10.あなたの存在
公園に行かなくなってから2週間がたった。
だから京介と会わなくなって2週間ということだ。
私は学校にも行かず、京介と出会う前の生活に逆戻りした。
街をただ歩くだけの散歩だった。
野良猫がいればかけよって遊び相手にもなった。
そんな平凡な毎日を過ごしていた。
その日はとても寒かったため、マフラーをしていった。
「もう12月かぁ…。」
今頃受験生は忙しいんだろうな…とか他人事のように思ってみる。
来年から2年生と思えてくると少し不安に思えてきた。
全然学校に行ってないから授業なんてどこやってるか分かんないし、分かったところで入学当初から今やってるところまでおいつくはずがない。
でも不思議と後悔なんてしてなかった。でも不安は大きい。
来年からは学校に行かなくてはならない。どんな顔して行けばいいか分からない。
…違う、私は行きたくないんだ…。
何もない場所に戻るのが、怖いんだ。
しばらく歩いてたらお腹がすいてきたので、近くのコンビニに寄った。
適当におにぎりを2つとペットボトルのお茶を買い、袋に入れてもらって外に出る。
食べる場所を探そうとコンビにの角を曲がった時だった。
向こう側で人がたくさん集まっていた。
何かを取り囲むようにして集まっている。
何事だろうと思い、自分も駆け寄ってみた。
車が電柱にぶつかった状態で止まってるのが見えた。
心拍数が早くなるのが分かる。
頭が痛い。
人ごみを掻き分けてその中心となる場所を見てみる。
人が倒れていた。
頭から血を流し、小さくうなり声を上げている。
その隣で彼女らしき人が倒れてる人であろう人物の名前を叫んでいる。
「やだ…。」
頭が痛い。
胸が熱い。痛い。苦しい。
やだ…嫌だ…。
どこからか救急車のサイレン音が聞こえた。
「やだ…っやだ…やめて…。」
頭を抱え込む。
見たくないのに、その光景を見てしまう。
頭の中で何かがよぎった。
…誰かが目の前に倒れている。
誰かは分からない。またぼやけて見える。
多分この前と同じ人であろう。
何があったの?どうして倒れているの?
そして自分の手に何かがついてるのに気づいた。
そこには真っ赤な血がついた、自分の手があった。
「いやあああああああああああ!!!!!」
コンビニの袋を落とすと来た道とは別の方向へ走り出した。
どこへでもいい。
今見たものを忘れられる場所ならどこでも。
私は何かを忘れている。大事な何かを。
でも思い出したくない。
何も見たくない。
怖い怖い怖い、知りたくない。知ってしまうのが怖い。
もう嫌だ。助けて、誰か私を助けて…!
ずいぶん走った。息をするのも忘れるくらいに。
そこは最初の頃通っていた、学校の帰り道だった。
入学当初は陵子と亜矢と私との3人で一緒に帰っていた道。
あの頃は楽しかった。
よく3人ではしゃいで登下校した帰り道。
でも今となっては、陵子と亜矢の2人で帰ってる道だ。
…あの頃に戻りたい。
今更私が学校行ったところで2人が仲良く迎えてくれるだろうか?
突然学校からいなくなった私を。
連絡の1つも送らなかった私を。
迎えてくれるはずがない。
今の私にはもう何もないんだ。
その場に座り込み、また、私は泣いた。
すると、近くで話し声が聞こえた。
…誰かいる?
声のする方を振り返る。
そこには、陵子と亜矢の後ろ姿があった。
「陵子…亜矢…っ!」
涙を流しながらも笑顔で2人のもとへ駆け寄ろうとした。
近づいていくにつれ、話し声も鮮明に聞こえてきた。
陵子が言った。
「瑠美…今何してるのかなぁ…。」
足を止める。
…私の話…?
「ずっと連絡ないじゃん?学校にも来なくなっちゃって…。」
「そうだね…。」
亜矢が心配そうな顔をする。
陵子が続けて言う。
「でもしょうがないよ…あんな事があったんだから…。」
「瑠美…かわいそう…。私達が力になってあげればいいんだけど…。」
…何?
一体何の話をしてるの?あんな事?
何が…。
今まで頭の中で見てきた光景を思い出した。
「…私…。」
バラバラになっていたピースが1つずつ合わさっていく。
…思い出した。
全部、思い出した。
消えていた記憶を。
あなたの存在を。




