VS元世界チャンピオン①
朝、学校の校門前で、空と真琴が出会う。
「あっ!おはようございます師匠」
「ああ、おはよう真琴」
「昨日はすごかったですねー」
「ああ、楽しいカードバトルだったな」
2人は昨日のワールドカップ大会、日本代表予選の話しで盛り上がる。
「いよいよ来週からワールドカップ大会ですね」
「ああ・・・どんな強敵と戦えるか、いまからワクワクするな」
「でも、師匠がボクをサポータに選んでくれたこと、うれしかったです。でも知らなかったです・・・代表選手は3名まで、ワールドカップ大会に呼べるなんて、昨日初めて知りましたよ・・・でも・・・いいんですか?・・・ボクなんて・・・師匠の家族は?」
「オヤジは世界中を武者修行の旅で、どこにいるのかわからないし、母さんと妹であと一人、あまるしな」
「ありがとうございますね、師匠」
「いいよ別に、それに真琴がいると心強いしな。デッキとかのアドバイスは、真琴は結構的確だし」
「そ・・そう言われると・・照れますぅ・・・・腕には自信はないですけど・・・・そういうのは得意ですから」
「ああ、期待しているぜ」
「はい」
「じゃあ、教室にいこうか」
「はい」
ガラッ。
空は教室のドアを開けた。
開けた瞬間、空が入ってくるのを確認したクラスメイト達が、一斉に声を上げる。
『おおーーーきたーーー!』
「?」
クラス中のみんなが、空のまわりに集まってくる。
その中には、みかんとマリアの姿はなかった。
「きたぞ!わが校の英雄!」
「すげぇーぜ、空!日本代表に選ばれたんだろ?」
「しかも、みかんと合わせて、うちのクラスから2人も」
「マリアさんなんて、日本モンスタートランプ協会の会長だなんだって」
「うちのクラスすげぇーー」
皆が、空たちを褒め称える。
「一体、このクラスどうなってんだ?」
「このクラスにいれてよかったー応援するからな、ワールドカップ大会」
「握手してよ、空くん」
「俺も」
「あたしも」
その様子を見て真琴は、空が褒められて嬉しい半面、どこか困惑していた。
「し・・師匠・・・す・・すごいですね・・・・師匠・・もう超有名人ですよ」
「う~~ん。こういうのあんまり、苦手だけどな・・」
空は頭を掻きどこか複雑そうだ。
「転校生!」
「!」
教室ドアの外から大声が聞こえる。
空たちが振り向くと、そこいたのは、3年の前田 勝だった。
「・・・勝クン・・・・?」
前田 勝。
はじめて空が転校して日に、絡んだ少年だ。
勝はズンズンと歩きながら、空に近づいてくる。
「話は聞いたぞ・・・転校生・・・日本代表のメンバーに選ばれたんだってな?」
「ああ」
(まさか・・・勝クン・・師匠に勝負を挑みに・・・)
真琴は、そのいつもの雰囲気と違う勝を見て、心配する。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
2人は無言で見つめ合う。
そして、勝が床に手をついた。
「頼む転校生!サインくれェ!そして、前田 勝くんへって書いてくれ、頼む!」
(えええええェェェェェェ!)
