VS関西チャンピオン①
パンパンパン。
ここ、東京バトルドームの上空を、乾いた花火の音が鳴り響く。
今日、モンスタートランプ・ワールドカップカップ大会、日本代表決定戦が、この場所で開かれる。
各地から強豪のモンスターバトラーたちが集まってきていた。
「はあはあはあ・・・やっと・・・ついた」
そんななか、みかんは、汗びっしょりの顔で、東京バトルドームの前にいた。
そのすぐ横には、空と真琴もいた。
空は、東京バトルドームを見上げ、歓喜の声をあげる。
「ここが、東京バトルドームか・・・普通のバトルドームより3倍くらいデカイな」
みかん以上に汗びっしょりの真琴が、息絶え絶えで、声を振り絞る。
「ゼェーゼェーうぷっ・・・・そ・・総工費2000円億以上・・に・・日本・・最大のバトルドームです・・うぷっ」
いまにも吐いてしまいそうな勢いだ。
「ゼェーゼェー・・師匠・・みかんさん・・・は・・・はやく受付にいきましょう・・・このままじゃ、出場登録をできず、大会に出られませんよ・・・うぷっ」
「そりゃ大変だ。急ごうぜ」
「あ・・・あんたのせいで、こうなったんでしょ、ハァハァそらぁ・・・それにあんた・・・・なんで汗1つ掻いてないの?あんなに走ったのに・・・・・」
「まあ、これくらい修行に比べればな」
空は笑って答える。
他の2人は空に比べ、汗だくでへばっていた。
「そ・・それは空くんは、世界トップクラスの格闘家ですから・・・ゼェーゼェーこれくらい余裕ですよ・・・うぷっ」
「大丈夫か真琴?」
空から質問に、真琴はグッと親指を立てて答える。
「ぼ・・・ボクも余裕です・・・・うぷっ」
「ハァハァ・・余裕でわかるから・・・その強がり・・・・」
東京バトルドームの受付に、3人は向かった。
3人は登録を終え、ロビーのベンチに座っていた。
「ったく、空・・あんたが、待ち合わせの場所に遅刻するから、走ってここまで来るハメになったじゃない、反省しなさいよ」
みかんは空の隣で、愚痴をこぼす。
「ああ、すまんみかん」
「いいじゃないですか、みかんさん、間にあったんだし」
「あんたはトイレに、間にあわなかったけどね」
「ううっ・・そ・・それをいわないでください・・・ううっ」
「ホント・・・あと少し遅れていたら、あたしたちの汗と努力が、無駄になっていたところだわ」
「たしかに走って、汗かいたしな」
「違うわよ!モンスタートランプを、泊まり込みで特訓したことよ!あれだけがんばったじゃない」
「がんばるって何がだ?オレは何もがんばってないぞ、4人で毎日やれて、メチャクチャたのしかったけどな」
「・・・・・・・あんたはそういう奴よね」
空はモンスタートランプにおいて、努力を努力とも思わない人間だ。
そんな空に、みかんはあきれるが、どこか微笑ましさも感じていた。
「でも、開会式はでられませんでしたね」
「まあ仕方ないさ」
「遅刻したあんたが言うな!」
「みかんさんも30分遅刻しましたけどね」
「うっ・・うっさい!」
「みなさぁ~~ん」
「!」
ベンチに座る3人に、海原マリアが、手を振って近づいてきた。
「みなさぁん、おそくなりまたねぇ・・どうしたんですかぁ?」
その言葉にみかんは、そっぽ向きながら答える。
「空が遅刻したのよ」
「すまんすまん。大会がたのしみすぎて、夜、寝むれなくってさ・・・寝れないから、このまま寝ないでいいやって思い、大会にでるためのデッキを、朝までずっと考えていたんだ。そしたらいつのまにか寝てて、起きたら2人の顔が目の前に・・・助かったよ、起こしに来てくれて」
「ったく・・いい迷惑よ、こっちは」
「ホントすまん」
「こんどパフェでも、おごりなさいよ」
「いや無理、金ないし、カードバトルなら、いつでもおごるぜ」
「・・・意味わかんないし、まあ、あんたらしいけどね。もらえるものなら、なんでも貰ってあげるわ」
