07.誰か。
今日は土曜日。
学校もなくて制服も着なくていい楽な日。
でも窓の向こうを覗いてみれば空は暗かった。
これじゃ、星が見れない…。
ふとそう思い、ベッドに腰掛けた。
「京介…会いたいな…。」
…え?今私、なんて言った?
会いたい?京介に?
無意識にその名を口にした自分の顔が熱くなろのが分かった。
ベッドに転がり、布団をかぶる。
「私って…京介の事が好きなの…?」
京介と初めて会ってからそれほど時間もたってない。
そもそも京介とは公園で会って話すだけの仲であって…。
…でも…。
京介と話してると心が楽になってる自分がいて。
京介がそばにいてくれるから笑顔になっる自分がいて。
京介がいるから、私はここにいれるみたいな安心ができて。
京介といると胸が苦しくなる自分がいて…。
「…私、京介が好きなんだぁ…。」
この気持ちはそうなんだ。
私は京介が好き。好きなんだ。
京介の事を思い浮かべてみる。
「今日って、いるかな。」
天気が悪いせいか、子供達の姿が公園にはなかった。
「結局きちゃったなあ…。」
時間は16時。曇りだから暗い。
公園のベンチに腰をかける。
…京介が来るってわけでもないのに…。
京介を待ってる自分がいた。
ボーッと、目に映るもの全てを見渡していた。
すると公園の柵の向こう側にどこかの制服のカップルがいた。
仲がよさそうに手を繋いで歩いている。
笑顔で笑いあっている。見ているだけで幸せそうな2人だった。
「私もあんな風になりたいな…。」
その時だった。頭に激痛が走った。
「!?」
痛い。頭が痛い。何で?
すると頭の中で誰かの顔が浮かんできた。
ぼやけてよく分からない。
でもその人は私に笑顔で笑いかけてくれている。
何かをしゃべっている。何をしゃべっているか分からない。
「あなたは…誰なの?」
問いかけてはみるものの、向こうには伝わっていない。
そして聞こえてなかった言葉が聞こえた。
その誰かが言った。
「俺が絶対、瑠美を守るから。」
我に戻った瑠美は顔をあげた。
さっき変わらず、暗い空が広がっている。
今の…何だったの…?
昔の記憶?私全然知らない。
あれは誰だったの?何をしゃべっていたの?
どうして…私の名前を知ってるの?
分からない。分からない、分からない。
今分かっているのは、自分の頬を流れるのは涙だということ。
その涙を消すかのように、雨が降ってきた。
それは自分の心を表してるようにも見えて。
今の出来事だけじゃない。思い返せば分からない事ばかりだった。
どうして学校に行かなくなった?
何かが足りないから?それは失ったもの?何を?
どうして私は公園にいたの?
どうして私は泣いているの?
考えれば考えるほど自分が分からなくなる。
私は一体、何を忘れているの?
ねぇ、誰か教えてよ。誰か…。
「どうしたの?こんな雨の中で1人。」
うずくまってる私の前に、1人の男が現れた。
彼はそんな私にいつもみたいに優しい言葉をかけてくれた。
私は、彼の言葉を待っていたのかもしれない。
ううん、待ってたんだ。
「…京介。」