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モントラ  作者: ゆう
1章
16/49

VSライバル②


東京バトルドーム。

ドーム内は、真っ暗になり、ドーム中央にある、通常より大きな闘技場に、スポットライトが当たっていた。

そしてドーム内に、アナウンスが流れる。

まわりの観客席は、シーンと静まりかえり、これから行われことを、かたずを飲んで見守っていた。


『それでは、モンスタートランプ・ワールドカップ大会、日本代表決定戦の、決勝戦を行います。それでは対戦者・・・前へ!』


そのスポットライトが当たった闘技場の上に、先に、1人の少年があがってくる。

それは、バンダナと鋭い目つきが印象的な、山田 大地だった。


(・・・空・・・とうとうこの日がきたな・・・テメェを・・今日こそ・・・)

「!」


そして反対側から、もう1人の決勝進出者が現れる。


「・・・・・・・誰だ・・・おまえ?」


山田 大地はその者に尋ねる。

その者は、自分が思う、カッコいいポーズをしながら、名乗る。


「関東チャンピオン、伊集院一郎だ。さあ、このエリートのこの僕が、君の相手をしてあげよう・・・・・・・・・・・・・アレ?」


一郎が見ると、そこには誰もいなかった。



とある特別室。

そこは広く、テーブルとイスしかない、殺風景な部屋だった。

そこには、今大会で日本代表選手になりそこねた、数百名ものカードバトラー達が集まっていた。

そのなかには、空とみかんと真琴の姿もあった

真琴は空に尋ねる。


「本当のここで待っていれば、敗者復活戦はできるんでしょうか?」

「なくても・・参加賞のカードは貰えるわけだし、いいじゃないか」


真琴と空は、談笑しながらテーブルに座り、デッキの調整をしていた。

みかんは、壁によりかかりながら、訝しげな顔で言った。


「それにしても・・・あのときのマリアの言葉・・・・本当なのかしらね?」



回想


「あ・・あるんですかマリアさん?・・・敗者復活戦・・?」

「極秘ですけどぉ、ありますよぅ」

「ご・・・極秘・・」


空はマリアの言葉に喜んだ。


「よしっ、これでワールドカップ大会に、まだでられるチャンスがあるぞ!大地と一緒にでれる!」

「な・・何名、でれるんですか?」


真琴の言葉にマリアが答える。


「2名ですぅ」

「に・・2名・・・」

「あんたの言うとおり、本当に、敗者復活戦があるなら・・・あたし、大会を辞退しなきゃよかったわね・・・空と戦えるチャンスが、まだあったわけだし」

「みかんさんはまだぁ、大会のぉ辞退はぁ、取り消せますぉよぉ?どうしますぅ・・」

「いいわよ別に・・・あたしも敗者復活戦にいくわ」

「いいですかぁわざわざぁ・・」

「今度また空が、自分から負けるような、ふざけたマネしないように、最後まで見張らないとね・・・それに・・」


みかんは誰にも聞こえないような、小声でつぶやく。


「い・・一緒にワールドカップにでられなくちゃ・・・意味ないじゃない」


