09.さよなら
「約束守れなくて…ごめんな…。」
…何を言ってるの京介…。
約束って…何?
「京介…?」
京介は我に返り、瑠美から手を離した。
「いや、何でもない…ごめん…。」
京介は頭を抱えて下を見ていた。
…約束ってなんだろう。聞いてみたいけど…いいのかな…。
「ねぇ、京介、約束って…。」
「何でもないって、今の話忘れて。」
きつい口調だった。…怒らせちゃった…。
「…ごめん…。」
涙を拭きながら京介とは反対方向を向く。
「…きつく言い過ぎた。俺こそごめん…。」
再び静まり返る遊具内。
雨はまだ止まない。
「俺ら…もう会うのやめようぜ…。」
京介が言った。
「…え?」
京介の方を振り返る。
「もともと偶然ここの公園で会っただけの仲だろ?付き合ってるわけでもないし。もういちいち会わなくてもいいんじゃない?」
急に何を言い出すの?
「で…でも…。」
「でも…何?」
またきつい言い方だった。言葉が返せない。
「どうせ学校で会えるだろ?お前もちゃんと学校来いよ。」
言葉が…でてこない。
「じゃあ俺帰るから。お前その学ラン貸してやるから羽織って帰れよ。熱あんだから。」
「え…京介!」
京介は雨の中走っていってしまった。
私は京介の背中をただ見つめる事しかできなかった。
…どうして…?
何でこうなるの?
初めてあったときは確かにただの偶然だったかもしれない。
でも私は京介に会いたくて仕方なかった。
京介だって会いにきてくれてた。
京介は私と会うのが嫌だった?
じゃあ何で私がいると思ってきてくれたの?こんな雨の中…。
確かに付き合ってるわけじゃないよ?私達…。
でも…でも…。
もう…やだ。
私は学ランを握り締めて雨にかき消されると分かっていながら大声で泣いた。
あれから5日がたった。私の熱は充分に下がった。
今日も着ても意味のない制服を着る。どうせ学校にも行ってないのに。
ドアノブに手をかけた時だった。ドアの横にかかってる学ランが視界に入る。
…あれから公園には行ってない。
全部終わったんだ。ううん、何も始まってもなかったんだ。
止めていた手を動かす。
私は今日も、街を彷徨う。