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モントラ  作者: ゆう
1章
2/49

VS関東チャンピオン②


20分ほど前。


コンコンコン。


ある人物が、ドーム内の事務所をたずねてきた。

それは少年だった。

金髪で白のスーツ、見た目は、高校生くらいだろうか。

少年はいきなりこう宣言した。


「この店を、僕が買収しました」

「!」


店長は衝撃を受けた。

その少年の言葉に。

事務所に入ってくると少年は、椅子のホコリを払い、足を組み、座った。


「まあ、正確には、僕のパパ・・がですがね。僕が頼んだので、僕ということでいいでしょう・・・」


いきなりの展開に、店長は頭が回らず、困惑した。


「・・・・き・・キミは、一体、な・・・何を言ってるんだい?いきなり現れて・・・」


その言葉に。


「ふふっ、信じられませんか?仕方ありませんね。これを見てください。これが証明書です」

「!」


少年は1枚の紙を差し出す。

それを、店長が確認する。


「こ・・これは・・・・・そ・・・そうか、わかった」


店長はこの店が、もう、自分の物ではないとことを理解した。

だが、一つ不可解なことがあった。


「だ・・だが・・・な・・なんでキミはここを?」


少年は、その質問に答える。


「僕専用のバトルドームがほしかったからですよ。今日は、僕の誕生日なんです。だからパパに頼んでここを買ってもらったんですよ」

「こ・・・ここを、一体どうするつもりだい?」

「好きな日、好きな時間に、コンピューター対戦でもさせてもらいますよ。僕一人で」

「!」


嫌な予感は当たった。

予想以上の答えだった。


「ああ、安心してください店長。あなたはクビにはしませんから。僕専用といっても設備の管理や調整は必要だ。あなたは店長として非常に有能だと聞いています。だから僕専用の店長として、働かせてあげますよ。給料は通常の3倍だしますよ」


「ふ・・・ふざけるな!」


その言葉に店長は、怒りにまかせて怒鳴る。


「・・・・何か不満でも?」

「あるさ・・・僕はこの店を、みんなでモンスタートランプを、楽しんでもらうために作ったんだ。だからここをみんなで使ってほしい。頼む」


年が離れた少年に、店長は頭を下げて頼む。


「みんな?ここにいるクズ共のことですか?」


少年は、あたりを一瞥すると、あざけるように笑う。


「あははははははははははっ・・あなたこそふざけないでくださいよ。なんでエリートのこの僕が、クズ共と一緒に、プレイしなくちゃならないですか?クズはクズ同士慣れ合っていればいいんですよ。エリートのこの僕と、プレイする資格なんてありません」