その小声に空は。


「んーなんだって?」

「な・・なんでもないわよ!バカ。それに、あたしと空で、代表枠2名は決定よ」

「心強いな・・・みかんが一緒に、ワールドカップに出てくれるなら」

「こ・・心強い・・・まあ、まあ・・あたしに心を奪われるのは、しかたないけどね」

「いやぁまったくぅ奪われてませんよぉ・・ぜんぜん・・耳鼻科いってくださぁいみかんさん」

「ま・・マリアさんも言いすぎです」

「もちろん、真琴も、応援にきてくれるだろ?」

「は・・はい師匠」

「ありがとな・・・でも、やっぱり、仲間っていいな・・・あいつとも・・大地とも、早くこんな関係に・・戻りたいな」

「し・・・師匠・・・・」


空のその言葉に、真琴は、2人の関係が、早く戻ることを祈るばかりだった。


「でもマリアさん・・なんでそんな極秘情報を知っているんですか?そんな噂は、まわりでも、誰もしてませんでしたよね?」

「そりゃあぁそうですよぉ、大会本部しかぁ知らないことですからぁ。他のみなさんにはぁ、開会式でぇこう伝えてありますぅ。大会の敗退選手には、参加賞として特別なカードを配布します、ですから、敗退したあと、すぐにこちらで用意した特別室で、お待ちください。って、でもぉじつはぁ・・・・参加賞でなくぅ、敗者復活戦でしたーみたいなぁサプライズで、みんなをぉおどかせて、喜ばせようという、極秘計画なんですぅ」

「ならなんで、それをマリアさんが?」

「それは秘密ですぅ・・でも、すぐにわかりますよ・・・お楽しみにー」

「じれったいわねーいまここで言いなさい」

「それではぁみなぁさん、またあとでぇあいましょう・・バイバーイ」


マリアはのらりくらりと、その場を去って行った。


「いっちゃいましたね・・・・マリアさん」

「ったく、ホント、掴みどころのない女ね・・」


回想終了



バン。


「!」


そのとき、特別室のドアが、勢いよく開いた。

その奥から、1人の少年が、ズカズカと中に入ってくる。


「大地!」

「空ァ!」


それは山田 大地だった。

大地は空の胸元を掴む。


「テメェ―・・・空ァァァ・・・・・」


2人は無言で見つめ合う。

一方は無表情で、どこか哀愁を感じる顔、もう一方は、怒りの中に、どこかやるせなさを感じる顔。

みかんが真琴の耳元で尋ねる。


「ちょっと、あいつが大地って奴?」

「はい」

「ずいぶんガラの悪そうな奴ね・・」

「みかんさんも、人のこと言えませんけどね」


ガスッ。

「痛いッ・・!足踏まないでください」


空は大地に尋ねる。


「もう、決勝終わったのか?」

「・・ああ」

「優勝したのか?」

「知らねえ―よ!どうでもいい、そんなこと・・・」

「そうか・・・すまないな、大地・・・約束守れなくて・・」

「あやまんな!その言葉はもううんざりだ!あいつらも、同じことばかり俺に言って・・・俺に・・・・会いさえきてくれなかった・・」

(それって・・・大地君を捨てた親御さんのこと・・・?)


