一郎VSドイツ代表 ゲッドバッド
その言葉に、メンコは驚きを隠せなかった。
「な・・なっ・・ど・・どういうことですの!あなた・・・」
「・・・・・・・・」
大地は無言のまま闘技場を降り、控室に戻っていった。
その後ろ姿にメンコは罵声を浴びせた。
「わ・・わかりました!わたしとカードバトルしたら、コテンパンにされると思って、そのまえに負けを宣言しましのね!恋人になる条件に、コテンパンと入れてましたから、それを回避するために・・・卑怯者!ひ・きょ・お・も・の!」
「チッ・・ウゼェ・・」
大地はメンコからの罵声と、観客のヤジのなか、控室に戻っていった。
ガチャ。
大地は控室のドアを開けた。
すぐにみかんが大地に突っかかった。
「あ・・あんた!・・どういうつもりよ?なんで何もしないで負けたのよ・・意味わかない!」
「くーくー」
大地はみかんを無視して、そのまま椅子に座り寝てしまった。
「や・・やる気ないわねぇ・・・・」
「俺がやらなくても、他の2人で十分勝てるって、ことなんやろうか?」
「そうだとしても不謹慎よ!・・・まあいいわ・・・負けた試合なんて、次の試合に切り変えていくわよ・・・次は誰?」
みかんの言葉に一人の男がまえにでてくる。
それは日本チャンピオン伊集院 一郎だった。
「ふふふっ・・・この僕だよ・・・」
「よし、その次の次の試合に期待ね・・」
「よし、その次の次の試合に期待ね・・」
「ちょ・・ちょっとまちたまえ!なんだ、そのあからさまな僕への扱いは!」
「だってね・・・ほら・・・ね・・・」
「おもらしは関係ないだろ!」
「いや・・・言ってないし」
「僕は日本チャンピオンなんだぞ!強いんだぞ!・・・グスッ」
「な・・泣かなくても・・伊集院くん・・・いちおう、ちゃんと、強いことはわかってますから・・いちおう・・」
「いちおうとか言うな!2回も!」
「いいから、ととっといってきなさいよ。いちおう、応援してあげるからさ」
「君らなんて嫌いだーこのクズ共!ううっ」
「あーあー泣かせちゃいましたよ・・・みかんさん」
「あたしのせい?真琴、あんたもでしょ・・・ま、伊集院、あんたが負けても、クルトがいるから気にせず戦ってきなさいよ・・・・・認めたくないけど、マリアの弟ならかなり強いんでしょ?」
みかんの言葉に、姉であるマリアは誇らしげに答える。
「うむっ・・才能だけなら・・この男より10倍はある」
「10倍か・・・100倍はほしいところだけど・・・しょうがない・・・・」
「ひ・・ひどいみかんさん・・・・・・・」
伊集院はさらに泣いてしまった。
真琴は控室を見渡すと、あることに気づく。
「あれ?・・・そういえばそのクルト君がいませんよ?」
そのクルト所在について、マリアが答える。
「そうだ・・・言い忘れていたが、クルトはこの第一回戦にはでれない」
「えっ!・・・ど・・どいうことですかマリアさん?」
「さきほど、腹痛で医務室にいったのだ・・・いま空に連れていってもらっている。今日はカードバトルすることはできないだろう」
「そういえば・・・師匠もいません・・・それじゃあ・・次の試合負けたら・・・」
「うむっ・・私達は一回戦敗退だ」
「えええええええええええええええ!」
みかんはショックのあまり声をあげた、そのあと、チラッと伊集院を見て。
「お・・・終わった・・・はぁ・・・」
大きなため息をついた。
「な・・何を言っている!この僕が勝てばいいんだろ・・勝てば!」
「そうね・・勝てればね・・・はぁ・・」
「き・・君はどっちの味方なんだ!・・と・・とにかく次の試合に、ぼ・・僕はいってくる。ま・・まあ、ぼ・・僕の試合を、ぞ・・存分に、た・・楽しんでくれたまえよ・・う・・うふふっ」
一郎は控室をでて、闘技場へとむかった。
その、一郎の全身震える姿を見て、真琴は思った。
「い・・伊集院くん、あきらかに緊張して、全身震えていましたよ・・・意外です。もっと、そういうことは気にしない人だと思ってましたから」
「ふっ・・奴の弱点は、緊迫した状況に圧倒的に弱いということだ。自分が、相手より強い思っている状態ならまだいいが、相手が自分より強い、または勝敗がどっちに転ぶかわからない状況では、酷くもろい・・この大会の2試合を見て、奴も、この大会のレベルの高さがわかっただろう・・・・それに加え、自分が負けたら敗退するというプレッシャー・・奴はどう克服するのだろうな?・・・楽しみだ」
「・・・・もし克服できなかったら?」
「・・・・・・・・・・・」
真琴から質問にマリアは何も答えなかった。
「答えてくださいマリアさん!」
「負けってことどすなー」
「あんたハッキリいいすぎ・・・」
ガクガク。
伊集院は、闘技場のむかう途中、全身が震えおぼつかない足取りで歩いていた。
「ふ・・ふふふっ・・・こ・・この僕が負けるわけないし・・・・この僕が負け・・」
ドン。
フラフラと歩く伊集院は誰かにぶつかった。
「いてッ!・・だ・・誰だ・・!ちゃ・・ちゃんと、前を見て歩きたまえ!・・・!・・き・・君は?」
「伊集院?」
そのぶつかった相手は、医務室にクルトを送り届けていた、空だった。
「伊集院、試合にいくのか?」
「ふ・・ふん、そ・・そうだが・・・・」
「じゃあ、がんばれよ」
「ふん。君は本当にユルイ奴だな・・・この状況がわかっているのかい?」
「ん?何が?」
「そういえば君は、あの場にいなかったね・・・いや、いたとしても変わらないか・・・君の場合・・・・・君とはじめてカードバトルした時、君は、この僕あいてに、店がかかっている状況をまるで緊張せず・・・むしろそのピンチを楽しんでいたね・・・君は本当に変わった奴だよ」
「伊集院はそういう状況で、燃えてこないのか?」
「ぼ・・僕は・・・そういのがなくても、強いからね・・・」
「そうか・・・がんばれよ・・応援してる」
ポン。
空は、伊集院の肩を軽く叩くと控室に戻っていった。
「・・・・・・・まったく・・・ユルイ奴だよ・・・だが・・少しうらやましい・・」
一郎が廊下からバトルドーム内に入り、その中央にある闘技場を見た、するとそこにいたのは。
「!」
「おーおーきたきた、生贄がな・・・・ゲへへッ」
その闘技場にいた人物の顔はツギハギだらけで、眼がギョロっとしていて、まるで化け物のような風貌だった。
一郎はさらに全身を震わせ、戦慄した。