VS関東チャンピオン③
「さあ、楽しんでいこうぜ」
空はいま、全力でカードバトルを、楽しむことだけを考えていた
たしかに彼は、店を守るために戦っている。
だが、一番は、自分のためである。
全力で楽しんで、悔いの残らないバトルをする。
それが自分の真の力を、発揮することを、無意識にわかっているのだ。
「・・・・・・・ふん、その余裕・・・すぐに絶望に塗りつぶしてあげるよ」
一郎は怒っていた。
この状況でカードバトルを楽しむ空に。
いままで、このような状況でバトルしてきた者たちは、皆、自分に恐れ、敗北を恐れ、デッキを失いたくないと恐れ、震えていたのに。
この者は違う。恐れない。
むしろこの状況を、楽しんでいるかのような気さえさせる。
理解しがたい人物だ。
一郎は直感していた。
この者は、ここで潰しておかないと、いずれやっかいになると、本能で。
「オレは、破壊されたジャイアントスライムの超能力を発動。」
空は、ファイア―ダークヒーローによって破壊された、ジャイアントスライムの超能力を発動させる。
墓地に落ちることで、発動するタイプの超能力だ。
「ジャイアントスライムは相手によって破壊されたとき。手札から好きなスライム族モンスター1体を、手札に加えることができる。オレはペルソナスライムを手札に加える」
空はデッキから、ペルソナスライムを手札に加えた。
「無駄なあがきを・・・僕は残った骸骨剣士で、相手プレイヤーに直接攻撃!そして骸骨剣士の超能力発動!骸骨剣士は、バトルする時サイコロを振り、その出た目の数×2レベルを上昇させる」
サイコロがコロコロ転がる。
出た目の数は『6』。
「6!・・・ということはレベル13!・・・空くんのライフは13・・こ・・この攻撃を受けたら・・・空くんが負けちゃうぅぅぅ!」
真琴は絶叫する。
「大丈夫だ真琴。オレは呪文スライムバリヤーを発動させる。手札のスライム族モンスター1体を墓地に捨てることによって。あらゆる攻撃を無効にする」
空は呪文を発動させる。
その瞬間、空の周りを、ウネウネとスライム状のネバネバが覆っていく。
それが一気に硬質化し、骸骨剣士の6本の骨剣をはじき返す。
ガガガガガガッ。
「ちっ」
「そういえばあんた・・・関東最強なんだろ?」
舌打ちする一郎に、空は尋ねる。
「その通りだが・・・そんなあたりまえのことがどうした?」
一郎は息を吐き、やれやれ、という感じで答える。
「じゃあ、あんたに勝てば、オレが関東最強ってことになるな」
「!」
その言葉に一郎は激昂する。
「調子にのるなよドクズがァァァァァァァァァ!いいだろう、貴様のようなクズにはモンスタートランプの恐怖を教えてやる!二度とできなくなるくらい徹底的になァァァァァ」
空はその言葉を、手を横に振り否定する。
「いや、それはないない。オレ・・モンスタートランプ大好きだから」
ニカっと笑い。
「ッ・・・・・・・・!」
「さすが空くん・・・・」
その言葉に、一郎は絶句する。
真琴はその言葉に、さらなら空へのあこがれを抱く。
関東チャンピオンの挑発も、意図もせず、自分の意見を言うその姿に。
「オレは、スライムバリヤーによって捨てられた、ペルソナスライムの超能力を発動!ペルソナスライムは手札から墓地に捨てられたとき、場に超能力召喚できる」
場に、仮面を被った、スライム族モンスターが超能力召喚される。
超能力召喚とは 超能力の効果による召喚。
1ターンに1回の召喚とは違い、超能力を使用できるなら、1ターンに何度でも可能
カード情報
ペルソナスライム レべル1 属性水 種族スライム族 超能力 このモンスターが手札から墓地に捨てられた時場に、超能力召喚できる。
「空くん・・・これを見越して、手札にペルソナスライムを持ってきていたのか・・・」
「・・・・・僕のターンは終わりだ」
5ターン目。
空ライフ13 手札4。
一郎ライフ13 手札3。
空のターン。
「ドロー・・・オレはダブル召喚を使用する」
真琴(ダブル召喚・・・・召喚は1ターンに1回だけすることができる。そして同時に、3体までのモンスターを召喚できる。ダブル召喚は同時に2体まで召喚する方法。これを使用する場合、次のターンまで呪文は使用してはいけない・・・)
「オレはピエロスライムと、侍スライムをダブル召喚。そして場にいるペルソナスライムとあわせて3体合体する」
「3体合体・・だと!」
空の場の3体のスライム族モンスターがくっつき、閃光と共にあらたなモンスターが現れる。
「合体召喚 団子スライム」
三つの顔に串が刺さっている。
串団子のようなスライム族モンスターが合体召喚された。
カード情報
合体モンスター団子スライム レベル9 属性 風 種族 スライム族 超能力????