みかんは少し照れながらそう言った。
「それにしても、この大会・・・・一体どんな大会なんだ?」
「あ・・あんた・・そんなこと知らないで、この大会に参加したの?」
「ああ、まずは決勝で、大地と戦わなくちゃな」
「大地って・・・・たしか、あんたのひねくれちゃった、幼なじみでしょ?誤解なんでしょ、だったらわざわざ決勝でまでいかなくても、直接、口で話して、誤解を解けばいいんじゃない?」
「ダメですよみかんさん」
「はぁ?何でよ」
みかんには理解できないようなので。真琴はにわかるように説明した。
「師匠と大地君は、モンスタートランプの絆によって、結ばれているんです。だから、また、友情を結ぶなら、それはモンスタートランプじゃないといけないです。口で言ったからといって、解決できるような問題じゃないんです。解決できるのはカードバトルの中だけなんです」
「?・・・・ますます意味わかんないし」。
そんなみかんにマリアは、挑発するように言った。
「みかんさんはぁ、名前だけじゃなく、頭もみかん畑でぇできていますからぁ、男の友情というものがぁ理解できなんですよぉー」
そのマリアの言葉と口調に、イラっときて、みかんは、マリアの目の前まで詰め寄る。
「あんた・・前から思ってたんだけど・・・・いちいちあたし突っかかるわよね・・・
文句あるなら言いなさい。このあたしに」
挑発を挑発で返すみかんに、マリアはさらに挑発で返す。
「ありませんよぉ・・みかんさんになんてぇ、でもわたしぃオレンジ嫌いなんですよねぇ・・・すっぱいしぃ」
「あそっ、ケンカね?OKオケェー・・・リアルでもカードでも、どっちでも好きなほうを選びなさい。あたしはカードもリアルファイトも強いわよ。護身術なら5歳の時から空に教えてもらってたしね。大人2、3人なら、ちょちょいのちょいよ」
「あの頃がなつかしいな・・・みかん」
「あんたはあたしのこと、教えるまで、全然覚えてなかったけどね」
「仕方ないだろ、アイドルの時のおまえと、今のおまえじゃ違いすぎるぞ」
「ふんだ、好きであんなキャラやってるわけじゃないわよ!母さんに頼まれて、仕方なくやってるだけなんだからね」
「・・・そっか、おまえの夢は、お母さんの夢を、叶えてあげることだったな」
「そうよ、だから仕方なく、やりたくないアイドルなんて、やってあげてるのよ」
「みかんはやさしいな」
なでなで。
「!」
みかんは空に頭を撫でられる。
『ちょっ・・・空!いいかげんにしてよね!昔みたいに気やすく、頭を撫でまわさないでよね!いい年して・・・』
っと、みかんは、心の中で思った。
「・・・・・・・」
実際は無言で、顔を真っ赤にしながら、頭を撫でられていた。
撫でられている途中にマリアは、みかんに横槍を入れる。
「まぁ所詮はぁアイドルなんてぇ・・若い時しかできませんからねぇ・・・年とって、人気なんてぇすぐ、なくなっちゃいますよぉ」
「・・・・あんた・・・・・いちいちトゲがあるわね」
「綺麗なバラにはぁトゲがあるぅんですよぉ・・・まぁ、丸いみかんさんには、わかりませんよねぉ・・・・・」
「あんだと!」
2人は、いまにも、ケンカしそうな勢いだ
真琴はそれを止めるため、2人の間に割って入る。
「ちょっと、いいかげんしてくださいよ2人とも、さっきから、ケンカしないでください。今日がどんな日か、わかっているんですか?・・・・・まったく・・・・・師匠もお願いします。止めてくださいよ」
「いや、いいじゃないか、ケンカするほど仲がいいって言うだろ?ライバル同士、ケンカすることも大事だよ。ケンカして、はじめてわかりあえることだってあるさ」
「・・・・・そうですね」
(師匠と大地君も・・きっと・・・)
ロビーにアナウンスが流れる。
『愛媛 みかん選手、NO8の闘技場までお越しください』