真琴とクラス中のみんなが驚いた。
勝が空に、土下座してサインを頼んだのだ。
「ま・・勝クン、ど・・土下座まだ、しなくても・・・・」
勝は急に立ち上がると、空の両手を掴んで言った。
「ちなみに俺さ、この学校の日本代表メンバーの応援団、団長になったんだ。何か悩みがあったら、いつでも俺に相談してくれ。金のこと以外ならなんでものるぜ。わーはっはっはっはっはっは」
(ま・・勝クン・・・い・・いつのまにか、師匠の大ファンになっているし・・・)
真琴は、勝のその変貌ぶりに驚愕した。
その様子を見て、まわりの生徒たちが話し始める。
「知ってるか・・・アイツ、勝手に空の親友だって言いまわって、威張りちらしているらしいぜ・・・」
「調子のいい奴」
(あ・・あははっ、ま・・・勝クン・・なんかキャラ変わっちゃったなー・・前は、まわりから恐れられていたのに・・・いまじゃ。・・・・・これも師匠のおかげかな・・・)
変わったしまった、以前のいじめっこ見て、真琴はどこか複雑な表情をしていた。
そして勝は、空にサインを断られ、泣きながらまた土下座して頼んでいた。
キ―ンコーンカーンコーン。
学校が終わり、チャイムが鳴る。
帰り道。
空と真琴、それと、あのあと遅れて来た、みかんとマリアが、一緒に歩いていた。
「それにしても・・・・・ったく、なんなの・・・たかが、日本代表に選ばれたくらいでサイン、サインって・・・めんどくさい」
「そ・・そのわりには、サイン書くの、メチャメチャ早かったですけどね・・・みかんさん」
「そりゃあね、いちおうアイドルだし」
そのすこし威張った態度にマリアが。
「3流のか?」
「1流よォ!テレビだった出ているんだからね!」
「たしかに・・・テレビに出ていると、すごいアイドルって感じはしますよね」
「でしょー」
「それはどうかな・・・テレビに出ているからといって、1、2年で消えるアイドルなんて、よくいると言う話だし・・・・あんがいそういうのが、近くにいるかもしれないぞ」
「いない!あたしの近くにはいない!」
「ふっ自分が見えていないというのは・・・哀れだな」
「ぶっ飛ばすわよ!」
マリアの皮肉めいた言葉に、みかんは激怒する。
あいかわらずマリアとみかんはケンカをしていた。
日常の微笑ましいシーンだ。
「師匠」
「ん?」
「これからバトル堂に行きませんか?店長に会って、師匠たちがワールドカップに出場することを伝えたいし・・・」
「そうだな・・・・行ったついでに、カードバトルでもするか」
「あんた・・・昨日、夜中まで4人でしたのに・・・まだする気?」
「ああ、いけないか?」
「いえ・・・ぜんぜんオケェーよ。今度こそあんたに勝つ!」
「じゃあいこうぜ」
4人はバトル堂の前にいた。
そこは空き地で、真ん中にはゲームのような、地下に続く洞窟があった。
そこがこの町にある、唯一のバトル―ドームだ。
バトルドームとは、モンスタートランプを、バーチャル映像でできる場所の総称である。
風変わりなその場所は、その街並みから浮いていた。
その空き地をまじまじ見て、みかんは思う。
「この店って・・・前から思ってたんだけど・・・変わってるわよねー地下にバトルドームがなるなんて・・」
「私はなぜ、こんな風に作ったかなんとなくわかるぞ・・・きっと来てくれるカードバトラー達に楽しんでもらいた・・その一心からだろう・・・・私もモンスタートランプ日本会長として、こういうところは見習わないとな・・・私の目標は日本中のみんなに、モンスタートランプの楽しさを知ってもらいたい・・・・それだけだからな」
「大層な夢ね・・・・」
「ここの店長も、本当にモンスタートランプが大好きな人なんです。でも・・・いままで一度も、モンスタートランプをやっているところを見たことがないんですよね・・・そういえば」
「それでなんで好きってわかるのよ?」。
「そ・・・それは・・・なんとなく・・・感じで・・・・・」
「感じね・・・・・まあ、こんな風に作るんだから・・・好きであることには違いないだろうけどさ」
「まぁ・・理由があるのだろう・・・・カードバトルができない」
「理由ね・・・・好きなことができない理由ってなんなのよ?・・・そんな理由あるのかしらね・・・・」
みかんの疑問に空が答える。
「じゃあ、ワールドカップ出場の連絡ついでに、店長に聞いてみようぜ。なんでカードバトルをやらないか」
「あ・・・あんたね・・・・軽いノリね・・・・もしかしたら、何か深刻な理由があるかもしれないでしょ?」
「じゃあいこうぜ」
「ちょっちょっと・・・話しを聞きなさいよ!」
空はみかんの話を聞かず、洞窟の地下階段を降りていく。
「いや・・・師匠に行っても無駄ですよ・・・一度こうと決めたら、絶対しますから」
その言葉にマリアが、少し顔を赤らめ。
「そこが、かわいいところだと思うがな」
みかんはその言葉に、難色をしめす。
「かわいい・・ってあんたね・・・・・・」
「おまえもかわいいぞ、みかん」
「はぁ!」
マリアに言葉にみかんは顔を真っ赤にする。
「バカなところが」
「この野郎ォ!」
真琴も2人を置いて、洞窟に入り地下階段を降りていった。