合体条件 3体のスライム族モンスター。
「そして団子スライムの超能力発動!団子スライムはこのターン、待機状態になるかわりに、レベル3以下のモンスター1体を破壊することができる」
「!」
待機状態になったモンスターは、そのターンに、攻撃も合体素材にできなくるなる。
攻撃したときも、モンスターは待機状態になる。
ターン終了時に回復する。
呪文や超能力を使用し、合体素材にすることは可能。
団子スライムは、全身をぷるぷる震わせ、刺さっている串を発射させた。
「串砲!」
ズガッ。
槍のような一撃が、骸骨剣士を撃ち貫く。
「骸骨剣士を破壊!さらに、この超能力で破壊したモンスターのレベル分だけ、相手プレイヤーにダメージをあたえる」
骸骨剣士を撃ち貫いた串の一部分が欠け、一郎に突き刺さる。
グサッ。
一郎は、骸骨剣士のレベル分のダメージ、1を受ける。
一郎の残りライフ12。
その瞬間、一郎は呪文を発動させる。
「ぐっ・・・・僕は呪文ライフコントロールを発動。この呪文は、相手にバトル以外のダメージを与えられた時に発動できる。1から3の間好きなライフを回復していい。回復後デッキからカードを一枚ドローする。僕は1を選択する」
呪文効果によって、一郎のライフ13となる。
「!・・・・」
(なんで1?・・3を選択すればいいのに・・・プレイミス?)
通常なら3を選択して、ライフを15にしていたはず。
それなのに、一郎はそれをしなかった。
関東チャンピオンである彼が、自分でもしないようなミスをするのだろうかと、真琴は疑問に思う。
「オレのターンは終わりだ」
6ターン目。
空 ライフ13 手札3。
一郎ライフ13 手札3
一郎のターン。
「僕のターン、ドロー・・・・」
一郎の引いたカードは、滅死の宣言。
それを見た一郎は、ニヤッと笑う。
事前に、未来予知の呪文効果で、このターンにくることはわかっていた。
これで、空を恐怖にいざなう準備は終わった。
「ふふっそろそろ終焉だよ。覚悟はいいかい?僕は骸骨ヒーローを召喚」
一郎の場に、アンデット族モンスターが召喚される。
「そして場にいる、骸骨ヒーローとファイアーダークヒーローを合体させる。現れよ!
僕の最凶モンスター火の死神デス13!」
炎を纏った、赤い死神が合体召喚される。
カード情報。
合体モンスター火の死神デス13 レベル13 属性火 種族アンデット族 超能力????
合体条件 アンデット族モンスター一体と火属性の炎族モンスター一体。
合体条件2 ????
