VS犯罪集団 新撰組①
佐衛門は、隣の席で離陸してからずっと眠り続ける、空に話かける。
「空はん・・・・着きましたどす・・・空はん」
体をゆっくり揺らす。
「くーくー」
だが空は寝ていて、佐衛門の言葉は、届かなかった。
「寝ている・・・・・はぁ・・・かわいい寝顔やなぁ・・・・・」
佐衛門は顔を赤らめ、空の寝顔を覗きこむ。
「う・・・うちにもチャンスがあるんやな・・・・な・・・なら、ここで目覚めのキスくらいしてもええんやろう?空はん・・・・ふふっ」
佐衛門は、自分勝手ないい訳をしながら、空の顔に唇を近づける。
「チュ―――・・・・・・・ぎゃっ!」
ドガッ。
キスをしようとする佐衛門の後頭部に、蹴りが決まる。
そしてそのまま、その足で佐衛門の顔を床に押し付けた。
「ふぎゃっ!」
「・・・・何やっているんだ?・・・・・おまえは・・・・」
佐衛門は、後頭部を踏まれ床に押し付けられながらも、なんとか目線だけも、その踏みつけている者を見た。
そこにいたのは笑っているが笑っていないマリアだった。
「あへへっ・・・な・・・何どす・・・ま・・・・マリアはんどしたか・・・・・」
ギリッ。
「ぎゃうっ」
「おまえは何、犯罪行為にはしろうとしているんだ?と聞いているんだ・・・おまえにな・・・・」
ぐりぐりぐり。
「痛い!痛い!痛い!・・・・押し付けないでェェェえ・・・・はぅ!・・・・ご・・・ごめんなさい・・・もう犯罪行為はしまへんから、ゆる・・・・・・・ぎゃああああああああ、潰れるぅぅぅぅ!」
マリアは佐衛門の許しの言葉を聞き流し、さらに頭を足で床に押し付ける。
その音で空が起きた。
「ん~~~~・・・よく寝たぁぁ・・・・ん!もう着いたのか・・・・ん?何やってるんだ、2人で?」
「この者が犯罪行為をしていたのでな、オシオキ中だ。どうやらこの男も、反省して踏まれるのを望んでいるらしくてな・・・」
「はうっ・・・ち・・・ちがっ・・・・ぎゃうううううっ!・・・ハア・・ハァ、は・・はい、踏んでください・・・オシオキ大好きですぅ・・・・」
否定しよとした言葉を言おうとした瞬間、その踏みつける強さを上げた。
そして無理やり肯定させた。
「そうか・・・ならいいんだ。楽しそうだな、なんか・・・じゃあオレは先に降りてるぜ」
「ええっ・・・こっちもすぐに終わる」
空は座席から立ち上がり、飛行機を出た。
マリアは飛行機内に、誰もいないのを確認すると、わざとらしく佐衛門のみに聞かせるために言った。
「みな、飛行機から10秒以内に降りろ・・・時間がないのでな・・・・・でないと・・・・オシオキで潰してしまうかもしれんぞ・・ふふっ」
「えええェェェ!そ・・それは・・・ほ・・ほんまにシャレなってまへんから!この状態でぇぇぇ!」
マリアは死にカウントダウンをした。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1・・・・」
「た・・たすけ・・・・・・」
「0」
ぶちゅっ。
ハワイ空港の外に、無事ハワイに生還して着いた、日本代表メンバーたちがいた。
真琴は初めての海外に顔を緩ませよろこんだ。
「わー・・ここがハワイですか・・・南国って感じですねーおおーーーナイショで来たかいがあります」
「ないしょ?」
「い・・いえ、師匠・・・なんでもありません・・・それより師匠、ハワイですよハワイ!熱い日差し、さわやかな風、きてよかったですね」
「ん?・・・・ああ、そうか・・・」
真琴とは対象的に、空はどこか上の空だった。
「じゃあホテルに行って、モンスタートランプでもやろうか」
「ええェ!・・・・・ハワイに来てまでですか?」
「ああ・・・いけないのか?」
「は・・・はい・・・・・いけないと思います・・・・・・・・・でも、師匠なら、いいかな・・・」
皆は、宿泊地であるホテルに向かう。
海。
ホテルについたあと、みかんの提案で、海にいくことになった。
開会式と一回戦は明日なので、その間にハワイを満喫したいからだそうだ。
そして、海に行くことになったメンバーは、空、マリア、みかん、佐衛門、真琴の5人だ。
大地、一郎、クルトは、ホテルに残った、理由は。
大地。
「興味ない」
一郎。
「ウプッ・・・まだ気持ち悪い・・・・寝ている・・・・」
クルト。
「ゲーム」
だそうだ。
砂浜のパラソルの下に、空と真琴がいた。
2人とも私服だった。
「師匠は泳がないですか」
「ああ、こうやって、あったかいところで寝ているほうが、しょうにあってるしな・・真琴は泳がないのか?」
「ぼ・・ボクは昔・・・・海でおぼれて、海が苦手なんです・・・・だから、こうやって見ているだけでいいです・・・・」
「そうか・・・じゃあ一緒に寝ようぜ」
「はい」
2人はパラソルの下で眠った。
水着に着替えた、マリアとみかんと佐衛門が、砂浜の上にいた。
マリアは、銀髪の長い髪に似合う、派手な水着を着ていた。
「ふふっ・・・どうだ・・・この水着は?みかん・・・」
マリアはその水着を、みかんに見せつけるようなポーズをした。