大地は全身を震わせながら言った。


「おまえは・・・おまえは・・・おまえだけは絶対・・・・・・・・」

「大地・・」

「チッ」


大地は何かを言いかけると、それをやめ、空の胸元を掴む手を手荒く放す。

大地は特別室を出て行った。


「大地・・・・・」


その後ろ姿を空はずっと見ていた。


「師匠・・・・・・大丈夫ですか?」

「いや、結構・・・ダメージでかいかも」

「・・・・・・・・」


「みなさぁん、それではぁ、敗者復活戦を開始しますよぉー」


特別室のドアから、食空気を読まない声で、マリアが入ってきた。


「アレは・・・マリアさん?」

「な・・・なんであの女が・・・!」


真琴とみかんは、マリアのいきなりの登場に動揺した。

その敗者復活戦という言葉に、これまで参加賞のためにここに集まってきていた、何百名ものカードバトラー達がざわめき立つ


「敗者復活戦だと!」

「おい、なんだ、そんなの聞いてないぞ」

「マジか!」

「よっしゃー」


さまざまな反応が聞こえてくる。

マリアは、観光ガイドの持つ、旗のような物を振りながら、案内する。


「それではぁ・・みなぁさん、ドーム内にぃおこしくださぁーい」


1人のカードバトラーが、マリアに聞いた。


「それよりあんた・・誰だよ・・・いきなり現れて・・・」

「わたしですかぁ・・わたしはぁ」


マリアはメガネをとり、その長い銀髪の三つ編みを解いた。


「アレは!」


真琴は気づく、マリアがメガネをとった姿が、あの時、登校中に見た銀髪の女性だということを。

マリアは、普段のまぬけな口調を変え、高圧的で自信満々な声で、皆に、自分の正体を明かす。


「私は、日本モンスタートランプ協会会長の、海原マリアだ。はじめまして、よろしく・・みなさん」

「ま・・・マリアさんが、日本モンスタートランプ協会の会長・・・!ま・・まだ中学生なのに」

「い・・・一体。これはなんの冗談よ・・・悪夢にもなってないわよ・・・それにあいつ、かなりキャラ変わってない?いままであたしたちの前で・・猫かぶってたのね」

「アイドルの時、猫かぶっているみかんさんには、非難できませんよ・・・」

「うっさい」


空は感心したようにマリアは見ていた。


「あいつ・・・すげェー奴だったんだな」


そんな空の視線に気づき、マリアはウインクした。


マリアと、数百名のカードバトラーたちは、特別室から移動して、ドーム内にはいった。

そして中央の、一番大きな闘技場の上に、マリア一人があがり、マイクで話し始めた。


「これから、敗者復活戦の内容について話す。一度しか言わないので、心して聞くように・・

日本代表選手はいま、6名中4名が決まっている。そしてあと、2名の選抜方法についてだが・・・」


マリアはぴっと、右手の指2本を前に出す。


「1、敗者復活トーナメントの優勝者一名」

「2、今大会の優勝者とカードバトルし、勝った者が先着で一名、日本代表に選ばれる。」


それを聞いた、何百名ものカードバトラー達は、ざわめき立つ。


「この1と2、どちらにでるか選んでほしい・・・ちなみに、今大会の優勝者は・・・・」


みかんは、闘技場の外に、人差し指を向ける。

そこにいたのは、空のよく知る人物であった。


「ふふふっ・・・僕が、今大会の優勝者、伊集院 一郎だ。僕に挑戦するのはやめたほうがいい・・どうせ勝てないのだから」


一郎は闘技場に上あがり、スカした感じで言った。


「おい・・・アレ、関東チャンピオンの・・・伊集院 一郎じゃないか?」

「マジかよ・・・そんな奴に勝てるわけねぇーよ」

「や・・やべぇーな・・・おい・・・・俺、敗者復活戦トーナメントのほうに、でようかな・・」


一郎の素性を知り、皆、選択肢2のほうではなく、1の敗者復活戦トーナメントの方を希望するものが、ダントツで多くなった。


「し・・師匠・・・い・・伊集院くんですね・・・」

「ああ、ひさしびりだな・・・あいつ。ずっとバトル堂に来てなかったから、心配したぞ。じゃあオレは、あいつとやるよ。あの時のバトル楽しかったしな」


その言葉を聞きみかんは。


「じゃああたしは、トーナメントのほうに出るわ。これで空と一緒に、ワールドカップにでられるわね」

「ああ」

「いや・・・・そんな簡単には・・・・・・・・・・いえ、なんでもないです」


モンスタートランプにおける、2人の自信満々な態度を、変えるのは無理だと判断し、真琴は口をつぐんだ。

ポジティブさ、それが彼らの強さの原動力だと、真琴は知っていたから。

闘技場のマリアは、さらにマイクで、敗者復活戦について話し始める。


「1度どちらかに決めた場合、変えることはできないので、よく考え決めてほしい。では、チャンピオンへ挑戦したい者は、この闘技場の上にあがってくれ。あがった者のなかから、今大会上位入賞者から優先して、カードバトルを行うことができる。同じ順位の場合ランダムで選ばれる」