「レベル13!」
そのレベルに真琴は驚愕する。
「こいつはただ強いだけじゃない、こいつには不死身の力が備わっている。その恐怖・・味あわせてあげるよ・・・君に」
「そのモンスター・・」
「!」
空は、火の死神デス13を、指さした。
「あんたのライフ13に関係しているのか?」
「!・・・ほう・・・気づいたか・・やるねぇ・・たしかに・・こいつは不死身の力を持っているが、気難しくてねぇ・・・ライフ13の時しか合体召喚できないんだよ」
「だから13にこだわっていたのか・・・」
真琴の疑問は解けた。
なぜあのとき、ライフを1しか回復させなかったのか。
それらはすべて、このモンスターを召喚させるためだったのだ。
「終わりだ。こいつが現れたからには、君には絶望と恐怖と敗北しか残されていない」
それを聞いた空は。
「それをすべてねじ伏せ・・おまえを倒す!」
手を前に出し、一郎に見せつけるように手を握った。
「・・・やってみろ」
「やってやるさ!」
「火の死神デス13で、団子スライムを攻撃。死喰い(デス・シザーズ)」
一郎の攻撃宣言と共に。デス13は炎に包まれ、消えた。
直後、団子スライムの背後の現れ、その手に持つ、巨大な黒い鎌を振り上げ、振り下ろす。
鎌の先端がパクっと開き、まるで猛獣のよう口が、団子スライムを噛み砕く。
ガブリッ。
ムシャムシャムシャっと、スゴイ音をたてて、団子スライムは食われ、破壊された。
「ああ、団子スライムが」
真琴はその異形のモンスターに恐怖する。
「僕のターンは終わりだ」
7ターン目。
ライフ13 手札3。
一郎ライフ13 手札3。
空のターン。
「オレのターンドロー。・・・よし、オレは呪文発動!スライムキャノン!」
空の場に、巨大な大砲が出現する。
「この呪文は自分のターンのみ発動できる。手札のスライム族モンスター1体を、墓地に捨てることによって、場のモンスター1体を破壊する。対象は火の死神デス13」
大砲が、デス13に向けられる。
空は手札を1枚墓地に捨てる。
その捨てられたモンスター、バードスライムが、大砲に装填される。
「スライムキャノン砲弾装填・・。ターゲットロックオン・・・・・発射ーーーーッ!」
ボゴンッ。
大砲の一撃が、デス13を木っ端微塵に破壊した。
それを見て真琴は、喜び飛び跳ねる。
「やったー火の死神デス13を破壊した」
「バカがァ不死身だと言ったろ。火の死神デス13の超能力発動。手札を一枚墓地に捨てることによって、火の死神デス13を再生させる」
デス13はみるみると再生されていく。
「!・・・そんなぁ・・レベル13のうえに再生能力までもっているなんて反則だよ・・・」
「そしてダメ押しの呪文発動」
一郎は手札から、呪文を発動させる。
「滅死の宣言発動。この呪文は火の死神デス13が破壊された時発動できる。この呪文効果は発動後3ターンが経過したのち、強制的にこのバトル僕の勝ちとする」
「なっ」
その絶望的効果内容に、真琴は絶句する。
「つまりは・・・予言どうり、10ターン以内に僕に勝つということさ。どうだい?自分の死の運命が決定した気分は?恐怖してきただろう・・・?」
その質問に空は。
「いんや、ワクワクしてきた。その死の運命もねじ伏せてみせる」
「・・・・・・・・あっそ」
さすがの一郎も、あきれるしかなかった。
「オレはカードスライムを召喚して、ターンを終わりにする」
空の場に、カードの形をしたスライム族モンスターが召喚される
カード情報
カードスライム レベル2 属性 水 種族 スライム族 超能力???
