VS元世界チャンピオン②
カツカツカツ。
4人は地下階段を降り、バトルドーム内にはいる。
「あ!店長」
「やあ、空くん」
ちょうど店長が手荷物を持って、空たちと鉢合わせする。
「聞いたよ、空くん、みかんくん・・・ワールドカップ出場おめでとう。それにマリアくんは、日本モンスタートランプ協会会長なんだってね?驚いたよ・・・・」
「ありがとうございます、店長」
空は丁寧にお辞儀をした。
横にいる真琴が店長にたずねる。
「あ・・・あの・・・店長・・・そのバック、どこかに行くんですか?」
「うん、しばらく故郷に帰ろうと思ってね・・・」
「こ・・・故郷ですか」
「うん、空くんのカードバトル見ていて、すこし思う所があってね・・・10年ぶりに帰ろうと思って・・」
「じゅ・・・十年ぶりですか・・・・・それで、その間のバトル堂はどうするんですか?」
「うん、妹にまかせるつもりだよ。いずれ2号店も作って、そこの店長をまかせるつもりだったからね。そのための、いい予行練習にもなるだろう」
「はぁ・・・そ・・そうですか」
「店長」
「なんだい?空くん」
「このカードお返しします」
「それは・・・レジェンドナイト!・・・それはあの時に、キミにあげたはずだよ・・・・もうそれはキミの物だよ・・・受け取ってほしい・・・この店を守ってくれたお礼でもあるし・・・そのカードはわたしなんかより、キミが持つ方がふさわしい・・・それをわたしに貸してくれた友人も、それを望んでいるはず」
空はその言葉に首を横に振った。
「いえ、違います。このカードは、オレなんかが持っていちゃダメなんです。店長が持つべきカードなんです・・・・このカードもそれを望んでいる」
その空の言葉にみかんが突っ込む。
「そ・・・空、あんた、何、意味不明なこと言っているの?カードが望んでいるって・・・・」
「あれからオレは・・・このカードをデッキに入れてるんですが、あれから一度も、手札に引いたことがないんです」
「!」
「このカードからは店長への強い思いが、すごい伝わってくるんです。きっとこのカードも店長に使ってもらいたいんですよ」
「・・・・・・そうか・・・だが、そのカードは本来、わたしが持っていていい物じゃないんだ」
「でも・・・店長は前に、友達から借りたって・・・・そのカードはたしか、世界チャンピオンにしか渡されていない、世界で1枚しかないカードなんですよね?」
真琴の質問に店長はうつむきながら答える。
「ああ・・・・」
「じゃあその友達は、元世界チャンピオンなんですか?」
「いや・・・そういうわけじゃないんだが・・・」
「彼だよ 真琴」
「え?」
後ろにいたマリアが、ずいっと前にでてくる。
「彼が元世界チャンピオン 天野 剣也だ」
「え・・・・・ええーーーーーーーー!・・・て・・・店長が・・・も・・・元世界チャンピオン!・・・・ほ・・・本当なんですか?店長」
「ああ・・・わたしなんかが、恥ずかしい話しだけどね・・・・」
「謙遜ですか?あの偉業は誇っていいと思いますよ。なにしろ、いまだに一人しか達成していない、世界大会3連覇を成し遂げたのですから・・・・」
「せ・・世界大会3連覇!」
真琴はその言葉に驚愕する。
「ええ、それにいまだに、歴代で最強のモンスターバトラーだという噂だ」
「す・・・すごい人だったんですね・・・て・・店長は」
その言葉を聞いて、空が店長に駆け寄る。
「店長!オレとカードバトルしましょう」
顔を輝かせ、子供のように店長にせがむ。
「あははっ・・・すまない・・・わたしはキミ達が思うような、そんな大層な人間じゃないよ・・・最低な奴さ、大切な友達の命を奪ってしまった。そんなわたしとカードバトルなんてしないほうがいい・・・・・・」
「そ・・それってどういう意味ですか?」
真琴の言葉にマリアが答える。
「聞いたことがある・・・伝説のチャンピオン、天野 剣也が、いきなり姿を消し、モンスタートランプ界を引退した理由・・・・・あれは事故ではないのですか?」
「事故か・・・・そうかもしれない・・・でも違うんだ・・・わたしが殺したんだ・・・彰人を」
店長の顔は暗く、落ち込んでいた。
その雰囲気は、誰もが話かけるのは不可能なほど。
「店長、よければオレたちに、その話しを聞かせてくれませんか」
(し・・師匠!そんなにあっさり聞いて・・・!)
