VS暴走族ファイナルヘヴン②
「オレがあんたたちが探している、銀髪の女だ」
「はぁ?・・・・・・・・いや、全然ちげェーだろ!男だし、テメェー」
「えーーっと・・・ああ、そうだ!あのときオレ、女装してたんだ。だからオレがあんた達の探している銀髪の女だ。そういうことだから、真琴を離してくれないか、オレの大切な友達なんだ」
真琴は自分を助けるために、空が来てくれたことに、涙がでるほど感動した。
だが、さすがにそのいい訳は、どうかと思う。
「そ・・空くん逃げて・・・」
「だまれェ!」
「ぎゃあああああ」
また回される。
リーゼントの男は、空の顔をまじまじ見つめる。
「そうかい・・・まあいい、騙されてやるよ。こっちは、公衆の面前で恥かかされた、けじめさえつけられれば、それでいいんだからな」
(て・・・適当すぎるよ・・カントリーマァム)
ボスであるリーゼントの男が、指でちょいちょいっと、後ろの仲間を呼ぶ。
その中から一人、朝、銀髪の少女に蹴られた男が、こちらに近づいてくる。
リーゼントの男は、その男に命令する。
「やれヤス」
「はいボス」
男は、空の目の前までくると、手をポキポキさせ、いまにも殴らんとする勢いで睨みつける。
「動くなよ、うらっ!こいつを返してほしければなあ・・・大人しくボコられな!」
拳を振り上げ空に殴りかかる。
トン。
「げっ」
空はその攻撃を軽くかわし、後ろに回り込み、首元に一撃をいれ、男を気絶させる。
ドサッ。
「!」
その動きはあまりにも早く、常人であるその場のすべての者には、いきなり男が倒れてようにしか見えなかっただろう。
「・・・・・なんだ・・?」
ボスを含め、暴走族カントリーマァム全体に、動揺が走る。
空はその全員に告げる。
「ごめん・・・素人に手をあげるのは、イヤなんだけど・・・手加減するから、痛くはしないよ」
ひゅん。
言い終わると同時に、空の体が消えた。
そして同時に、暴走族のメンバーが、バタバタとと倒れていく、残りはボスとあと1名。
「なっ・・なんじゃこりゃーーーー!」
その光景にボスが叫ぶ。
その手に持っていたはずの真琴も、いなくなって、いつのまにか空に、抱き抱えられていた。
「大丈夫か?真琴」
「は・・・はい」
助けられた真琴も、その場にいる全員も、何が起き、何でこの状況になったのか、理解できる者はいなかった
空は真琴を降ろし、ボスと向き合う。
「どうする?まだやるか」
その言葉にボスは、狼狽してよろめく。
「い・・・一体、何をした・・・テメェーがすべてヤッたのか?」
「大丈夫、手加減はした。2、3日で目を覚ますよ」
「て・・テメェーー・・な・・・何者だ」
「大空 空」
「!」
その名前を聞いてボスは青ざめる。
「ま・・まさか、て・・テメェー・・・あの世界最強の格闘家・・・大空 太陽の息子か?」
「ああ、オヤジのことを知っているのか?」
「マジもんかよ!」
(そ・・空くんが・・あ・・・あの大空 太陽の・・・・)
残った暴走族のメンバーが、ボスに泣きつく。
「ひぃぃぃ・・ボス・・こんな化け物みたいな奴に、勝てるわけないですよ・・・いまの動きみたでしょ?いや見えませんでしたけど・・・逃げましょうよ・・ねぇ?」
「バカヤロー―!」
バキ。
「うぎゃっ!」
ボスはその者を殴り飛ばす
「ば・・・バカ野郎ォォ・・せ・・・世界最強の男の息子くらいで、ビビってんじゃねェー!お・・オレは、オレ達は関東最強のカントリーマァムだぞ、逃げるわけにはいかねェーんだよ!」
そう言ってボスは、空と相対する。
ジリっと、距離をつめ、いつでも攻撃できる体勢をたもつ。
空はそんな男の意気込みを買い、軽く攻撃姿勢に移る。
「ふむっ・・その意気はよし!大丈夫、手加減はするから、1週間くらいで目を覚ますよ」
「ひっ」
その言葉を聞いてボスは、さきほどの意気込みは嘘のように消え、体をガクガクと震わせ、全力で体を反転し逃げだした。
「お・・覚えていろーーーー!」
最後に捨て台詞を残して去って行った。
真琴はその後ろ姿を見ながら空に尋ねる。
「なんで・・・ああいう人達の捨て台詞って・・・ああもワンパターンなんでしょう?」
「意外と難しい質問だな」
「ですね・・・・・・・・・・・・・それにしても師匠・・・・師匠があの世界最強の格闘家、大空 太陽さんの息子さんだったなんて・・・」
真琴は空の父親について、ある疑問を聞いてみた。
「あの・・・そういえばなんで空くんのお父さんは・・・・空くんからモンスタートランプをやめさせたんでしょう?」