「ふざけんな!この野郎ォ」

「!」


その会話をこっそり聞いていた、前田 勝が現れた。


「・・・・・誰だい?・・・君は・・」


ドンと、胸を張り答えた。


「前田 勝。この町内最強の男だ!」

「ぷっ・・・・・あはははははははははははっ」


少年は大笑いした。


「な・・何笑ってやがる・・・ビビって、おかしくなったか?」


そしてとうとう、少年が、自分の正体を明かす。


「僕は関東チャンピオン、伊集院 一郎だ」

「!」


その言葉に勝は、膝から下が崩れ落ちそうなほどの衝撃を受ける。

そんな勝の心を見透かすように一郎は言った。


「ビビったかい?」

「だ・・・誰が・・・!」


誰がどう見ても、ビビっていた。

その様子一郎は、優越感に浸り見ていた。。


「そうだこうしよう。君がこの僕に、モンスタートランプで勝つことができれば、この店はみんなで使いましょう・・・だが、君が負けた場合、君のデッキはすべてもらうよ」

「なっ!」


その横暴な選択肢に、勝の心はグラグラ揺れる。

この店は大事だ、だが、デッキは自分にとって宝。

それをすべて賭けるなんてありえない。

しかも、相手はあの関東チャンピオン。

どうすればいい。

勝の心は揺れた。

そんな勝の心を、一郎はさらに揺さぶる。


「どうする?やめるかい?怖いだったら・・・」


その言葉に勝は吹っ切れた。

この店を守るため、戦うことを決めた。

このあとの惨劇など、露とも知らず。


「ふ・・ふざけんなァ!・・・・いいぜぇ・・やってやるよぉ。やってやるさァァァァァァ」


半ばヤケクソだが、勝は、使命感に勝は燃えていた。

この店を守るという。

そんな勝を嘲るように見ると。


「それじゃあデッキを貰おうか。これで999個目・・・」


勝と関東チャンピオン伊集院 一郎のカードバトルが始った。


回想終了。



「そ・・・そんなことが、そ・・それで・・・・あんなことに」

「うううっ」


うずくまり泣く勝を、真琴は見た。

普段は大嫌いだが、こんな時くらい同情してあげようと思った。

だが、関東チャンピオンは、同情のカケラさせ見せなかった。

うずくまる勝に、さらなら追い打ちをかける。


「それにしても君・・・うざいなー・・いつまでそこにうずくまって、泣いているつもりだい?みっともないな・・・」

「ううっ」


その言葉に勝は、さらに泣いてしまった。


「みっともなくなんてないさ」


そのとき勝の側に、空が現れた。

泣いている勝の肩をポンと叩く。


「!・・・転校生」

「やあ 勝」

「誰だい・・・・君?」


突如の乱入者に、気持ち良く勝利の余韻に浸りながら敗者をいたぶっていたのをジャマされ。

一郎の内心は煮えくりかえっていた。


「大空 空。今日、この町に引っ越してきた、モンスターバトラーだ。よろしく」

「・・・・・・」


その言葉に一郎は、さらなる怒りを募らせる。

自分という圧倒的存在に、堂々と立ち向かってくるこの男に。


「勝はこの店を守るため、勇気を出して、デッキを賭けて戦ったんだ。みっともないわけないだろ」

「て・・・転校生ぇぇぇ・・・ううっ」


その言葉に勝の心は救わる。


「ふん、弱者のたわごとを・・・」

「おまえはオレが倒す!」


空は一郎に拳を突きつけ、こう宣言した。


『・・・・・・・・・・・』


場は沈黙に包まれる。

あの関東チャンピオン、伊集院 一郎に、戦いを挑んだのだ。

目の前で町内最強が、あんなボロ雑巾のように打ちのめされた姿を見て、尚


「あ!無理だ」

『え!』


空のその言葉に、皆が動揺を隠せない。

あれだけ啖呵を切っておいて、いまさら無理だと言うのだから当然だろう。

そしてさらなる事実が、場を混乱に陥れる。


「オレ・・デッキ持ってなかったや」

『なっ!』


その言葉にほぼ全員が驚愕し、固まっている。

勝てないどころか、その戦う準備段階さえできていなかったのだから。

空はタタタっと、闘技場の外に走っていった。


「ちょっと待ってて、コンビニでカード買ってきて、すぐデッキを組むから」


そう言ってバツの悪そうな顔で、コンビニに向かう。


モンスタートランプは、世界的カードゲームである。

どこでも売っている。

ちなみに1パック5枚入り、150円だ。


「あ!」


空は気づいた。


(お金も持ってないや・・・!)


自分がお金を持っていないことを。


(どうしよう・・・)


空が悩んでいると、後ろから声をかけられる


「空くん」

「ん!」

「ボクのデッキを使ってください」


真琴は空に、自分のデッキを差し出された。


「え・・・・・いいのか?」

「はい。空くんに使ってほしいんです」

「・・・なんで?」


空の言葉に、真琴はうつむき答えた。


「ボクは弱い人間です・・・いつも嫌なことからは逃げてばかりです・・・・。でも、空くんがあいつに挑んだ姿をみて、勇気を貰いました。・・・だからせめてボクのデッキだけでも・・・一緒に戦わせてください!お願いします」