「このカードから感じる強い思いに、関係しているんでしょ・・・?それと、もしかしたら、店長がモンスタートランプを大好きでありながら、カードバトルをしないその理由にも関係しているんじゃ・・・」
「・・・・・・・・・・空くん・・・キミはやはり、どこか彰人に似ているよ・・・わたしのかけがえのない友人に・・・・・キミになら・・・キミ達になら・・・・・・話すべきかもしれない・・・わたしと彰人のことを・・・・・・・・・彰人とは、わたしが12の時にはじめて出会ったんだ」
店長は悲壮な顔で話し始める。
回想
一人の少年が、河原の土手の草の上で、寝転がり、不貞腐れていた。
「あーあー・・・連敗したぁ・・・・99連敗。やってらんねェー・・モンスタートランプ・・・・つまらねェー・・・・やめようかな・・・・・・」
そうぼやきながら、寝転がる少年の顔を、一人のメガネをかけた少年が覗きこむ。
「!・・・・誰だ?」
「はじめまして、僕は地堂 彰人。キミの名前は?」
「・・・・・・・天野 剣也だけど・・・・それで何・・・俺になんの用?」
「僕とモンスタートランプをやる、友達にならないかな?」
「はんっ・・・・残念だけど・・・俺、もうモンスタートランプやめることにしたんだ。他を当たってくれ」
「勿体ないよ、それ・・・キミには才能あるのに」
「はあ?なんでそう言えるんだよ?」
「さっきお店で、キミがカードバトルしているとこを、ずっと見ていたからね」
「おいおい・・・・負けまくりのあれを見て・・・よくも才能があるなんて言えるなー・・・バカにしてのか?」
「してないよ。これから友達になる人を、バカになんてするわけないだろ」
「・・・・・・ふん、じゃあなんだ?・・・彰人っていったか・・・あんたは本当に、俺に才能があると思っているのか?99連敗中のこの俺に・・・」
「うん・・・キミにはまだまだ、眠っている才能があるよ。それをカードバトルに、全部生かしきれていない・・・・僕にはそう感じるんだ。そんなキミが、モンスタートランプをやめるって聞こえてね・・・もったいない・・・そう思って、キミに話しかけたんだ」
「・・・・・・その才能をおまえは引き出せるのか?」
「すぐに無理さ・・・モンスタートランプのプレイの仕方が、キミはメチャクチャだからね・・・もしかしたらキミ、ちゃんとルールを覚えていないだろ?」
「うっ・・・」
「やっぱりね・・・まずは、僕といっしょにカードバトルやらないか?僕とやって100連敗したあとで、それでもつまらなかったり、やめたかったりしたら、あとはキミの自由だよ」
「おいおい・・・俺が負けることが前提かよ・・・・・・ったく、それに負けたらつまらないじゃないか・・・・」
「それは、僕の指導を受けたあとでなら、キミはきっと、負けたあとでも、おもしろくなるはずだよ。僕と友達になっておいて損はないよ。僕はいい奴だし、キミはモンスタートランプを、より楽しめるようになる・・・いいこと尽くめじゃないか」
「おまえな・・・・そういうこと自分でいうなよ・・・・・・・・まあいいか。せっかく99連敗もしたんだし、あと1敗くらいしてやっても・・・その方が、やめるにしても切りがいいし、後腐れなくやめられそうだ」
彰人はポケットに手をいれ、デッキをだし、それを剣也に差し出す。
「じゃあこのデッキを使って見てくれ。このデッキならきっと、キミのプレイスタイルに合い、楽しくプレイできるはずさ。キミは才能はあるけど、デッキを組むのは恐ろしくヘタだからね」
「ふーーん・・・・デッキひとつ変えたくらいで、楽しくなるうえに、強くなれるものかねー」
「僕を信じて一緒にやろう。きっとキミなら、日本トップクラスのカードバトラーになれるはずだよ」
「おいおい・・・おおげさな・・・・」
『世界大会優勝は・・・・・・・天野 剣也選手に決定しましたあああああああああああ!』
ォオオオオオオオオオオオオ。
世界大会の優勝者が決まり、観客席から割れんばかりの歓声がおきる。
「やったーーやったぜ!彰人」
剣也は壇上のうえで、嬉しさのあまり彰人に抱きつく。
「おめでとう剣」
「いや、優勝できたのはおまえのおかげだ、彰人。ありがと」
「キミの実力をおかげさ」
「よかった・・・・・あのときやめなくて・・・・・よかった・・・・・あのときおまえに会えて・・ううっ」
剣也は嬉しさのあまり、涙ぐんでいた。
「このカード・・・おまえにやる」
剣也は1枚のカードを彰人に差し出した。