その質問に対し空は、少し言いづらそうに答える、
「・・・・・オレのオヤジは格闘家でさ・・・それをオレに継がせたかったらしくて・・・」
「それで!・・・空くんに、カードゲームをやめて、格闘家になれって言ったんですね?」
「ああ・・・・それでやめさせられて、家族全員で海外に武者修行の旅」
「ムチャクチャですねソレ、空くんがかわいそうです」
「まあ・・でも、オレは、オヤジのことを恨んでないけどな」
「でも、いくらなんでもひどいです。親だからって横暴だと思います。恨みごと1つくらい言ってもいいと思います」
「・・・・・・・なんで、オレの名が、空かって母さんに聞いたことがあるんだ。そしたらオヤジが考えたって、教えてくれたんだ。太陽である自分を、飲み込むくらい大きな存在になれって・・・それで空って名づけたらしい。オヤジはオレに格闘家の自分を超えてほしかったんだ」
「・・・・・・・・・・・」
「それを聞かされたら、なんとなく恨めないよなーオレは将来、宇宙最強のモンスターバトラーになるって夢をもったせいで、オヤジの期待を裏切っちまってたんだし」
「でも・・・それでも、親が勝手に子供に期待して、将来を決めるのは、よくないと思います。それが子供ためだと思ってしていることだとしても・・・」
「そうだな、それはオヤジもわかってた・・・それでもあえてオレに格闘家としての道を押し付けたんだ。オヤジはオヤジで辛かったと思うぜ」
「・・・・・・・・・そういえば空くん・・・ならどうしてまた、モンスタートランプを始められたんですか・・・・やめさせられていたんですよね?」
「・・・・・オヤジがオレに言ったんだ」
『ワシも母さんも、カードゲームはまったくさっぱりじゃ。やってみたが、やり方も楽しみ方も全然わからん。おまえと違ってワシらには、カードゲームの才能はないようじゃ。だから親として、子供の将来のため・・・カードゲームなんてやらせていいのかわからん。できればワシらと同じ、格闘家の道に進んでほしいと思う・・・・が、子供には子供の道を進んでほしいという気持ちもある。だがらまずワシを倒してみせろ、空!おまえのカードゲームへの想い、ワシにぶつけてみせろ!そしてワシに打ち勝て!そしたらまた、日本に帰ってカードゲームを続けていい』
『ホントかオヤジ!』
『男に二言はない!ワシに勝てばおまえは自由じゃ、おまえの好きな道を行け。もうワシはなにも言わん。いや、むしろおまえを全力で応援する。空、ワシを超えてみせろ』
『おう!』
「なっいいオヤジだろ?」
「い・・いや・・た・・たしかに、有無をいわさず格闘家にするよりはマシですけど・・・条件が、子供が親に勝てって・・・・ちょっと大人げがなさすぎですよ・・・・・・・・・・ん?・・でも、いま、師匠がモンスタートランプを、続けられているってことは・・・・・」
「ああ倒した」
「師匠すげェーー!!・・・・ってことは、師匠が世界一の格闘家ってことですか?」
その質問に対し、空はすこし考えて答える。
「それはどうかな・・・いま思い返してみると、やっぱりあのときのオヤジは、全然本気をだしていなかった気がする」
「ど・・どうしてですか・・・?」
「わからん・・まぁ・・いつか、本気のオヤジに勝って、それを聞き出すさ。それもまた、オレの目標の一つだな・・」
そう言い、空は二カッと笑う
「でも師匠・・なんでそんなに強いのに、格闘家にならないんですか?嫌いじゃないんですよね?格闘技・・・・」
「ああ・・好きだな」
「じゃあモンスタートランプと、格闘家の両方で、最強を目指せばいいじゃないんですか?」
「・・・・・・もし、最強を決めるモンスタートランプの大会と、格闘技の大会が同じ日に開かれたとする・・・その場合オレは、どっちにでると思う?」
「そ・・それは・・当然、モンスタートランプの大会ですよね?」
「ああ、そうだ・・・オレは迷わずモンスタートランプの大会にでる・・・そういうことだ・・・・真琴」
「?」
その言葉の意味を真琴は探る。
「・・・・・・・・・どちらかが中途半端になるくらいなら、最初から片方に集中したほうがいいってことですか?」
「ああ、そんなところだ、目指すならどっちかだ。そうじゃないと、真剣に格闘技を極めようとする者に失礼だ。それに格闘技はいまいち本気になれしな」
「なんでですか?」
「宇宙最強になれないから」
「ま・・またそれですか・・・」
