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モントラ  作者: ゆう
1章
15/49

VSライバル①


「空くんが・・・・勝ちましたね・・・でも・・なんだか喜べませんね・・・」


真琴の言葉にみかんは。


「まあ・・よろこぶのは、決勝にいってからでも・・いいんじゃない・・?」


そのみかんの言葉を、マリアが否定する。


「それはぁ、ないとぁ思いますけどねぇ・・・」

「は?」


敗北した佐衛門は、ガックリとうなだれていた。


「・・・・・・・・うちの負けやな・・・最後にしては・・・・最高にたのしかったどすな・・・もう悔いはあらへん・・・」

「兄ちゃーーん」

「兄貴」

「お兄様―」


うなだれる佐衛門の側に、兄弟が集まってくる。


「ごめんな・・・うち負けちゃった」

「謝んなよ!謝んのはオレたちの方だよ、もっと応援できなくて、ごめーーーん」

「兄貴がんばったよ、最高のカードバトルだったよ」

「えーーーんお兄様――!」


お互いがお互いを慰め合うなか、空は兄弟達に近づいていった。


「いや、オレの負けだ」

「!・・・あんた・・一体、何を言うてはるんや・・?」


佐衛門は、空のその言葉に動揺する。

空はいきなりお腹をおさえ、闘技場の外の真琴達に話しかける。

「いててっ・・実はオレさ、さっきコーラ飲みすぎたみたいで、お腹壊したみてぇーだ・・今日、これ以上カードバトルするのは無理そうだ・・・だからこの勝利、辞退するよ。佐衛門、次の試合オレの代わりにがんばってくれよな」


「え?・・・ええ・・わ・・わかりました・・・」

「じゃあ」


いきなりの展開に佐衛門は、まるで夢でも見ているかのように、その場で呆けていた。


「し・・師匠!」

「空!あんたどういうつもり!」


真琴とみかんが空に詰め寄る。

空の行動に、2人が難色を示すなか、マリアはその行動を受け入れた。


「はぁーい、わかりましたぁ・・大会本部の会長にぃ、わたしからぁ、辞退をぉ連絡しておきますねぇ」

「ああ、ありがとうマリア。頼む」

「いえいえぇ」

「ちょっとマリア!あんた・・よけいなことを・・・!」


マリアはみかんの唇にぴっと、自分の人差し指を当てる。


「決めるのはぁ空くんですよぉ・・わたしたちはぁそれがぁどうあれぇ、受け入れましょうよぉ、それがぁ友達ってぇもんじゃないですかぁ?」

「・・・・・ちっ・・・・わーったわよ」


みかんは舌打ちしながらも納得した。


「でもボク・・・正直な話し・・・師匠がこうして負けてくれたことが嬉しいです・・・師匠らしいというか・・・・これが師匠って感じで・・・」


真琴はどこか複雑そうな笑みで笑う。


「・・・・そうね・・・・・・理解できないけど、空らしい・・・・それで理解できちゃうんだから、仕方ないわよね」

「わたしはぁこうなることはぁ、はじめからぁわかってましたよぉ」


空は佐衛門に声をかけた。


「じゃあ、オレ、トイレにこもるわ。オレのかわりに、日本代表になってくれよな、頼むぜ佐衛門」

「え・・ええ・・・や・・約束します・・・」


空はトイレとは、逆方向に走っていった。

その姿を佐衛門は、まだ呆けながら見つめていた。

佐衛門のまわりを兄弟たちが囲む。


「やったぜ、兄ちゃん、ラッキーだな」

「兄貴、次もがんばれよ」

「お・・お兄様よかったですねー」

「・・・み・・みんな・・・うち勝ったどす・・・まあ、負けたんやけど」


そんな複雑な顔の兄に、着物を着た妹が、何か言いたそうにモジモジしていた。


「お・・お兄様・・・」

「なんや・・佐姫?」

「あの・・・・さっきの空さんってお人・・・もしかしたら、ロビーでのわたくしたちの話し、聞いていたかもしれませんよ」

「え?」


佐衛門はそのとき、空がとったすべての行動の、疑問が解けた。

そしてスッキリした顔で笑う。


「そうどうすか・・・・そういうことどすか・・・なんや、まったく・・・・空はん・・ありがとう・・・うち、あんたの気持ち、絶対無駄にはしまへんよ。あんたのかわりに、うち、かならず日本代表になりますさかい」