「・・・・おっと、いい忘れてた」
「!」
「このバトルでオレが勝ったら、勝のデッキも返してもらうぜ」
「!」
「て・・・転校生 ううっ」
その言葉に、闘技場の外で見ていた勝が泣く。
その言葉に、一郎は激怒する。
「貴様ァァァ!この状況で勝ったらだと?・・・よくもヌケヌケとそんなこと・・・!」
「いいだろ?」
「ダメだ!」
「なんで?金持ちなのに、ケチだなー」
「黙れェ!・・僕はねぇ・・人から奪ったデッキを、コレクションするのが趣味なのさ。たまにそのデッキをみて思いだすんだ。僕に負けた、負け犬のみじめな姿を・・・・それがたまらなく楽しいィィ」
一郎は、舌なめずりをした。
それを見ていた、店長と勝は。
「なっ・・なんて最低な野郎だ!人のカードを奪って楽しんでいるなんて!」
「キミがそれを言うかい?」
「て・・店長ォ!・・お・・・俺は自分で使うためにカードを奪っているんです。コレクションにするためじゃない」
「・・・・・・コレクションにするためじゃないか・・・・そうだな・・・・」
「?」
その言葉に店長、天野 剣也は、1枚のカードを取り出した。
「君に勝って、奪ったデッキは1000個目・・・・だから返すことはできない」
「じゃあこのカードを賭けるよ」
「!」
空「店長!」
店長、天野 剣也が、闘技場の上にあがり、1枚のカードを一郎に見せる。
「そ・・・そのカードは・・・・伝説のカードレジェンドナイト!・・・世界で一枚しかない、世界チャンピオンに渡された伝説のカード・・・それをどこで・・・?」
「いやぁー友達に借りただけだよ」
店長は照れくさそうに笑う。
「このカードを、空くんのデッキにスキャンして入れる。そうすればキミが勝った場合。彼のデッキと共に奪えるだろう・・・・これでどうだい?」
「・・・・いいでしょう喜んで承諾します」
ニヤッと笑い、一郎は丁寧にお辞儀する。
まるでもう、自分の手に入るかのようだった。
闘技場の外から、勝が聞いた。
「い・・いいんですか・・そんなカードを?」
「ああ、あいつなら・・・彰人ならきっと同じことをした」
(そうだろう・・・・彰人)
『デッキスキャン』
店長の持つ、伝説のカードレジェンドナイトが、空のデッキに入れられた。
その様子を一郎は、ニタニタいやらしい顔で見つめていた。
「ふふ、今日は最高の誕生日になりそうだよ。伝説のカード、レジェンドナイトが手に入るんだからね」
「喜ぶのはオレに勝ってからにしたほうがいいぜ」
空の言葉に一郎は、ふぅーっと息を吐き。
憐みの目で言った。
「もう決定しているよ・・・運命は。君の死でね」
一郎の冷たい視線と空の熱い視線がぶつかる。
8ターン目。
空ライフ13 手札2。
一郎 ライフ13 手札1。
一郎のターン。
「僕のターンドロー。呪文発動ゾンビの群れ。自分の場にレベル10以上のアンデット族モンスターがいるとき、この呪文は発動できる。デッキからレベル1のアンデット族モンスターを2体までを手札に加えることができる。僕は2枚のカードを手札に加え、スカルミサイルを召喚。そして火の死神デス13でカードスライムを攻撃」
ガブリッ
カードスライムは、火の神デス13によって破壊された。
「カードスライムは破壊された時、デッキからカードを一枚ドローできる」
空は、カードスライムの超能力で、カードを1枚ドローする。
「ふん・・・残ったスカルミサイルで、プレイヤーに直接攻撃」
カード情報。
スカルミサイル レベル1 種族アンデット族 属性火 超能力????
ミサイルを背負った、アンドット族モンスターが空を襲う。
ザン。
スカルミサイルの、ひっかき攻撃が、空にヒットする。
空のライフはあと12。
「僕のターンは終わりだよ」
9ターン目。
空 ライフ12 手札3。
一郎 ライフ13 手札2。
空のターン。
このターンが終了したと同時に、滅死の宣言が、空に敗北を告げる。
このターンに、なんとかしないと、空は負ける。
(こ・・これが、空くんの最後のターン・・・このターンにどうにかできなければ・・・・・・)
真琴は、不安な表情でうつむく。
そのとき、空から声をかけられる。
「大丈夫だ、真琴」
「!」
「オレを信じろ。それと、自分とみんなのカードもな」
その言葉に励まされた。
一番、励まされなければいけない人物から、励まされてしまった。
真琴は自分を叱咤し、空の言葉に応える
「はい!」
その言葉を聞いて空はニコッと笑い、最後のカードをドローする。
「ドロー―」
空は最後のカードをドローした。
そのカードを見た。
「!・・きた!オレはレジェンドナイトを召喚する」
空の場に、黄金の甲冑と仮面をつけた、戦士族モンスターが召喚される。
カード情報。
レジェンドナイト レベル ? 属性 ? 種族? 超能力 ????
