VSライバル⑩
「くっ・・・オレの負けか・・・・」
大地は天井を見るように、上を見上げていた。
(皮肉だな・・・・あのときのカードが、俺に敗北をもたらし・・・あいつを守るなんて・・・これも運命ってやつか・・・・・・まあいいさ)
大地は闘技場の外に、ゆっくり歩き出した。
それを空が呼びとめる。
「大地!これでオレの690連勝だな」
「・・・・・・・・じゃあな」
大地は少しだけ振り向くと、その場を立ちさろうとする。
「おーーい大地」
そんな大地に空は駆け寄る。
「・・・・・・なんだ?あの時のいい訳は聞かないぜ・・・おまえは決勝までこなかったんだからな・・・」
「いや、そんなことじゃないさ、ただ一言お礼がいいたくてさ」
「お礼?」
「ああ、楽しいカードバトルだった・・・また一緒にやろうぜ」
空は二カッと笑う。
「ちっ・・・・・・・今度こそ、決勝まできな・・・・・」
「ああ・・・」
(礼か・・・それは俺の台詞なんだがな・・・・・俺はおまえに勝って過去を乗り越える・・・そう思っていた・・・だが違った。本当に過去を乗り越こえるということは、おまえに勝つことじゃなくて、おまえを信じることだったんだ。俺はおまえがあのとき、モンスタートランプを捨てたくて捨てたんじゃないって・・・本当は、心のどこかでわかっていた・・だが、過去の捨てられた憎しみや悲しみ、絶望という闇に囚われ、おまえという光から目を閉ざした。おまえは、俺にとって光だ・・・・おまえがいてくれたからこそ、俺は闇の中から抜け出せた。それなに・・・・俺はなんてバカだったんだ、あのとき信じていれば、おまえとの再開、また違った形になっていたはず・・・だが、俺はもうおまえを信じられる。もう過去の闇に囚われない、おまえという光を見て俺は、永遠に生き続けられることができる。ありがとう空、おまえに会えて本当によかった)
「なー大地」
「あ?」
「決勝でやるってことなら、また約束しなおそうぜ。今度はちゃんと守るからさ」
「そうかい、期待してるぜ」
「じゃあ指切りだ。昔みたいに」
「こ・・断る・・・!こ・・・この年になってそんな恥ずマネ、で・・できるか」
「いいじゃん・・・オレが勝っただし、1つくらい言うこと聞いてくれてもさ」
「て・・テメェ・・・・・・・」
「大地が負けたんだぜ」
「・・・・・・・・・ちィ・・・わかったよ!す・・すればればいいんだろ、すれば!」
「何怒ってんだ?」
「う・・うるせェージュリンするぞ、クソったれェ!」
2人は約束の指切りをした。
また決勝で会おうと。
それを見ていた真琴たちは。
「2人とも仲直りできましたね」
「そうだな」
「ねーねーでも、あのときの理由、話さなくてもいいの?」
「いいんですよ、もう・・・きっと伝わってます・・・あの2人なら」
「そうだな・・・・カードバトルを通して、言葉以上に伝わりあっているだろうな・・・」
「い・・いや、意味わかんないし」
「またな大地」
「ああ・・・・・またな、空」
大地は、東京バトルドームを去っていった。
「師匠―」
「ん!」
真琴たちが空に駆け寄った。
「よかったですね師匠、仲直りができて」
「ああ、たのしかったな・・・大地とのカードバトル」
「あんた・・・そればっかりね・・・それ以外にないの?」
「ない」
「・・・・・あっそ」
「空、おめでとう。これであなたは、日本代表のメンバ―に決定した。世界戦にむけてがんばってほしい」
日本モンスタートランプ協会会長のマリアから、賛辞を贈られる。
「ああ・・・そんなことあったけ、忘れてた」
「あ・・あんた・・・いちおう世界大会よ」
「オレには世界に興味はない」
「じゃ・・じゃあ、なんならあるのさ」
「宇宙1」
「・・・・・・・・・・・あっそ」
空がみんなに話しかけた。
「じゃあ、この大会も終わったことだし。帰るか」
「はい」
「そうだな」
「ちょ・・ちょっと!敗者復活戦トーナメントは?あたしの試合はどうしたの?」
みかんのその言葉に、マリアはいじわるそうな顔で言った。
「ああ・・・忘れてた・・もういいんじゃないか・・・ふふっ」
「コラーーーッ!あんたねェー!」
「真琴・・」
「はい?」
「モンスタートランプって楽しいな」
「いまさらですか?」
「いまさらっていうか・・・毎日思ってるんだけどな」
空は満面の笑みで笑う。
「師匠らしですね」
「オレらしいな」
こうして、モンスタートランプ・ワールドカップ大会、日本代表決定戦が終わった。
いよいよ来週からハワイで1回戦目が始まる。
ぞくぞくと集まってくる強豪たちのなか、空は、大地は、日本代表メンバーは、どう戦っていくのか。
究極の戦いが、始まろうとしていた。
ちなみに、敗者復活戦トーナメントは、みかんが優勝したらしい。