真琴は頭を下げ、空に頼んだ。

そのデッキを、空は受け取った。

そして、真琴の目の前に、拳を突きだした。


「・・・・・・ああ、一緒に戦おう。真琴」

「はい」


二人の拳が合わさる。


「俺たちも・・・」

「みんな・・・・!」


それを見ていた、たくさんのカードバトラー達が、二人のまわりに集まる。

事情を知った、カードバトラー達が、集まってきたのだ。

それぞれの手には1カードが枚ずつ。

きっと、一人一人が持つ、最高のカードなのだろう。

それを皆、空に託していく。

期待しているのだ、空と真琴に。

二人のやりとりを見て、自分達もこの二人に、この店の運命を賭けてみたくなったのだ。

自分達の、大切なカードを託すことによって。


『この店を守ってください。お願いします』

「ああ!まかせろ」


空は皆の声に応える。

その光景を見ていた一郎は、ひややかな視線を向ける。


「嫌だね・・・クズ共の友情は・・不快だよ。いくらクズカードが集まっても、僕に勝てる訳ないのに・・・嫌だねぇ・・・」

「いや・・・・」

「!」


一郎の側に、店長が来ていた。


「君は・・・その友情の力で、きっと負けるよ」

「ふん。戯言を・・・」


『カードバトルスタートします デッキスキャンします』


ドーム内から、女性的機械音で、アナウンスが流れる。


「デッキスキャン?」

「はい、デッキを前に出してください。そうしたらコンピューターが、デッキ内のカードデータを読み取り、さっき周りで行われていた、バーチャルカードバトルができるんです」

「へー」


空が感心していると、真琴は辛辣な顔で語る。


「ここしかないんです」

「ん!」

「バーチャルカードバトルができる場所は・・・だから・・・・・・・・」


ポンと、通りすぎながら真琴の肩を叩く。


「ああ・・勝とう。二人で」

「はい」


空はゴソゴソと、ポケットを探ぐった。

そして3枚のカードを出す。


「んじゃあ、この3枚を加えて・・デッキ完成っと」

「そのカードは?」

「ああ、引っ越す時、ドラゴンデッキと全部のカードはあげちゃったんだけど。この3人の大切な友達にもらった、3枚のカードだけは、肌身離さず持っているんだ」

(そ・・・そんな大切なカードを・・・・・)



『デッキスキャン』


ドームの天井から、赤いスキャンビームのようなものが放たれ、空のデッキをスキャンしていく。


『デッキスキャン終了しました。カードバトルスタートします』


いよいよ戦いの準備段階が終わり、カードバトルが始まろうとしていた。

そのとき。


「そうだ、バトルフィールドを展開させようか」

「バトルフィールド?」


一郎は、何かを提案する。

その意味がわからない空に、真琴が説明した。


「はい、バーチャル映像の風景を、このドームに映しだすんです」

「へー」


一郎はすこし考えた。


「そうだな・・・・・君たちに暗い絶望をあえる・・という意味で、宇宙ステージにしようか」


パチンと指を鳴らすと、ドームはバーチャル映像の宇宙に包まれる。


「すごいなー・・・」


空はその光景に目を奪われる。


『先攻は空選手』


アナウンスが流れと同時に、空の目の前に、巨大なバーチャル映像のカードが5枚出現する。

大きさは1メートルほど、空の目の前に浮いている。


ルール説明。

カードバトルが始まった時、お互いのプレイヤーは、デッキからカードを5枚引き、それを手札にする。それを使い、戦い。

相手のライフ15を、先に0にしほうが勝ちだ。


1ターン目。

空 ライフ15 手札5枚。

一郎 ライフ15 手札5。


空のターン。


「よしオレのタ―ン。ドロ―」


空がそう宣言し、カードを引くように、手を大きく横に振ると、目の前に新たなバーチャル映像のカードが現れる。

空の手札はこれで6枚となる。


ルール説明。

自分のターンの始まりに、デッキからカードを1枚必ず引かなくてはならない。


(たしか・・1ターンに1回だけ、モンスターを召喚できるんだったよな)


空はルール思い返す。

3年もやっていなかったのだ、ところどころ忘れているようだ。

だが、バーチャル映像でのカードバトル方法は、さきほど周りでやっているのを見て、すべて把握している。

空は、成績は悪いが、好きなことにたいしての、集中力・観察力はズバ抜けていた

。超天才的といっていい。

空は手をパーにして、バーチャル映像の手札に触れる。


「まずはドックスライムを召喚!」  


触れたカードは、閃光となり、空の前に放たれる。

その閃光から、犬型のスライム族モンスターが現れる。


カード情報。

ドックスライム レベル1 種族スライム族 属性水 超能力????