「!・・・来たか伝説のカード・・・!」
(一体・・・どんな力を・・・・・!)
「なっ!・・・レベル15!バカな!」
レジェンドナイトのレベルは15。
火の死神デス13を凌駕していた。
「れ・・・レベル15のモンスターを、何の条件もなしに召喚だと」
「条件はあるさ。ただそれを満たしているだけだ」
「そ・・それは・・?」
「レジェンドナイトは墓地に、火属性、水属性、風属性、土属性のモンスターがすべてそろっている時。場に召喚することができる。そしてレジェンドナイトの、究極超能力を発動!ライフを10ポイント支払うことによって、レジェンドナイトはこのターン、4回連続攻撃ができる 」
「何ィィィィィィィィ!4回・・だと!」
空の残りライフは2。
「レジェンドナイトいけ!エレメントスラッシュ!」
空の攻撃宣言と共に、レジェンドナイトは、自身の持つ、超巨大な黄金の剣でスカルミサイルを切り裂く。
ズバッ。
「スカルミサイル破壊」
そして火の死神デス13を、3回ぶった切る。
ズバズバズバッ。
「火の死神デス13を、3回破壊!」
これによって、一郎の手札2枚は、再生コストにすべて使われゼロになった。
火の死神デス13は破壊され、墓地に送られる。
「や・・やったぞ・・・空くんの勝ちだ・・・」
真琴は勝利を確信し、よろこぶ。
「いや・・・僕の勝ちだよ」
「なっ・・何をいってるんですか・・あなたは?あなたの手札も、モンスターも0この状況で!」
「見たまえ」
一郎は上空を指さす。
そこにあったのは、呪文カード滅死の宣言。
滅私の宣言は、まだ発動したままだった。
「!・・アレは滅死の宣言・・・! なんで発動したまま・・・火の死神デス13は破壊したはずなのに・・・」
「勘違いしているようだが・・滅死の宣言は、火の死神デス13が破壊されても、その発動は止まらない」
「そんなぁ!」
てっきり発動のキーになった、火の死神デス13を破壊すれば、滅死の宣言は、その発動を停止すると思っていたのに。
違っていた。
「つまりは・・このターンが終われば自動的に僕の勝ちとなる」
「!」
「ほしかったねーあと一撃だったのに・・・・」
空はその言葉に被せて言った。
「ああ、あと一撃で俺の勝ちだ」
「はぁ?何をいっているんだい・・キミは?」
空の不可解な言葉に、一郎は顔をしかめる。
空は呪文を発動させた。
「オレは呪文、交換復活を発動させる。場にあるモンスター1体を墓地に送ることによって、墓地にいるレベル3以下のモンスターを場に、呪文召喚できる。オレはレジェンドナイトを墓地に送り、ドックスライムを呪文召喚する。そして、ドックスライムで相手プレイヤーに直接攻撃」
呪文召喚されたドックスライムが、一郎に直接攻撃を仕掛ける。
「バカがァ。ドックスライムはレベル1。あたえられるダメージは1。これでどうやってあと一撃で、僕を倒すと?」
「まだまだ呪文発動ラブハート」 1
空が呪文を発動させた、そのとき、カツカツカツっと、洞窟の階段を降り、一人の少女が入ってくる
長い銀髪の美しい少女だ。
どこか、日本人離れをした、雰囲気を感じさせる。
少女は発動中の、呪文ラブハートに注目した。
「!・・・あのカードは!・・・・・それに・・・」
発動者の少年を見て驚いた。。
空は呪文を続ける。
「この呪文は、場にいるモンスター1体のレベルを、墓地に存在するそのモンスターと同じ種族のモンスターの数×2上昇させる」
「なっ!」
「墓地にいるスライム族モンスターは8体。よってドックスライムのレベルは17に上昇」
「何ィィィィィィィ!この攻撃を受けたら、この僕が負ける・・・・・・・・・・・・・・なーんて・・甘いわァァ!」
一郎は、墓地にいるスカルミサイルの、超能力を発動させる。
「この瞬間、墓地にいるスカミサイルの超能力発動!墓地にいるこのモンスターをデッキの一番下に戻すことによって、呪文によってレベル上げるモンスター1体を、その発動前に破壊する」
