04.一人じゃない
キーンコーンカーンコーン…
…懐かしい音が聞こえる…
「これは…。」
授業の終わりを告げるチャイムだ。
目の前には疲れきった2人の友達の姿。
陵子と亜矢だ。
「はあ~やっと終わった~」
「まじあいつの授業眠いわ!」
「ねぇねぇ、今日の帰りプリ撮ってこーよ!」
そう言って私の友達は楽しそうに話している。
周りを見渡せばじゃれあって遊んでる男子にグループになって話し合ってる女子。
教室はさわがしかった。仲のいい友達も目の前にいる。全然変わらない。
何一つ変わってないハズなのに、何かが足りない。
何かが、とても大事な何かが、足りないんだ。
だから私は学校に行かなくなった…?
「何してんの?」
目を開けばそこには京介の顔があった。
慌てて起き上がる。
「こんな所で一人で寝るなんていい度胸してるねー。」
私、もしかして寝てた!?
辺りを見渡せばすでに真っ暗。とはいっても時計を見ればまだ7時だった。
「また泣いてたの?」
「え?」
そう言って目に手を触れて見ると涙が流れていた。
「そんなに辛かった?」
京介が隣に座る。
「…そーゆうワケじゃないけど…。」
「何で今日もここに来たの?」
「…。」
言えるワケないじゃん。
そう思いながらふと京介の顔を見てみる。
京介は昨日と一緒で今日も夜空を眺めていた。
優しい笑みを浮かべながら。
私はしばらくその顔から目が離せれなかった。
「…学校は…楽しい?」
顔の向きも変えずに京介が聞いてきたからびっくりした。
〝学校〟…。
「…私…学校行ってないんだよね。」
「…え?」
「不登校なの。私。」
言った。
「…何で?もしかして…いじめられてるとか?」
「違うよ。私が行きたくないから行ってないの。友達とは普通に仲いいよ。
クラスのみんなとも。」
「じゃあ何で行きたくないって思ったの?」
「それは…」
何でだろう…。
それは…。
「失ったから。」
「え?」
「毎日が楽しかった。けどね、ある日何かが足りないって思ったの。
大切な何かが。友達がいる。クラスのみんながいるのに、何かが足りないの。
心にぽっかり穴が開いたような…。それから学校に行かなくなった。」
「…」
京介は何もしゃべらなくなった。
さっきまでの瞳も今は下を見てて暗い。
「でも今は今で楽しいよ?自由だしさっ!」
あまりにも話が暗いので私は京介の前に立って元気にそう言った。
でも京介の目は真剣そのもので私を見つめると低い声で言った。
「本当に?」
「え…?」
「本当に楽しい?学校に行かないで友達に会わないで、寂しく思わない?」
「…」
「本当は寂しいでしょ?一人でいて寂しくないなんて人はいないよ。」
「…っ」
涙が止まらなかった。
「一人でいようなんて思わないで、友達がいるんだから。」
「…うん…。」
「足りないものがあるんなら、これからつくっていけばいい。
心に開いた穴を少しずつでいいから、塞いでけばいいんだよ。」
京介の言葉は不思議だ。
私の心を温かくしてくれる。
「瑠美ちゃんは一人じゃないんだよ。一人でいるワケじゃない。
現に今だって目の前に俺がいる。」
「うん…。」
ありがとう…京介…。
しばらく泣いていた。
さすがに泣きすぎて目が痛い。痛すぎる。
そんな私を見て京介は笑いながら私の頭に手を乗せ、言った。
「いつまで泣いてんだよ~泣き虫だなっ」
京介は優しすぎる。
初めて会ったばっかなのにどこかで会ってるような感じがする。
…あとで陵子達にメールでもしてみようかな…。