「くっ・・ずるいわよ、あんた!なんで中学生なのに、そんなにスタイル抜群なのよ!」
かわいいらしい、年相応の水着を着ているみかんは、そのマリアのスタイルのよさに目を奪われる。
「ふふっ・・どこかのアイドルも、かわいいぞ・・かわいさだけなら、アイドル級かもしれんぞ・・・かわいい子供アイドル」
「こ・・・この・・・ケンカ売っての?」
その皮肉たっぷりの言葉に、みかんを顔真っ赤にして怒る。
だが事実すぎて、怒るに怒れなかった。
「うちの、水着姿は、どうどす?」
佐衛門は、マリアに負けず劣らずの派手な水着を着ていた。
その姿を見てみかんは、本気であきれた。
「あ・・・あんた、男のクセになんで女の水着を着てんのよ?稽古のために、女らしい格好しているとか言ってたけど、本当は真正の変態でしょ?」
「そうやね・・・うちも稽古のために・・・最初はそう思っていたんやけど・・・最近・・・ある男の子を見ると、胸が張り裂けそうなくらいドキドキしてるんや、これが噂の・・・初恋っ!・・・・・」
(・・・・こいつダメだ・・・・なんとかしないと・・・・・)
「だがこの中で、私が一番水着が似合っているな・・・ふふっ」
「はァ!あたしよ!あたし!」
「ほほー、この私に勝てると?おまえはどれだけ、自分のスタイルに自信があるのだ・・・」
「あんたに言われたくない!ってか、あんた、本当に中学生?本当は高校生じゃないの?」
「ふむっ・・いい線いっているな・・・当たらずとも、とうからず・・・・っと、言ったところか?」
「はぁ?」
「そうだ・・・・こうしないか。どっちが水着が似合っているか、空に決めてもらう。空なら偽りなく、思ったままに答えるだろうからな・・・・」
「おもしろい!あんたみたいなスタイルより、あたしみたいな均衡のとれたスタイルのほうが、空はきっと好むはずよ」
「空に、変な特殊性癖をもたせるな・・・」
「どこが特殊性癖よ!あたしが一番中学生っぽいし」
「言ってて・・自慢になると思っているのか?」
「くっ・・う・・うるさい!」
その時、佐衛門が手を挙げ、この勝負に参加表明をした。
「じゃあうちも加わります・・・きっと空はんなら、うちを選んでくれます」
「いや・・・あんたの場合、特殊性癖すぎるから・・・・」
空と真琴は、パラソルの下で、寝息を立てて寝むっていた。
「くーくー・・・」
「空はん」
「空!起きなさい!」
「ん!」
その声に、寝ていた空が起きる。
一緒に寝ていた真琴も起きた。
空が起きると、目の前には、マリア、みかん、佐衛門の3人が、水着姿でいた。
マリアが空に尋ねる。
「空・・・あなたはこのなかで、誰が一番、水着が似合うと思う?正直に答えて欲しい」
その質問に空は、少し考えて答える。
「ん~~・・・・そんなこととよりさ・・カードバトルやろうぜ。このハワイのこの天気の中でやるのも、楽しそうだろ」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
その能天気な笑顔に、3人は沈黙するほかなかった。
(さ・・さすが、師匠・・・水着より、カードゲームのことしか頭にない・・・さすがだ・・・)
真琴はあらためて、空のすごさを実感した。
そして5人で、ハワイの炎天下の中、モンスタートランプをした。
楽しかった。
その夜、ホテルの一室で、日本代表メンバーが集められ、明日の大会について、マリアから説明を受けていた。
「では説明は終わる。明日から開会式、そして1回戦だ。今日は各々休み、明日に備えてほしい」
説明が終わった直後、空たちはモンスタートランプを始めた。
彼らは、これが、自分たちにとって一番の休みだと、知っていたのだ。
始まって1時間ほど立つと、大地が部屋を出て、ホテルの屋上に向かった。
「ふぅ・・」
大地は屋上の星空の下で、星がきらめく夜空を見上げながら、息を吐いた。
「大地」
「!・・空」
一人で出ていった大地を追いかけ、屋上に空が現れる。
「大地・・・こんなこところでどうした?みんなでカードバトルやろうぜ・・・」
「・・・・・・・苦手なんだ・・・・ああいう雰囲気でやるのが」
「そうか・・・・昔から大地は、人見知りだからな」
「うるせェー・・・・」
「そうだ、ここでやろうぜ」
「2人でか?」
「ああ・・・昔みたいに」
「チッ・・・仕方ねェ・・・・ジュリンしてやるよ・・・・覚悟しな・・・」
「ああ、楽しみだ」
「・・・・・・・それにしても不思議だな・・・・おまえともうやれないと思っていたのに、またこうして・・・しかも同じ日本代表メンバーとして戦うなんてな・・・・・運命のいたずらって奴か・・くくっ」
「約束したろ・・・・・オレ達は2人で宇宙最強になろうって・・・その絆があるかぎり、どんなに離れていても、また出会い、また戦うことになるさ」
「・・・・・夢物語だな」
「ああ、オレ達の夢はまだまだ果てしなく続くんだ」
「ふん・・・・そうかい・・・・・そういことにしておいてやるよ」
「!」
大地がふと、屋上から下を見ると、あやしい人影を見つける。
「アレは!・・・・まさか・・・新撰組!」
「新撰組?」