でもごめん」
「え?」
「キスを見せられても、ぜんぜん思いだせないや」
「そ・・・・そういう見せるじゃないわよ!・・よ・・よくもあたしのファーストキスを奪ってくれたわねー」
「どちらかというと奪ったほうじゃ・・・・」
ギロ。
よけいなことを言う真琴を、みかんは睨みつけた。
「ひっ・・・ご・・ごめんなさい。ボクのせいです、ごめんなさい」
「大丈夫、事故だからファーストキスじゃないよ」
「!」
空の一言に場が硬直する。
そして空は、自らの持論を展開させる。
「ファーストキスって、好きな相手とするからファーストキスなんだろ?だったらこれはファーストキスじゃないよ、事故なんだから」
「へ?」
その言葉にみかんは、さらに固まってしまう。
「あ・・・・そ・・そうね・・・たしかにそうね・・・・・・・・・・・・・って、ち・・ちがーーーーーーーう!」
一瞬納得しかけたが、それを否定するように首を横に振り、空を怒鳴る。
「ファーストキスよ!これはファーストキスです!れっきとしたファーストキスなんですー!責任とりなさい!」
「えー・・・そーいわれても」
空は困る。
「ご・・ごめんなさい、みかんさん、師匠、ボクのせいで二人の貴重なファーストキスが・・・」
「いや大丈夫。オレ、ファーストキスじゃないから」
「はあ?」
その空の言葉に、みかんは目を丸くする。
「セカンドキスだ」
「はああああああああああああ!」
その声は教室中に響きわたる。
「ど・・どういうことよ一体!相手は誰!男?女?どっち!」
「そ・・そんなの決まってますよ」
「名前は?どこの誰よ」
みかんは掴みかかる勢いで空に問いただした。
「秘密 それは言わない約束だから」
ブッチン。
「う~~~~~~空の・・・バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ!」
大声で叫び、教室を出ていく。
振りかえり。
「いーーーーだ」
みかんは去っていった。
「な・・なんか騒がしい人だったですね・・・」
「ああ、あいつ・・昔のオレの友人にそっくりなんだよな」
「へ?じゃあ、あの人がその人なんじゃ」
「いや違う。だって・・・・」
空の自宅。
リビングで、空と母親がテレビを見ていた。
「あらこの子 宮城みかんちゃんじゃない」
テレビには中学生アイドル オレンジちゃんの特集をしていた。
「あなたの友達だったわよね」
「ああ」
「アイドルになったのね」
「ああ」
「髪も伸びて、見た目も性格も、かなりかわいくなっちゃったわね」
「ああ、あいつもがんばってるな・・・オレも夢を叶えるため、がんばらなくっちゃな・・・また会えたらいいな・・みかんに」
「たしか親が離婚して、苗字が変わったらしいけど・・・なんていったかしらね?」
「さあ」
みかん自宅。
「くちゅん」
「みかん風邪?はやく出なさい。長風呂はアイドルに天敵よ」
「くちゅん」