「あ!・・あたしの試合ね、じゃあ空、行ってくるわね、一回戦」
「ああ、がんばれよみかん」
「あんたもね、空。決勝もいいけど、あたしと当たる前に、負けるんじゃないわよ」
「ああ、おまえも」
「当然よ!全力、全開、フルアクセルでぶっ飛ばしてくるわよ!」
みかんはロビーからドーム内に入り、対戦場へ向かう。
「がんばれよ、みかん」
その後ろ姿を空が見送った。
「・・・そういえば・・・真琴とマリアは、試合にでなくていいのか?」
その質問に対してマリアは、気の抜けた声で答える。
「はぁーい、わたしはぁこの大会でぇ、ちょっとぉ用事がありますのでぇ、でれませぇん。ざんねん」
「用事ってなんだ?」
「この東京バトルドームでぇちょっとぉ・・・・内容は秘密ですぅ。答えはCMのあとでぇ、なんちゃってぇ」
「じゃあ真琴は?」
「え・・・ボクですか・・・え・・・えっと・・・・」
真琴は顔を赤らめ、モジモジしていた。
どこか言いづらそうな雰囲気だ。
「言いづらいなら、言わなくていいぞ」
空の言葉に真琴は、手を振り反射的に否定する
「い・・いえ、い・・・言います。そ・・その・・・なさけない話しなんですが、この大会に出るには、僕の実力じゃ全然不足してるんです。ですから今回は、空くんの応援に集中したいと思います」
「出場して挑戦することに、意義はあると思うぜ」
「そ・・そうなんですけど、この大会はちょっと特殊で・・・この大会名はモンスタートランプ・世界ワールドカップ大会。日本代表決定戦・・・というのですが」
「へーそういう大会名だったのか・・・長いな・・・で、日本代表を選んでどうするんだ?」
「えっと・・・世界の国々の代表メンバーと戦うんです。だからそんな大きな大会に万が一ボクなんかが勝ち残って、出ちゃったりしたら、ワールドカップで、みんなの足でまといなることは確実です。だから、自分に日本代表になれる実力がついたと思える時まで、でないことにしました」
「そっか、それじゃあ仕方ない・・・真琴はあんま強くないもんな」
「はうっ!・・・ひ・・ひどい・・せ・・・せめて、いつか強くなれるってフォローしてくれても・・・・・」
ショボーンとする真琴に、空は慰めの言葉をかける。
「じゃあ、いつか強くなれろと思うぜ。たぶん」
「お・・遅いです!・・・しかも、なんか投げやりですし・・・・」
「真琴は、デッキを作るのはうまいじゃないか」
「え?あ・・ありがとうございます」
「オレのデッキも結構、真琴のアドバイスでパワーアップしてるんだぜ」
「そ・・そうなんですか・・う・・嬉しいです。ボクは最近、デッキの勉強もよくしてるんです。カードの腕だけが、強さじゃありませんから・・・・自分の性格にあったデッキを作るのも、強さの一つですよね」
「そうだな、頼りのしてるぜ、真琴」
「えへへ・・はい」
真琴は空に褒められ、本当に嬉しそうだ。
「で、ワールドカップだっけ?それって具体的どんな大会なんだ?」
「師匠・・・ホントに、この大会について、まったく何も知らないですね・・・2年前からテレビで、世界放送があるくらい、大人気の番組なのに・・・」
「そうかな・・あははっ」
空はその言葉に少し照れる。
(褒めてませんけど・・・・でもなんとなく、空くんにとっては、褒め言葉になるような気がします・・・・)
「はっ!」
(そうか・・・・)
真琴は気あることに気づく。
それは空が、3年間モンスタートランプを、やめさせられていたこと。
「すいません師匠・・・師匠は3年間・・・」
「いいって、そんなこと・・・気にしなくて。そのおかげで真琴に出会えたんだから」
「師匠・・・あ・・ありがとうございます」
真琴は、心から思う、師匠に会えてよかったと。
次回予告 VS関西チャンピオン②
VS関西チャンピオン③
VSライバル①