これが召喚といわれるものだ。


『モンスタートランプ』ルール説明。


モンスターカードには、名前とレベル、その種族と属性、そのモンスターのもつ超能力が記載されている。

レベルはモ高い方が強く、モンスター同士のバトルでは高いほうが勝ち、低い方は負け、破壊され、墓地にいく。

墓地とは使い終わったカードがいく場所。

もし、同じレベル同士の場合、両方が破壊され、墓地にいく。


相手にモンスターがいない場合、相手プレイヤーに、直接攻撃することができる。

直接攻撃した場合、そのモンスターのレベル分だけ、相手プレイヤーにダメージをあたえる。

モンスターの属性は、火 風 土 水の4種類があり。

すべてのモンスターは、かならず、この4つのうちの1つに、属している。

(トランプに当てはめると、ハート(火)、スペード(風)、クロ―バ―(土)、ダイヤ(水)である。)


モンスターの召喚は、1ターンに1回のみできる。

モンスターは1ターンに1回のみ、攻撃宣言ができる

このルールさえ守れば、召喚、攻撃の、順番の組み合わせは自由だ。


例1

1 モンスターを召喚する。

2 その召喚したモンスターで攻撃。

3 ターンを終わりにする


例2

1 前のターンからいるモンスターで攻撃。

2 攻撃後、モンスターを召喚。

3 召喚したモンスターで攻撃。

4 ターンエンド


ルール説明終了。



(あれはボクのモンスター!)


場に召喚されたドックスライムは、真琴のお気に入りのモンスターだ。

それが一番最初に空の役に立てて真琴は喜ぶ。


(1ターン目は攻撃できなかったはず・・・なら)


「じゃあオレのターンは終わりだ」


空は自分のターンを終わらせる。


2ターン目 。

空  ライフ15 手札5。

一郎 ライフ15 手札5。

一郎のターン。


「僕のターン、ドロー」


一郎は手を組み、音声認識のみでドローする。


バーチャル映像のカードバトルでは、すべて音声認識だ。


手札を起動させるには、モンスターの場合、召喚。

呪文の場合、呪文発動など、バーチャル映像の手札に触れながら、音声で起動させる。


一郎は、バーチャル映像の手札に、人差し指で触れ、そのカードを起動させる。


「僕はこの呪文を発動させる、紅蓮地獄。この呪文はお互いのプレイヤーに、2ポイントのダメージを与える」


発動された呪文が、閃光と共に消えると同時に、闘技場の中央から、炎が湧きでる。

それが渦となって二人を襲う。


『ゴアアアアアアアア』


バーチャル映像の業火が、二人を包み込む。

空と一郎は、2ポイントのダメージを受ける。


空ライフ13。

一郎ライフ13。


一郎は続けざまに呪文を発動させる。


「そしてさらに、呪文未来予知発動。この呪文は、バトル以外でダメージを受けた時、発動できる。デッキの上からカードを5枚覗いたあと、デッキからカードを1枚ドローする」


一郎は、目の前に映し出された5枚のカードをじっくり見たあと、空に宣言する。


「予言してあげるよ。」

「!」

「このバトル、10ターン以内に僕が勝つことを」

「そ・・そんなバカな!預言者じゃあるまいし」


いきなりの宣言に、空の後ろにいた真琴が動揺する。


フッと、一郎は笑い。


「あまり関東チャンピオンを舐めないほうがいい、僕は骸骨剣士を召喚」


一郎の場に、腕のない骸骨兵士が召喚された。  


カード情報

骸骨剣士 レベル1 属性土 種族アンデット族 超能力????