「だって宇宙人だぜ、相手は、手からビームをだしたり、星をぶっ壊したり、100メートルを超える巨人とかいるかもしれない。さすがにそんな奴相手に、オレも勝てないしな」
「し・・師匠らしい考え方ですね・・・」
空は手を空に伸ばす。
それはまるで、宇宙に届きそうなくらいに感じた。
「でもモンスタートランプは違う、体格 人種 国 星すべて関係ない。デッキ1つでどんな奴にも勝てるんだ。どんな奴でも宇宙最強になれるんだ。こんなにワクワクすることはないだろ」
その子供のような笑顔に、真琴はなんだか、微笑ましい気持ちになる。
「・・・・そうですね・・・・ボクもそう思います」
「!」
そのとき2人は背後から、憤怒のオーラを感じた。
2人は振り向くと、そこいたのは、担任の有坂 凛だった。
「ほう・・・宇宙最強か・・・・おもしろい夢だな」
「あ・・有坂先生!ど・・・どうしてここに?ボクたちに何か用ですか?」
真琴は恐る恐る聞いた。
有坂 凛は、怒りで表情をピクピクさせながら答える。
「宇宙最強になるのはいいが・・・そのまえに・・・・・・空!テメェー!バカヤローーーー!コレは何だアアアアアアアア!」
有坂 凛は空の目の前に、5枚の紙を突きだす。
真琴がそれを見る。
「こ・・これは!」
「今日のテスト、5枚とも白紙じゃないか、バカヤロー――!」
(は・・はじめて見た0点のテスト用紙・・しかも5枚・・・)
空は笑いながら答える、
「ああ・・すいません。どんなデッキにしようかと考えていたら、いつのまにかテスト終わってて、すいません」
「テメェェェ・・ソラぁ・・バカヤロォォー・・・」
凛は、ぶるぶると体を震わせ、怒り狂っていた。
その様子はまるで、いまにも爆発する火山のようだった。
そんな凛の怒りを鎮めようと、空はよけいな一言を言ってしまう。
「でも安心してください先生。オレ、モンスタートランプで宇宙最強になりますから、テストなんてできなくても大丈夫です」
ビキッ。
その言葉によって、有坂 凛の怒りは頂点を超え、爆発した。
「テメェーはァァァァァァァァソラァァァァァァァァ!宇宙最強になるまえに、そのカードゲームしかない頭を、どうにかしろバカヤロォォォーーーーーーーーーーー!」
その声は町中に響き渡り、そのことによって、当然、婚期も遅れることになった。
とある車道を、超高級車が走っていた。
その車内には、ぐるぐるメガネの海原 マリアともう一人、黙々と携帯ゲームで遊ぶ少年が乗っていた。
少年はどこか無愛想で、やる気ない感じだ。
少年はマリアに言った。
「よかったね姉さん、姉さんの大事な人が、暴走族の人達に、怪我させられなくて」
「そうですねぇーよかったですねぇー」
そのヘンテコなしゃべり方に、少年は不快感を示す。
「・・・・・キモいよ、姉さん・・・その喋り方・・・そろそろキャラ戻せば」
「フッ・・そうだな」
突然マリアは口調を変えると、メガネを取り、自分本来の性格に戻す。
「弟相手に見せても、意味のないものだからな」
「・・・でもなんで、そんな変なキャラを作ってるの?あの人に正体をバレたくないから?」
「いや、正体も何も、空は私の顔も名前も、最初から知らない」
「?・・・・ならなんで、そんなメガネとキャラを?しかもその人のために姉さんは、転校までしたんだよね?理由を教えてよ、姉さん」
「断る。乙女の秘密だ」
(乙女ってガラかよ・・・)
「それに聞いたら、きっとおまえは笑うだろうからな」
「笑わない笑わない、だから教えてよ姉さん」
「仕方ない・・・」
その理由を、マリアは弟に話した。
「ぷっ」
それを聞いた瞬間、弟はふきだす。
ゴン。
マリアの鉄拳により、弟の頭には、マンガのようなたんこぶができた。
「うごご・・・ご・・・ごめんなさい・・・」
「ふぅ・・・私の正体はともかく、いずれこのキャラはやめるさ、とびっきりの場所でな・・・ふふふっ」
「まったく・・・姉さんは、サプライズ好きだな・・・・」
「ふふっこう見えて私は、日本の会長だからな。エンタ―テイメント・・人々を楽しませるのも仕事のうちだ。今度の大会はかならず盛り上げてみせよう」
「楽しみ?」
「そうだな・・・・だがそれよりも、いまはもっと楽しみなことがある」
「何、ソレ?」
「菜月!」
「はい、お嬢様」
海原 マリアは、運転中の執事、灰色 菜月に声をかける。
「家に帰ったあとすぐ、空の家に行く、運転速くたのむぞ」
「はい、かしこまりました。お嬢様」
マリアを長く綺麗な足を組み、すこしニヤける。
「さて・・今日は、楽しくなりそうだ・・・ふふっ」
次回、VS関西チャンピオン①