「!・・・このカードは・・・・世界大会優勝者への優勝賞品じゃないか・・・もらえないよ・・・こんなもの・・」
「いいからやる!貰え!俺からの友情の証だ!」
「そうか・・・・・それなら貰わないわけにはいかないな・・・ありがとう。剣」
彰人はそのカードを受け取った。
「はいコレ」
彰人は受け取ったカードを、すぐに剣也に差し出した。
「え?」
「これはキミに使ってほしい。このカードはキミのデッキにいれるべきだ。ちなみに貸すだけだよ。あげるわけじゃないからね」
「そっか・・・・じゃあ借りてやるよ」
2人は笑いながら肩を組み、壇上を降りる。
「そういえば彰人・・・なんでおまえは大会にでないんだ?俺と同じくらい強いのに・・・」
「ああ・・・あまり大会とか好きじゃないんだ・・・・・」
「なんでだ?」
「大会に勝つということは、誰かを負かさないといけない。誰かを力でねじ伏せて、勝ち上がるとか、そういうの、・・・・あまり好きじゃないんだ。」
「情けない奴」
「しかたないだろー苦手なものは苦手なんだし・・・キミだってピーマン食べられないだろ?」
「う・・うるせェーそれを言うな!」
「でも・・・キミをカードバトルで負かすのは、気分がいいけどね」
彰人はニヤッと笑う。
「言ったな―この野郎ォ!今日はトコトンやってやる!」
2人は仲良く談笑しながらカードバトルをし、その記念すべき1日を過ごした。
そして時がたち。
剣也は、世界大会3連覇をするほどの、実力者になっていた。
剣也は壇上で、優勝のインタビューを受けていた。
「すごい試合でしたねー剣也くん。世界大会優勝3連覇、おめでとうございます」
「ふん、僕にとってこの程度、朝飯まえのことですよ・・・・弱すぎますよみんな・・・やる価値がない・・・友達とカードバトルしていたほうが、百倍楽しいですよ・・・」
「は・・はあ・・・」
剣也の嫌味たっぷりな言い方に、インタビューをしている者も困惑していた。
それ以上にその言葉に困惑していた者は、壇上の外で見ていた彼のかけがえのない友人だった。
壇上の上に一緒にいた、世界大会準優勝者の少年が、剣也に握手を求める。
「ありがとう剣也君、いい試合だったよ」
ビシッ。
だが剣也は、その差し出した握手を、おもいっきりはねのけた。
「触るなッ!雑魚の菌がつくだろ」
「!」
その言葉に、その場にいた全員が、固まってしまった。
大地はそれをしり目に、そのまま壇上を降りていった。
握手を求めた少年は、放心状態のまま立ち尽くしていた。
壇上を降りてすぐ、剣也の側に彰人が駆け寄る。
「彰人・・・楽勝すぎ。さあ帰って、一緒にカードバトルしようぜ」
「き・・キミは・・・一体なんなんだい・・さっきの態度は?」
「さっき?」
「キミがさっき、あの握手を求めた選手の手をはねのけたことだよ!」
「ああ・・・そんなことか・・・だってあいつ弱いんだぜ・・・準優勝者のクセに、そんな弱い奴の菌がついたらどうするんだよ・・あははっ」
「キミは・・・・キミは・・・最近ちょっと調子のりすぎだよ。剣」
「うるせェーな、雑魚に雑魚って言って何が悪い」
「昔のキミは・・もっと・・・」
「はいはい、彰人の説教はいつもうるさいなー・・はやく帰ってカードバトルしようぜ。
あんな雑魚よりおまえのほうがずっと強いし、やってて楽しいしな」
パン
「!」
彰人は平手で、あとが残るくらいの強さで、剣也の頬を叩いた。
「なっ・・・・何すんだ、彰人!」
「もう・・・・キミとは絶交だ!」
「はぁ?なっ・・なんでだよ?」
「皆・・・この大会に、真剣に取り組み、真剣に戦いにのぞんでいる・・・それなのにキミは、そんな相手をバカにして、さげずんでいる・・・最低だァキミは!そんなキミなんて、もう友達じゃない!大嫌いだ」
「お・・・おい」
彰人は、帰りの電車とは別の方向に歩いていく。
「僕は・・・キミとは一緒の電車では帰らないよ。バスで一人で帰るよ・・・」
「ちょっ・・・ちょっと、ま・・まてよ、彰人!・・・・・・・い・・・いっちまった」
剣也はジンジンと痛むほっぺを、撫でるようにさする。
「・・・・・・絶交・・・彰人と・・・・・嫌だ・・・・そんなの嫌だ!」
剣也は駆けだした。
「おい、あんた!」
「!・・・・君は剣也くん?」
剣也は息を切らせ、さきほど握手をはねのけた、準優勝者の前にきた。
「ハァハァ・・・あんたに言いたいことがある・・・さっきはすまん・・・・あんなことして・・・・本当にすまん!」