「ドックスライムと、同じレベル・・・」

「バトル!骸骨剣士でドックスライムを攻撃」


一郎の攻撃宣言と共に、骸骨剣士はドックスライムに突撃した。

同じレベルのモンスター同士がバトルすれば、両方破壊され墓地にいく。


「相打ち狙い!」


真琴は、そう思ったが、違っていた。


「そんなわけないだろう。クズと!骸骨剣士の超能力発動!このモンスターはバトルする時サイコロをひとつ振ることができる。その出た目の数×2、レベルを上昇させる」

「!」


ルール説明。

超能力とはモンスターがもつ固有の能力だ。

その発動タイミングは、個々で違う。


上空に大きなバーチャル映像のサイコロが現れる。

それが床にストンと落ち、コロコロと転がる。


出た目の数は『4』。

4×2は8。


「骸骨剣士のレベルは9に上昇」


レベルが上昇したと同時に、骸骨剣士の口から、4本の骨剣で吐き出される。

それが骸骨剣士の周囲を纏い。


「連続骨剣(ボーンスラッシャ―)」


4本の骨剣に、ドックスライムは5等分にスライスされる。


「ドックスライムを破壊!」

「ああ!ボクのモンスターが」


だが空は、自分のモンスターが破壊されたというのに、余裕の表情を崩していなかった。


「オレはドックスライムの超能力を発動!ドックスライムは1ターンに1度再生できる」


空の超能力発動宣言と共に、5等分にされたドックスライムは、ぐにゅぐにゅとくっつき、完全な形で再生された。


「すごい!空くん、もうボクのカードを使いこなしている」


ブランクがあるので、真琴は心配していたが、それも杞憂だったようだ。

このバーチャルカードバトルは、スピード感を重視している。

発動のタイミングを逃すと、その超能力または呪文を、発動できないということもある。

一秒の遅れが、そのままバトルの敗北に繋がる。

バーチャルカードバトルにおいて、もっとも重要なのは、手持ちのカードの能力を把握し、使いこなすことこそ、勝利への一歩なのである。


「ふん・・・僕のターンは終わりだよ」


3ターン目。

空ライフ13 手札5。

一郎ライフ13 手札4。    

空のターン。


「オレのターンドロー。オレは手札からレッドスライムを召喚」

空の場に赤いスライム族モンスターが召喚される。


カード情報

レッドスライム レベル5 属性火 種族スライム族 超能力????   


「そして場にあるドックスライムと、レッドスライムを合体」

「合体だと!」

「ジャイアントスライムを合体召喚!」


2体のスライム族モンスターが、ぐにゅにゅ~とくっつき合体した。

その瞬間、閃光とともに、中から巨大なスライム族モンスターが現れる。


カード情報

合体モンスタージャイアントスライム レベル9 属性水 種族スライム族 超能力???? 

合体条件スライム族モンスター2体。


ルール説明。

合体とは、2体の以上のモンスターを、墓地に送ることによって。

あらたなるモンスター1体を、生みだすシステムである。


合体召喚は、1ターンに1回の召喚とは違い、合体を使用できるなら、1ターンに何度でも可能。


「チィィ・・・僕より先に合体だと・・・チョコザイな」

(空くんブランクがあるのに、合体システムも使いこなしている)

「いくぜ、ジャイアントスライムで、骸骨剣士を攻撃」


空の攻撃宣言とともに、ジャイアントスライムは、その巨体を縮めバネのように、その反動で一気に空中に飛びあがる。

そして、骸骨剣士の上までくると、そのまま落下した。


「軟体落とし(スライムプレス)」


攻撃が当たる前に、一郎は、骸骨剣士の超能力を発動させた。


「僕は、骸骨剣士の超能力発動。バトルする時、サイコロをひとつ振り、出た目の数×2。レベルを上昇させる」


コロコロコロ。

出た目の数は『3』。

よって、骸骨剣士のレベルは7に上昇した。


「骸骨剣士を破壊!」


レベル9のジャイアントスライムが、レベル7の骸骨剣士を押しつぶし破壊する。


「やったー」


その光景に真琴は歓喜する。


「・・・・クズどもが、これくらいで喜んでじゃねぇーよ。僕は手札から、呪文アンデット復活を発動。破壊されたアンデットモンスター1体を、場に超能力召喚する」   


呪文効果によって骸骨剣士が、墓地から呪文召喚される。


呪文召喚とは、呪文効果による召喚。

1ターンに1回の召喚とは違い、呪文効果を使用できるなら、1ターンに何度でも可能。


「くぅ~~倒したと思ったのに」


くやしがる真琴だが、空は笑っていた。

まるで苦戦を楽しんでいるかのように。


「オレのターンは終わりだ」


4ターン目。

空 ライフ13 手札5。

一郎 ライフ13 手札3。

一郎のターン。 


「僕のターンドロー。・・・僕はファイアーダークヒーローを召喚」


一郎の場に、炎を纏った、ヒーローモンスターが召喚される。


カード情報。

ファイアーダークヒーロー レベル5 属性火 種族炎族 超能力????


