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tears  作者: 榊ゆあ
7/16

07.誰か。

今日は土曜日。

学校もなくて制服も着なくていい楽な日。

でも窓の向こうを覗いてみれば空は暗かった。


これじゃ、星が見れない…。


ふとそう思い、ベッドに腰掛けた。


「京介…会いたいな…。」



…え?今私、なんて言った?

会いたい?京介に?


無意識にその名を口にした自分の顔が熱くなろのが分かった。

ベッドに転がり、布団をかぶる。


「私って…京介の事が好きなの…?」


京介と初めて会ってからそれほど時間もたってない。

そもそも京介とは公園で会って話すだけの仲であって…。


…でも…。


京介と話してると心が楽になってる自分がいて。

京介がそばにいてくれるから笑顔になっる自分がいて。

京介がいるから、私はここにいれるみたいな安心ができて。


京介といると胸が苦しくなる自分がいて…。



「…私、京介が好きなんだぁ…。」



この気持ちはそうなんだ。

私は京介が好き。好きなんだ。

京介の事を思い浮かべてみる。




「今日って、いるかな。」














天気が悪いせいか、子供達の姿が公園にはなかった。


「結局きちゃったなあ…。」


時間は16時。曇りだから暗い。

公園のベンチに腰をかける。

…京介が来るってわけでもないのに…。

京介を待ってる自分がいた。

ボーッと、目に映るもの全てを見渡していた。

すると公園の柵の向こう側にどこかの制服のカップルがいた。

仲がよさそうに手を繋いで歩いている。

笑顔で笑いあっている。見ているだけで幸せそうな2人だった。


「私もあんな風になりたいな…。」


その時だった。頭に激痛が走った。


「!?」


痛い。頭が痛い。何で?

すると頭の中で誰かの顔が浮かんできた。

ぼやけてよく分からない。

でもその人は私に笑顔で笑いかけてくれている。

何かをしゃべっている。何をしゃべっているか分からない。


「あなたは…誰なの?」


問いかけてはみるものの、向こうには伝わっていない。


そして聞こえてなかった言葉が聞こえた。

その誰かが言った。





「俺が絶対、瑠美を守るから。」









我に戻った瑠美は顔をあげた。

さっき変わらず、暗い空が広がっている。


今の…何だったの…?


昔の記憶?私全然知らない。

あれは誰だったの?何をしゃべっていたの?

どうして…私の名前を知ってるの?


分からない。分からない、分からない。

今分かっているのは、自分の頬を流れるのは涙だということ。



その涙を消すかのように、雨が降ってきた。

それは自分の心を表してるようにも見えて。



今の出来事だけじゃない。思い返せば分からない事ばかりだった。

どうして学校に行かなくなった?

何かが足りないから?それは失ったもの?何を?

どうして私は公園にいたの?

どうして私は泣いているの?

考えれば考えるほど自分が分からなくなる。


私は一体、何を忘れているの?


ねぇ、誰か教えてよ。誰か…。











「どうしたの?こんな雨の中で1人。」



うずくまってる私の前に、1人の男が現れた。

彼はそんな私にいつもみたいに優しい言葉をかけてくれた。

私は、彼の言葉を待っていたのかもしれない。


ううん、待ってたんだ。



「…京介。」


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