VSアイドル①
学校。
「師匠!」
「!」
朝、真琴が空に話しかけてきた。
「師匠って呼ばせてください師匠!」
「コショウ?」
「ち・・・違います。師匠です!僕の師匠になってください。空くん」
「断る!」
「はやっ! 」
空はキッパリ断った。
その即答に真琴は、ややショックを受ける。
「ど・・どうしてですか空くん?理由を教えてください。」
「だってオレたち、友達だろ?友達を弟子扱いなんてできないさ」
「空くん・・・・でも、ボク、昨日、空くんがカードバトルをしているところを見て、ホレちゃったんです。ボクも空くんみたいになりたいんです。お願いします。弟子にしてください、おねがいします」
「全力で断る!」
全力で断られ、真琴はヘコんだ。
へこみながら、へこたれず聞いた。
「り・・理由は?」
「めんどい」
真琴は、本気でヘコんでしまった。
「そ・・・そんなぁ理由でぇ・・お・・お願いします空くん・・・・それともボクが弟子じゃ、なにか不満でも?」
「不満だらけだ!」
ガクガク。
真琴の精神ライフは1になった。
フラフラの状態で尋ねる。
「ど・・どこがですか?一体全体どこがですか?」
「ぜんぶ!」
がくっ。
真琴は膝をついた。
ライフ0。
「そ・・・そこまでェェ・・・・」
真琴の肩を空はポンと叩く。
「真琴がオレに、師匠になってもらいたいように、オレは、真琴に、大切な友達になってもらいたいんだぜ」
「・・・・・・・そ・・空くん・・・・わ・・わかりました・・・じゃあせめて、あだ名だけでも師匠って呼ばせてください」
「断る!かっこ悪い」
が~~ん。
結局のところ空は、師匠と呼ばれたくないだけのようである。
涙を浮かべ、何かを訴えかけてくる真琴に、空はなんとなく罪悪感を覚え。
「ま・・まあ、でも、真琴がそう呼びたないなら、呼んでもいいぜ。どうせすぐなれるしな」
空は妥協した。
「ホントですか!じゃあ師匠!これからもよろしくお願いします師匠」
「ああよろしく」
二人は握手をした。
友情はさらに高まった気がする。
「師匠、師匠、師匠、ししょーーーーー」
喜びのあまり真琴は、そのあだ名を連呼する。
それを聞いた空は、顔をしかめ。
(やっぱ、かっこ悪い)
と思うのであった。
空は真琴に提案する。
「じゃあ、友達になった記念で、授業をサボって、屋上でモンスタートランプしようぜ」
「えええええええええ!」
「いいじゃん記念なんだし」
「・・・・・・でも・・でも・・」
ノリノリでニコニコの空だが、真琴はどこか乗りきれない気持ちだった。
そのときの空の一言が、真琴の人生を変えることになった。
「オレたち友達だろ?」
「はっ!」
真琴は気づく、本当に大切なものが何なのか。
真琴は親に言われ勉強ばかりやってきた。
だが世の中には、勉強より何倍も大切なことがあるじゃないか、それに気づく。
「わ・・・わかりました・・・屋上でサボってモンスタートランプしましょう」
「おおー」
「い・・・1日くらいサボっても許されますよね?記念ですし」
「ああ」
一時限目が終了。
キ―ンコーンカーンコ――ン、チャイムが鳴る。
職員室。
「許される訳ねぇーだろバカヤロー!」
「ご・・ごめんなさい」
担任の有坂 凛に、空と真琴は、怒られていた。
「なにが友達になった記念だ、意味わかんねェーよバカヤロー。そんなんで授業サボっていい訳ねェーだろバカヤロー」
そんな有坂 凛に、空は反論した。
「サボってませんモンスタートランプは」
「授業だバカヤロー!遊びには全力かバカヤロー!」
手近にある教科書を丸め、空の頭に振り落とした。
空は回避した。
「避けんなバカヤロー!・・・・・・・ったく、真琴ぉ、おまえはこの学校で一番成績がいい生徒なんだぞ・・・こんなカードバカに乗せられて・・・ったく」
真琴はさっき気づいた、本当に大切なものについて言った。
「勉強より友達のほうが大事です」
バコン。
殴られる。
「勉強のほうが100億倍大事だよ、バカヤロー」
「あうー・・・」
(せっかくいいこと言ったのに・・・)
「ったく、そういえば今日、また転校生くるんだが、まだ、こいつも来てねェーし」
真琴(転校生!)