「そして、ファイアーダークヒーローの超能力発動!ファイアーダークヒーローは自分の場にレベル1のモンスターが存在する時、そのレベルを常に10にする」

「レベ10!」

真琴は驚愕する。

レベル1の骸骨剣士がいることによって、ファイアーダークヒーローのレベルは常に

10に固定される。


「ファイアーダークヒーローで、ジャイアントスライムに攻撃」


攻撃宣言と共に、ファイアーダークヒーローは地を蹴り、空中に飛びあがる。

そして全身に纏った炎を、下半身部分に集中させ、それが拳となり射出。

ジャイアントスライムを殴り、破壊した。


炎拳ファイアーナックル


ズガッ。


「ジャイアントスライム破壊」

「くっ・・・・・・・・・く~~~~~~たのしい・・・」

「!」


空がそうぼそっと呟くのを、真琴は聞いた。

直後、空は大声で叫んだ


「たのしいーーーーーーーーーーーーーーーーー」

「!」

手を広げ、大きな声で。

その声に、皆が驚く。


「やっぱ、モンスタートランプは、めっちゃっ楽しいな。日本に帰ってきてよかったー」


そう、あっけらかんに笑う。

そんな空に、黙っていられなかった者がいた。

それは、デッキを奪われた、前田 勝だった。

勝は、闘技場の外から、怒声をあげる


「おい!真面目にやれ!転校生」

「!」


空は振り返った。


「負けたらこの店が取られちまうんだぞ・・わかってんのか!」


空は少し考えて。


「ああ・・・・・・・・・忘れてた」

「おいィィィィィィィィ」


その態度に、さらなる怒りをぶつけようとする勝に、店長、天野 剣也が制止する。


「いやいいんだ」

「店長!」

「彼はきっと・・・・」


店長が言うと同時に、真琴も思う。


(空くんはきっと・・・モンスタートランプを楽しめば楽しむほど、強くなれるんだ。僕なんて震えて、身動きひとつできないのに・・・空くんはすごいよ。最高だよ)


真琴は、空のそのプレイスタイルにあこがれた。

こんな状況でもカードバトル楽しめる、強靭な精神に。

自分なら、震えて、まともにプレイできなかっただろう。

現に、このバトルを見ているだけで、緊張して動けないのだから。

それなのに空は、グングンと力を伸ばし、真の力を発揮していく。

そんな空を見て、真琴は、いつか自分も、こんな風になりたいと、あこがれる。

空は楽しんでいるが、決して手を抜いているわけではない。

彼のプレイスタイルは、楽しんで全力を出し切り勝つこと。


油断などもっての他だ。

この3年で彼の腕は落ちたが、このプレイスタイルだけは、まったく変わることはなかった。

誰しもが、思う。

常にカードゲームを楽しんでやりたいと。

だが、それは無理なのだ。

負けたくない、勝ちたいとそう思う気持ちが、油断や慢心、恐れを生み。

バトルを楽しむ心を鈍らせる。

だが、空には、それらがない。

勝つことも、負けることも、それほどこだわりがないのだ。

あるとしたらただ1つ。

悔い残らないバトルをすること。

それが、皆を魅了する。

きっと、万が一負けたとしても、誰も空を恨むことはないだろう。

皆、一緒に戦っているのだ。

空のデッキに眠る、自分のカード共に。

空のバトルを見ていると感じてしまうのだ。

一体感を、ワクワク感を、純粋にカードゲームを楽しんでいたあの頃を。

前しか見ず、ただ見ず、ひたすら前しか見ない空に皆があこがれる。

そんな空の姿を、皆が、期待と羨望の眼差しで見つめていた。


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