剣也は頭を下げて謝る。
その態度の急変ぶりに、準優勝者の少年も困惑する。
「な・・なんだい・・・きゅ・・・急に謝る気になって・・・い・・一体、何があったんだい?」
「ハァ・・ハァ・・・・友達に言われた・・・俺がしたことは最低だって、それで気づかされた・・・俺の過ちを・・・・だから・・謝る!」
剣也はもう一度頭を下げた。
「・・・・・・・君にとって、その友人は・・・・大切な人なんだね・・・・」
「ああ・・・絶対失いたくない、大切な友達だ」
「そうか・・・仲直りができるといいね・・・」
「ああ・・じゃあ行ってくる。あいつに謝りに」
だが剣也と彰人が、仲直りすることは、永遠になかった。
病院の霊安室。
そこには、ベッドの上で寝かされた彰人がいた。
顔には白い布をかぶされていた。
「そ・・・そんな・・・彰人が・・・死んだなんて・・・・・・うそだぁぁ」
剣也の横には、彰人の母親がいた。
「バスの事故でね・・・・・このメガネ・・・あなたが彰人の誕生日に、あげた物でしょ・・・・」
「・・・・・・・はい」
「これが・・壊れようにね・・・彰人は大事にそうに抱えていたわ・・・きっと、あなたのこと大好きだったのね」
「ぼ・・僕は・・僕は・・・・僕が殺したんですぅ・・・彰人くんをぉ・・」
「え?」
「あのときぃ・・・彰人とケンカせず一緒に帰っていれなばぁぁぁ・・・・彰人は、彰人は死なずに済んだんですぅぅ・・・俺が殺したんですぅ彰人ぉ・・・・うわああぁぁあああああああああっ彰人ぉぉぉぉぉ!」
その泣き崩れた剣也の肩を、彰人の母はやさしく撫でる。
彰人の墓の前。
雨が降り注ぐなか、傘をささず剣也は、その前に立ち尽くしていた。
「彰人・・・ごめんな・・・・俺を許してくれるか?・・・・・・アホだな俺、許してくれるはずないのに・・・ずうずうしい・・・・おまえの命を奪っておいて・・・・最低な奴だな・・・・ごめん・・・・ごめん・・彰人・・・・もうここにはこないから・・・俺はもう、モンスタートランプをやめるから・・・・それで償えると思っていない・・・俺は、俺は、おまえにまた会いたいよぉお・・・・・彰人、彰人、彰人おおおおおおおおお・・・・うわああああああああああああっ・・・・ごめんごめんごめんよーー俺のせいで・・・彰人おおおおおおおおおおおお」
雨の降る注ぐなか、剣也わんわんと泣いた。
涙が枯れ果てるまで。
回想終了
「そ・・・そんなことが・・・・あ・・あったんですか・・・」
それを聞いた真琴は、どこかやるせない気持ちでいっぱいになった。
「うん・・・だからもうわたしには、モンスタートランプをやる資格はないんだよ」
「資格ってなんですか?」
「!」
誰もが、店長に言葉をかけることができないそんな雰囲気で、空だけは平然とした態度でそれを聞いた。
「それは・・・・・・・」
店長はその言葉に黙ってしまう。
「モンスタートランプは楽しいです・・・・友達とやればそれはもっと倍増する・・・」
「・・・・・・・・」
「店長はこの店を、みんなにモンスタートランプを楽しんでもらうために、作ったんですよね?」
「・・・・・・・そうだね」
「だったらその中に、店長は入っていないですか?」
「!・・・・そ・・・それは・・・・・だが・・・」
「それにきっと、その死んだ友達だって・・・店長にモンスタートランプを続けてほしいと思っていますよ・・・・絶対に」
「そ・・・・そうですよ・・・・いくらケンカ別れしたからって、最後は店長から貰った大切なメガネを守っていたんでしょ?」
その空と真琴の言葉に、店長は、自分がいましているメガネをさわりながら、どこかもの想いにふけっていた。
「・・・たしかに・・・・・そうかもしれない・・・・・彰人なら、そう思うかもしれない・・・・だが、その確証はない・・・・・・わからないんだ・・・わたしには・・・・・もう」
「ありますよ・・・わかる方法」
「!」
「このカードが証拠です」
「それは、レジェンドナイト・・・・」
「このカードが・・・店長達の絆であるこのカードが・・・オレに訴えかけてくるんです。あなたにモンスタートランプを続けてさせてほしいって・・・・・」
「そうか・・・・・・・すまない・・・・・・だがわたしには、それが感じられないんだ。もし感じられるというなら、やはりそれはキミが使ってくれ」
「甘ったれるな!」
「!」
空が店長に向かって怒鳴る。
(うわわっ!し・・師匠・・・て・・・店長に対して、な・・・なんてことを・・!)
