一郎VSドイツ代表 ゲッドバッド②
「!・・・な・・・なんだ、お・・おまえは・・・」
「俺か・・?俺は死刑囚のゲッドバッド様よ・・・ゲへへッ」
「し・・死刑囚・・・だ・・だと・・・」
「ゲへへッ・・そう・・そうだよ、俺はなぁ・・モンスタートランプの腕を買われ、この
大会で優勝できれば、死刑を免除してもらえるってことで、この大会に参加しているんだよ・・・よろしくな・・ゲへッ」
「ううっ・・・し・・死刑囚・・・」
ガクガクガク。
一郎はいまにも倒れそうなほど震えていた。
控え室でその様子を見ていた真琴が、マリアに尋ねた。
「ほ・・本当ですか?死刑囚なんて・・?」
マリアはあきれたようにため息をついた。
「そんなわけないだろう・・・そんな理由で、協会が、死刑囚を出すわけがない。もし出ているなら、私のところまで確実に連絡がきているはず」
「じゃあ」
「ハッタリだろうな・・・あの顔も特殊メイクで、死刑囚というのも嘘、相手を怖がらせて集中力を削ぐ作戦だろう・・・」
「そ・・そんなぁ・・・ずるい・・」
「だが、ルール上問題ない。ある意味アホな作戦だが、ある意味効果的だ・・・特に相手がビビりならな・・・」
マリアはモニターの一郎を見た。
「し・・死刑囚、な・・ななんて・・こ・・こここ、怖くないゾ。たたた、たかが、死刑囚ごときに、こ・・この天才のこの僕に負けるわけ・・」
ギロリ。
ゲッドバッドはそのモンスターのような風貌で、一郎を睨みつけた
「ヒィィィィィィ!」
「だ・・・だめだわ・・・これは・・・・」
「ダメどすな・・・」
「ヘタれすぎです・・・・伊集院くん・・・」
控室の、みかんと佐衛門と真琴は、すでに半分近くあきらめモードになっていた。
マリアはその様子をまるで、何かを分析するように見ていた。
(ふむっ・・さて・・・作戦は吉とでるか凶とでるか・・・見ものだな・・)
回想
大地は闘技場に向かう通路で、携帯着信を受ける。
「誰だ・・・」
「海原マリアだ、率直に言う。おまえは次の試合を負けてくれ」
「ハァー!ふざけんなよ、誰がテメェーのゆうことなんか・・・」
「取引だ・・・・」
「本当だろうな?その情報・・・」
「おまえが決めろ・・・私としてはどちらを選択しても・・・ま、計画の内だ・・・じゃあ、切るぞ」
ガチャッ。
「・・・・・・・・チッ・・・わかったよ・・・負ければいいんだろ・・・」
回想終了
(できれば吉とでてほしいが、凶と出た場合・・・私のこの大会の戦略も、考えなおさないとならないな・・・)
『それでは第一回戦、第三試合、日本代表 伊集院 一郎選手VSドイツ代表 ゲッドバッド選手のカードバトルを始めます。デッキスキャンをします。両者デッキを前に』
一郎は、デッキを前に出すが、手が震えてしまい。
それを落としてしまう。
バササッ。
「あ!」
闘技場に上に、52枚カードがバラバラに巻き散らされる。
それを一郎は震えながら、おぼつかない手で、1枚1枚拾っていく。
それは、見ている者によっては、なさけなく見え、観客席から笑いも起きた。
「ゲへへッ・・」
(くっ・・屈辱だ・・この日本チャンピンであるこの僕が、こんななさけない姿を・・)
ゲッドバッドは、その一郎の拾う姿を、舐め回すように見た。
「ゲへへッ・・ホント・・・かわいい子羊ちゃんだぜ・・・・」
「な・・なんだと・・・」
「無様にグチャグチャして、血しぶきがでるほど犯してやるよ・・・」
「ひっ!」
ガタガタ。
一郎は震えた手で、やっと拾ったカードをまた全部落としてしまう。
バササッ。
「ああっ!」
そしてまた無様に拾う。
一郎は、それが界中に中継されていると思うと、泣きたくなってきた。
いや、目の端には若干、涙浮かんでいた。
「はやく・・はやくしろよ・・・ゲへへッ・・犯したくてたまらねェー・・ゲへッ」
「ううっ・・」
観客席からの笑い声、そしてゲッドバッドからの挑発。
それを受け一郎の精神は、グザグザになっていた。
その様子を、真琴は、控室のモニターから見てハラハラしていた。
「も・・もう、だ・・ダメですよー伊集院くん・・はじまるまえから、もうグロッキー状態ですよー・・ど・・どうします?師匠・・・・あれ・・・・師匠?・・・いない」
闘技場の上では、一郎は落としたカードの、最後の一枚を拾うが、その場から立とうとはしなかった。
(い・・嫌だ嫌だ嫌だ・・・怖い怖い怖い・・・この場から逃げたい、逃げたい、逃げたい・・ううっ・・・な・・なんで、エリートで天才のこの僕が、こんな無様な目にあわないといけないんだ・・・このままじゃ・・・僕は・・ひどい目にあう・・そんな嫌な予感する・・・・・・そうだ!奴と同じように、この試合を棄権しよう・・・そうしよう・・・・・そうだ・・)
一郎は座り込みながら、手を上げた。
「僕はきけ・・・・」
「おーーーーい!いじゅういーーん!」
「!・・・あれは・・・・・大空 空!」
一郎が棄権を宣告する前に、応援席から一郎の耳に、空の声が聞こえた。
空は控室をでて、観客席から一郎を応援しにきたのだ。
「頑張れーーーーーーー!伊集院――――!」
そのバカみたいに大きい声は、ドーム中に響き、観客全員が空を注目した。
「!・・・あいつ・・・ふ・・ふふふ・・・頑張れだと?こ・・この僕に・・・この僕を誰だと思っている・・・日本チャンピオンの伊集院一郎だよ・・・まったく・・・敗者復活戦で勝ちあがった風情が、この僕を心配だと?・・・・・・やってやるさ・・・全力でな・・・見ていたまえ、クズが・・・・この天才のカードバトルを」
「あ・・あははっ・・・伊集院くん・・・師匠のおかげで、大分・・顔色がよくなりましたよ!」
「だが、顔色がよくなっても、まだまだ本調子ではないよう見えるな・・」
マリアは監督として、その状況を楽観視せず、冷静に分析していた。
「でも・・師匠が応援してくれているんです・・・師匠の応援は、百億万人力ですよ」
「ふっ・・・そうだな・・・」
(計算も大事だが・・・空・・・あなたの存在は、皆に希望をあたえる・・・・それは計算では、計れない力だ・・・・私はあなたに命を救ってもらった・・・だからこそわかる・・
あなたの存在は光だ・・・・・・この大会、あなたはきっとモンスタートランプをやる人たちに光をあたえる・・・・そしてより、あなたは輝くだろう・・・・・私は・・・・まだ闇の中だ・・・・・・私に答えを教えてほしい・・・・空・・・)
一郎とゲッドバッドは、デッキを前に出した。
ドームの天井から赤いスキャンビームが放たれ、お互いのデッキをスキャンしていく。
『デッキスキャン終了。カードバトルスタートします。先攻は日本チーム 伊集院 一郎選手』