「ったく、近頃の転校生は、学校を舐めているのかねー何考えてるか、さっぱりわからん。こんなじゃ学校やめて、結婚したほうマシだって気がするぜ」
「・・・・彼氏は・・・」
「いねぇーよ29年も、バカヤロー!」
真琴が彼氏はいるんですか、と言い終わる前に、凛は答えを返す。
相当言われ慣れているようだ。
即答できるくらい。
凛の頬を涙が伝う。
「な・・泣かないでください。先生」
真琴は対応に困る。
ガラッ。
そのとき職委員室のドアが開き、一人の少女が入ってくる。
髪はオレンジに近い茶髪。
髪の長さは肩にかかるくらいだ。
少女はどうやら遅刻したらしく、いい訳を言い始めた。
「す・・・すいません仕事で・・じゃなかった・・都合で遅刻しました。すいません」
「!」
空と少女の目が合う。
少女「あ!」
空「?」
「あああああああああああああああああああああああああっあ・・・・あんたは大空 空ぁ!ど・・・どうしてここに?」
「?」
「知り合いですか師匠?」
「いや、まったく」
ビキッ。
血管が切れる音がした。
みかんはその場で、ぷるぷると震えている。
「・・・・こ・・この・・・あたしのことを忘れたですって・・・・・・・・・・」
「知らない」
「?」
「あたし、あんたのことなんて、まったく知らないだからね!」
大声で空を指さし、そう言った。
「い・・いや・・でも師匠の名前を」
「ヤマ勘よ!」
「す・・すごいヤマ勘だ」
その会話を担任の有坂 凛は、頭を抱え、ため息をつきながら聞いていた
「・・・・東大いけるなバカヤロー」
2―A教室。
2時限目の授業前。
教室のドアが開く。
「おーーーいみんな席につけ」
担任の有坂 凛とさっきの少女が教室に入ってきた。
空と真琴は、あのあと一旦教室に戻り、席に着席していた。
「あっ!さっきのあの人」
「う~~ん」
「!」
真琴の前の席にいる空が、何か考えごとをしている。
「どうしたんですか?師匠」
「う~~ん。思い出せない」
(・・・・・やっぱり彼女に何か心あたりが・・・・)
「今日は転校生を紹介する。愛媛 みかんだ」
「・・・・・・よろしく」
愛媛みかんと紹介された少女は、無愛想に挨拶した。
「じゃあ・・・さっきの・・あいつの隣の席に座ってくれ」
「・・・・・・はい」
担任の有坂 凛は、空の隣の席を指さした。
ざわざわと周りの音がうるさい。
その音に真琴は聞き耳を立ててみる。
「おい、あれアイドルのオレンジちゃんじゃないか?」
「たしかに似てるな。でも髪が短いぜ」
「アレはカツラとか」
「でも、あのかわいこぶりっこのオレンジちゃんとは、まったく雰囲気が違うぜ」
どうやら、あの転校生、アイドルに似ているらしい。
(アイドル?オレンジちゃん・・・ああ、あの中学生アイドルの・・・・・)
真琴は一度だけ、テレビで見たことがある。
フリフリのかわいい服を着て、歌って踊っている姿を。
(たしかに似ているかも、でも性格も違うし・・・・別人じゃないかな・・・)
「じ~~~~~。」
一人の生徒が、席に向かうみかんを、下から舐め回すように凝視している。
いやらしい気持ちでなく、アイドルのオレンジちゃんか、確かめるためだと思う
その視線の主にみかんは気づく。
「あん!何、見てんのよ!ぶっ飛ばすわよ」
「ひっ・・ご・・・ごめんなさい」
強い口調と眼光に、凝視していた者は、委縮してしまった。
(やっぱり別人?アイドルなら絶対、あんなことを言う訳ないよね・・・。それに彼女は、ファンサービスをするアイドルだって有名だし。わざわざ嫌われるような言動をする必要もない・・・やっぱり)
その言動により、皆の結論は、別人、という結果で落ち着いた。
みかんは自分の席にドカッと座る。
不機嫌そうだ。
きっと、さっきの職員室でのやりとりが原因だろう。
その原因になった空は、何かまだ考えているようだ。
「思い出した!」
「!」
空がいきなり、そう言って立ち上がる。
「お・・・・思いだしたの?あたしのこと・・・」
隣の席のみかんは、自分のことだと思い喜んだ。
だが違っていた。
「あのカードの名前!」
「!」
どうやら空はみかんのことではなく、モンスタートランプの何かのカード名について、思いだそうとしていたようだ。
「いやー思いだせてよかったー気持ち悪いよな。思い出せないと」
笑いながら言う空に、みかんの体は怒りで、プルプル震えている。
そしてみかんも席から立ち上がると、空に向かって叫ぶ
「大空 空、あたしと勝負よ!モンスタートランプで」
「・・・・・・・いいぜ」
その言葉を聞いて空は、二つ返事で了承した。
「な・・・なんか、しょ・・勝負、始まちゃった・・・・・」
いきなり展開についていけず、真琴を含め、クラスのみんなが茫然としていた。
「近くのバトルドームでいますぐ勝負よ!空」
「ああ、いいぜ。行こうぜ」
バチバチ火花が燃える光景を、みかんよりブチ切れている人物が見ていた。
それは、担任の有坂 凛だった。
「テメェーらァ!学校終わってから行けェ!このバカヤロー!」
その声は学校中に響き渡り。
これによって、凛の婚期は3年遅れたという噂だ。
放課後、バトル堂。
空とみかんは、バトル堂の地下の闘技場の上にいた。
「いい空、あたしが勝ったら何でもゆうこと聞いてもらうからね」
「ああ、いいぜ」
みかんの言葉に、また空は、二つ返事で了承した。
「い・・・いいんですか空くん?そんなこと言って・・・シネとか言われたら」
「大丈夫だって、きっとまたカードバトルまたしなさい・・・とかだって」
「す・・すごい・・・・楽観的だ・・・・」
空のポジティブさを見習いたい真琴だが、さすがにコレはどうかと思う真琴だった。
『カードバトル始めます。デッキスキャン』
ドーム内から女性的機械音で、アナウンスが流れる。
二人のデッキをスキャンしていく。
これによって、バーチャル映像でのカードバトルを可能にする。
「デッキスキャン終了」
『先行はみかん選手』
空とみかんの前に、バーチャル映像の手札が5枚出現する。
「さあ勝負よ。空」
「ああ勝負だ。みかん」
二人のカードバトルがいま始まった。