表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
tears  作者: 榊ゆあ
4/16

04.一人じゃない

キーンコーンカーンコーン…



…懐かしい音が聞こえる…



「これは…。」



授業の終わりを告げるチャイムだ。


目の前には疲れきった2人の友達の姿。

陵子りょうこ亜矢あやだ。


「はあ~やっと終わった~」


「まじあいつの授業眠いわ!」


「ねぇねぇ、今日の帰りプリ撮ってこーよ!」


そう言って私の友達は楽しそうに話している。

周りを見渡せばじゃれあって遊んでる男子にグループになって話し合ってる女子。

教室はさわがしかった。仲のいい友達も目の前にいる。全然変わらない。

何一つ変わってないハズなのに、何かが足りない。



何かが、とても大事な何かが、足りないんだ。




だから私は学校に行かなくなった…?











「何してんの?」



目を開けばそこには京介の顔があった。

慌てて起き上がる。


「こんな所で一人で寝るなんていい度胸してるねー。」


私、もしかして寝てた!?

辺りを見渡せばすでに真っ暗。とはいっても時計を見ればまだ7時だった。


「また泣いてたの?」


「え?」


そう言って目に手を触れて見ると涙が流れていた。


「そんなに辛かった?」


京介が隣に座る。


「…そーゆうワケじゃないけど…。」


「何で今日もここに来たの?」


「…。」



言えるワケないじゃん。


そう思いながらふと京介の顔を見てみる。

京介は昨日と一緒で今日も夜空を眺めていた。

優しい笑みを浮かべながら。

私はしばらくその顔から目が離せれなかった。



「…学校は…楽しい?」



顔の向きも変えずに京介が聞いてきたからびっくりした。


〝学校〟…。



「…私…学校行ってないんだよね。」


「…え?」


「不登校なの。私。」



言った。



「…何で?もしかして…いじめられてるとか?」


「違うよ。私が行きたくないから行ってないの。友達とは普通に仲いいよ。

クラスのみんなとも。」


「じゃあ何で行きたくないって思ったの?」


「それは…」



何でだろう…。


それは…。



「失ったから。」


「え?」


「毎日が楽しかった。けどね、ある日何かが足りないって思ったの。

大切な何かが。友達がいる。クラスのみんながいるのに、何かが足りないの。

心にぽっかり穴が開いたような…。それから学校に行かなくなった。」



「…」



京介は何もしゃべらなくなった。


さっきまでの瞳も今は下を見てて暗い。



「でも今は今で楽しいよ?自由だしさっ!」


あまりにも話が暗いので私は京介の前に立って元気にそう言った。


でも京介の目は真剣そのもので私を見つめると低い声で言った。


「本当に?」


「え…?」


「本当に楽しい?学校に行かないで友達に会わないで、寂しく思わない?」


「…」


「本当は寂しいでしょ?一人でいて寂しくないなんて人はいないよ。」



「…っ」



涙が止まらなかった。


「一人でいようなんて思わないで、友達がいるんだから。」


「…うん…。」


「足りないものがあるんなら、これからつくっていけばいい。

心に開いた穴を少しずつでいいから、塞いでけばいいんだよ。」




京介の言葉は不思議だ。


私の心を温かくしてくれる。



「瑠美ちゃんは一人じゃないんだよ。一人でいるワケじゃない。

現に今だって目の前に俺がいる。」


「うん…。」



ありがとう…京介…。







しばらく泣いていた。

さすがに泣きすぎて目が痛い。痛すぎる。

そんな私を見て京介は笑いながら私の頭に手を乗せ、言った。



「いつまで泣いてんだよ~泣き虫だなっ」





京介は優しすぎる。

初めて会ったばっかなのにどこかで会ってるような感じがする。







…あとで陵子達にメールでもしてみようかな…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