「それじゃあ1回戦負けした師匠が、挑戦しようとしても、結構、あとのほうになっちゃうかもしれませんね」

「まあ、伊集院だし、そう簡単には負けないさ」

「そうですね・・・いちおう、関東チャンピオンですから」

「待てよ」

「!」


1人の少年が闘技場の上にあがってくる。


「俺がソイツとやる」

「アレは・・大地君!どうしてあそこに・・・彼はもう、日本代表に選ばれたんじゃ・・」


マリアは大地に尋ねた。


「キミはたしか・・山田 大地といったな?キミはもう、準優勝して、日本代表に選ばれている。敗者復活戦にでる必要はない」

「オレがコイツを倒して、代わりに、敗者復活の優勝者として、挑戦を受ける」

「!・・・大地君・・一体、何を考えて・・・・・・」


マリアはやれやれと言う顔で、伊集院に尋ねる。


「どうする・・・現チャンピオン、私はどうでもいいのだが、キミたち当事者同士で決めてくれ」

「かまわないですよ、僕は。僕にとってこの大会は、本当につまらないものでしたから・・・準決勝も決勝も・・」


回想


準決勝。


「うちはこの試合辞退します」

「!」

「うちは元々・・お情けでここにいる身どす・・・・代表に選ばれた以上、これ以上勝ち進むのは、無粋ってもんやろう・・・」


決勝戦。


「・・・・・・・・・・・アレ?・・・いない」

『おーっと、山田選手いきなりどこかへいってしまったーーーー!よって優勝は伊集院 一郎選手だあああああ』


回想終了


「まったく・・・僕に負けるのを恐れて、君もあの佐衛門とかいう者も、逃げかえってしまって・・・まったく、この大会は僕以外クズばかりだ」

「い・・伊集院くん・・ま・・・またあんなこと言って・・」

「あははっかわらないなーあいつも」


一郎は、ビシッと大地に指さした。


「それをなんだい君は・・・いまさらのこのこ出てきて・・・この僕に勝てるつもりなのかい・・・・不届きもめ・・」

「じゃあ俺とカードバトルしな、俺がテメェーをジュリンして、その減らず口を2度と聞けなくしてやるよ」

「ふぅー・・かまわないよ・・・戦ってあげるよ。このまま、不戦勝で優勝したチャンピオンとか、陰口を叩かれて、伊集院家にドロを塗る訳にはいかないからね。ここで君を負かして、君の汚名を挽回させてあげるよ」

「ぎゃははははははっ・・いいぜ、楽しませくれよな。俺は、自分を強いと思っている奴をジュリンするのが大好きなんだよ」

「口だけは達者だな。みんなも見ておきたまえ、この僕の実力を、そして悟りたまえ、この僕にカードバトルを挑戦する無意味さを。君はある意味、ここにいる負け犬どもの救世主かもね」

「あ?」

「僕の実力も知らず挑んでくる者がいたら、かわいそうだからね。ここで君を徹底的に打ちのめして、僕との実力と才能の差を、皆に見せつけてあげよう」

「くくくっ・・・テメェー・・・随分、ジュリンしがいのありそうな奴だな・・・楽しみだぜ」


大地は一郎を、舐めまわすように見た。

それはまるで獲物の味をたしかめるように、その視線を一郎は嫌った。


「・・・なんだいその目は・・・不細工な・・・人を睨みつけるように見て・・・勘にさわる。君みたいな勘違い野郎には、教えてあげるよ。カードバトルの恐怖をね・・・2度とモンスタートランプができなるくらい、徹底的にね・・」

「おもしれェー・・早くジュリンしたくて、たまらねェぜ」


ギロ。


「!」


大地は、闘技場の外の空を、一瞬睨みつけた。


「本番の前のウォーミングアップだ・・・楽しませもらうぜ、ハエがァ」

「師匠・・・・・大地君はきっと・・・・」

「ああ・・・大地が、ここでオレとカードバトルを望むなら、やってやるさ・・・全力で・・・・・」


二ッ。


「楽しくな」

「師匠・・・・・・」


関東最強と戦うというのに、大地の意識はいま空にだけ集中していた。

自分の力を、その者に誇示したいかのように。


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