「お・・お兄様・・な・・なんか顔赤い・・」

「うち・・・・・・もしかしたら、空はんに、ホレてしまったかもしれへん」

『ええええええええええ!』


兄弟たちの悲鳴が響く。


「に・・兄ちゃん・・兄ちゃんがそれを言うと、シャレになってねーからよ」

「うちは、本気どす」

「ま・・マジ・・・・」


弟はものすごく引いた顔をしていた。

そんな弟に、佐衛門は舌をペロっと出し言った。


「冗談どす。勘忍な」




空たちはロビーにいた。


「んじゃ、負けたことだし、帰るか」

「まったく・・あんたは・・トイレはどうしたの?」

「ああ・・治った」

「・・・・あっそ」


その空の言葉に、みかんはあきれ果てていた。


「あの・・・師匠が飲んだのって、コーラじゃなくてポカリですよね?」

「ああ・・そうだっけ?」

「そうですよ、もう・・・」


そう言いながらも真琴は、どこか嬉しそうだった。


「よかったんですかぁこれでぇ空さん?」

「ああ完璧にな」

「よくないわよ!どこも・・ったく・・あんた、一体何考えてるのよ・・・約束があるんでしょ?絶対守らなきゃいけない約束が・・」

「ああ」

「だったら・・・」

「たしかに約束は、決勝であいつ戦うことだ・・・でも、俺は、約束を守りたいがためだけに、決勝にいくわけじゃない」

「・・・他に、何があるっていうの?」

「決勝であいつに、オレのモンスタートランプへの想いを、すべてぶつけることだ」

「ぶつける・・・・だったらなんで負けてあげたの・・・?」

「負けてあげたんじゃない・・・負けなきゃいけなかったんだ・・・・」

「?」

「大地が、オレに対して1番怒っていることは、オレがモンスタートランプを捨てたと思っていることだ。だからオレはあいつに、想いをぶつける。モンスタートランプのへの俺の想いを。だけどオレが、佐衛門からモンスタートランプを奪ったら、きっとあいつに、この想いを100パーセントぶつけるのは無理だ。きっと中途半端な気持ちで、戦わないといけない。それじゃあダメだ、あいつに伝わらないし、あいつとのカードバトルも楽しくできない。それじゃあ意味がないんだ。オレはあいつと・・・すべてをだしつくして、全力でぶつかりあいたい。それがオレにできる、あいつへの、唯一の罪滅ぼしなんだ」

「それでも・・・・大地君との約束を、破ってしまうことになるんですよ?・・・きっと、また大地君は師匠を恨むんじゃ・・・」

「かもな・・でも、約束ならまたいつでも守れるさ。オレたちの夢は、まだまだこれから、果てしなく遠いんだから・・・・」

「そ・・空くん」


みかんはその言葉に、ため息を吐いて。


「・・・・・ったく、男って・・・ホント、バカね」

「それはぁ同意ですぅ」

「奇遇ね・・マリア、あんたと気が合うなんて」

「まあぁ・・嫌いじゃぁないですけどねぇ、そういうのぉ」

「そうね・・・ったく・・」


「師匠はいいことしましたよ。佐衛門さんの兄弟も喜んでいましたし・・・」

「そうか?礼を言いたいのはオレのほうだよ・・・さっきのカードバトル・・メチャクチャ楽しかったしな」


空は屈託ない笑顔で笑う。


(・・・師匠・・・よかった・・・約束を守れなかったこと、全然落ちこんでない・・・・・・・でも・・・・ちょっとくらい落ちこんだほうが、いい気もしますけどね・・・・あははっ)

「じゃみんな帰ろうぜ。今日は、何かおごるよ」

「・・あんた、お金あるの?」

「ない!だからカードバトルで払うよ、うちで朝まで・・」

「はい、師匠、お付きあいします」

「はぁ・・・あたしも付きあうわよ・・・あんたを大会で倒せないなら・・・あたしもこれ以上、この大会に出る意味ないし」

「いいのか、みかん?」

「ええ、というかもう、辞退の申し込みはしてきたしね。そろそろ受理されるじゃない?それに・・・あんたの家でカードバトルしていたほうが、よっぽど楽しそうだしね」


みかんは苦笑いする


「そっか・・・じゃあ今日は、みんなで、祝勝会・・・ならぬ祝敗会だ!」

「はい」

「くすつ・・何よそれ?」

「あのぅ」

「ん?」


マリアが、そのいい雰囲気に、水をさすようなことを言った。


「敗者復活戦にはぁ、出ないですかぁ?」

『え?』


皆、一斉にマリアの方を見る。


「あ・・あるんですかマリアさん?・・・敗者復活戦・・・」

「極秘ですけどぉ、ありますよぅ」

「ご・・・極秘・・」


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