「!」
「スカルミサイル!発射ーーーッ!」
墓地から、ミサイルが発射される。
それがドックスライムを直撃した。
ドカーン。
爆風とともに、ドックスライムは万に爆散する。
「あはははははははははっこれで僕の勝ちだァァァァァ」
「・・・・・忘れてるぜ、ドックスライムの超能力を」
「はっ!」
「ドックスライムは1ターンに1度再生できる」
「し・・・・・・しまったああああああ!」
一郎の悲鳴と共に、万に暴散したドックスライムが、集まり、再生を果たす。
再生されたことによって、ラブハートの呪文効果がドックスライムに流れ込む。
「そしてラブハートの呪文効果で、ドックスライムのレベルは17に上昇!」
「ひぃっ」
「これが、おまえがクズとバカにした。カード達の集まった力だ」
「た・・たすけ・・・ひっ・・・ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
悲鳴をあげる一郎に、超巨大化したドックスライムの尻尾が、振り下ろされる。
「スライムテイル」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああっ」
一郎は押しつぶされる。
一郎のライフは0になった。
ドーム内から、勝利のアナウンスが流れる。
『勝者 空選手』
「うっし、勝った」
空はガッツポーズをし、
「こ・・この僕が・・・・・・ま・・負けた・・・・」
一郎は、膝をガクっとつく、うなだれた。
その一郎に空は近づき。
「楽しかったぜ、あんた、またやろうぜ。今度は何も賭けずにさ」
握手を求める。
だが、負けたことにより、放心状態の一郎には、その言葉は聞こえていなかった。
そして涙を潤ませ。
「ううっ・・パパに・・・・パパにいいつけてやるゥゥゥゥゥゥゥゥゥ! うえ~~~~~ん」
泣きながらドームを去っていった。
あっコケた。
そんな様子を見ていた、勝と店長は。
「・・・・だ・・・大丈夫ですかね・・・あいつ。この店をちゃんとみんなで使わせてくれますかね?」
「ああ、彼はプライドの塊だ・・これ以上の恥の上塗りはしないだろう。君のデッキもあとで、私が返してもらうよういってくるよ」
空の後ろでバトルを見守っていた真琴が。
「か・・・・勝ったーーーー」
喜びのあまり、空に飛びつき、抱きついた。
「やったーーーーやったやったやったーーーー空くんすごいかっこいいィィィィィィやったーーーーーーー」
勝利の喜びに、歓喜する真琴。
そのとき、強く抱きつかれていた空の体が崩れる。
「!・・・空くん!」
そのまま床に、大の字で倒れてしまう。
「ど・・どうしたんですか・・空くん?まさかいまのバトルで・・・」
「たのしかった」
「へ?」
「たのしすぎてめまいがした」
「・・・・・・・」
空は大の字のまま、バーチャル映像の宇宙に大声で叫んだ。
「オレは、宇宙最強のモンスターバトラーになるぞォォォォォォォ!」
その言葉に、皆が唖然とする。
さまざまな思いの中、一人だけ空に対して、特別な感情を抱く者がいた。
それは、あの銀髪の少女だった。
少女は、ドームの去り際に、こう言い残した。
「ふふっ・・とうとうみつけた、私の運命の・・・・ふふ」
意味深な言葉を残し、少女は消えた。
「あの・・・それが空くんの夢ですか?」
大の字で寝る空に、真琴は聞いてみた。
「ああ、子供の頃からのな・・」
「・・・・・・・宇宙人って、いるんですか?」
「いるかもしれないだろ」
二カッと笑い、空はそう答えた。
「・・・・そうですね いるかもしれませんね」
真琴もニコッと返した。
だけど真琴には、1つ疑問があった。
それは
(でも・・・いたとしても、モンスタートランプやるのかな・・・宇宙人?)
いま。
空の物語が、始まった。