「わかっているはずです・・・本当は・・・いや、感じているはずなんです、絶対。このカードから伝わる、2人のモンスタートランプの絆を・・・・・それを素直に感じください」
「・・・・・・・・わ・・・わたしは・・・・わたしは・・・・わ・・・わからないよ」
「・・・すいません・・・大人に対して偉そうなことを・・・・でもこのカードがあなたにそう言えって、言っているような気がして・・・」
「そうか・・・・・・・彰人なら・・・・同じことを言うかもしれない・・・・」
「店長・・・あなたがいくら懺悔をして、モンスタートランプをやめてもかまわない。でもそれが、本当にその友人が望むことならですけど・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
みかんが店長に言った。
「あたしは・・・カードから感じる・・・とか、そういう非現実なことは、信じられませんけど・・・・・あたしが友人なら、いまのふぬけたあなたの態度を見たら、一発、ビンタをくらわしてますけどね」
バチ――ン。
「ッ・・・・・!」
空が、大きな音がでるほどの強さで、店長の頬を叩いた。
「し・・・・師匠ぉぉぉぉぉ!な・・・何てことやってるんですかぁぁぁ!て・・・店長に対して、ビンタなんて・・・やりすぎですよぉぉ!」
「・・・・・いまのビンタ・・・・オレからじゃありません。天国の友人からです」
店長は叩かれた頬を、懐かしむようにさする。
「・・・・・・・やはりキミは・・・似ているよ、彰人に・・・・・・・わかった、やろう・・・カードバトルを・・・キミと・・・・10年ぶりに、この彰人と組んだデッキを使って」
「はい!」
2人は闘技場で向かいあい、バーチャル映像でのカードバトルを始めようとしていた。
『それではデッキスキャンを開始します。デッキを前に出してください』
2人は、各々デッキを前にだす。
その2人の戦いを、真琴達3人は見つめていた。
「じゅ・・・10年間、ブランクがあるとはいえ・・・世界大会3連覇の覇者に・・・しかも、歴代最強といわれたモンスターバトラーに・・・師匠は勝てるんでしょうか?」
「大丈夫よ、空なら。あんなふぬけ野郎に絶対負けないわ!」
「ふ・・ふぬけって、みかんさん・・・大人に対してなんてこと言うんですか・・・」
「ふぬけはふぬけでしょ・・・世の中には大人だろうが、子供よりしっかりしてない奴なんて結構多いじゃない。大人とか子供とか関係ないわよ」
「そ・・・そうですけど・・・・社会的礼儀というものが・・・」
「いや・・・・もうふぬけには見えないな」
「!」
マリアは店長の顔を見て、何か思いだしたように言う。
「あの顔・・・・・・もう、昔の映像で見た。伝説のチャンピオンの顔だな・・・」
「・・・・・・それって・・・・師匠は勝てますかね?」
「試合はやってみないとわからないさ・・・・・私たちができることは、空を信じ、空が勝つことを祈るだけだよ」
「そ・・・そうですね・・・師匠―ガンバレー」
真琴は手を振って空を応援した。
「このカードバトル・・・日本モンスタートランプ協会の会長として・・・見逃せないな」
空は店長に1枚のカードを差し出す。
そのカードは彰人と剣也の絆のカード、レジェンドナイトだった。
「店長・・・このカードをお返します」
「いや・・・それはまだいい。このカードバトルで見極めさせてもらう。わたしにそれを使う資格があるのかどうか・・・・」
「はい・・・」
『デッキスキャン終了。カードバトルスタートします』