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転生大賢者の現代生活  作者: サクラ近衛将監
第一章 大賢者の学校生活

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3/10

1ー3 身に降りかかる火の粉の避け方 その二

 バーバラ女史の後姿を見送っていると、隣の岸川恵子が話しかけてきた。


「ねぇねぇ、バーバラ先生何を言ったの?

 小さな声だし、早口で全然聞き取れなかった。

 佐島君、ちゃんとわかったの?」


「うん?

 あぁ、まぁな。」


「何を言ったの?」


「まぁ、内緒だな。

 (たま)には内緒話もいいだろう?」


「凄いね。

 佐島君、あんなに英語(しゃべ)れるなんて思わなかったのに・・・。

 まるで向こうの人みたいな発音だったし・・・。」


「あぁ、まあな。

 但し、付け焼刃だから、そのうち化けの皮が剥がれるんじゃないか。」


 3時限目の授業は、数学だった。

 数学は、予習ではかなり苦労した。


 元の世界に比べると極めて高度な学問なのである。

 儂が知っていた数学は、幸次郎の小学校低学年の知識でしかなかったのである。


 従って、4日及び5日の三分の一の時間を()てて数学の参考書を(あさ)ったものなのじゃ。

 お陰で、何とか幸次郎のレベルまでは追いついていたし、そもそも幸次郎は数学では比較的成績が良かったのである。


 まぁ、そうは言いながらも、幸次郎の数学の成績は中の上から上の下あたりで、優秀とまでは言えないかもしれない。

 いずれにせよ、数学の時間は不明な部分も無く無難にこなせたようじゃ。

 

 この後、3時限目と4時限目の間に、昼休みがある。

 儂は、コンビニで買った昼食を持って、校庭に出た。


 昼休みは自由な時間であり、場合により校外に出ても構わないらしいのだが、時間内に戻らなければ色々と成績に悪影響を与えるらしい。

 儂自身は、実のところ成績を上げることに左程の関心は無いのじゃが、曲がりなりにも血肉を分けているであろう両親や祖母を悲しませるのは気が引けるので、敢えて自らを(おとし)めることはしないようにせねばならぬじゃろう。


 校庭というのが校舎の北側にあるのだが、これが実に広い。

 テニスコート、一周300mの陸上グランド、野球場にサッカー(ラグビー兼用)競技場が(そろ)っている。


 恐らくは北海道という土地柄なのだろう。

 随分と敷地が広く取れるようだ。


 城北高校の敷地だけで250m四方はある。

 まぁ、前世の魔導学院はその10倍ほども広かったから左程驚くことでも無いのだが、九幌市内の他の学校施設と比べるとかなり恵まれている様な気がする。


 姉の洋子が通う城南高校の敷地は、城北高校の三分の二ほどの広さだったはずじゃ。

 陸上競技場のフィールドが芝生になっており、其処(そこ)がちょうどいい昼飯処なのだ。


 多くの生徒たちが弁当を持って来て食事をしている。

 但し、これまで幸次郎は余りここを利用していなかった。


 理由は簡単であった。

 例の四人組の連中に絡まれやすいので、屋上などにこそっと避難していたのじゃった。


 儂が食事を終えてくつろいでいると、目ざとく見つけたのだろうか、四人組が性懲りもなくやって来た。

 全く()りない面々である。


 念のため、スマホを空中に浮かせ、撮影を開始できるようにしている。

 スマホ自体に認識疎外の魔法をかけているから、周囲の誰もがそのスマホの存在に気が付かないでいる。


「佐島ーっ、手間を掛けさせるんじゃねぇよ。

 今朝の続きだ。

 金を持ってきたかぁ?」


「金?

 何の金だ?」


「とぼけんじゃねぇよ。

 3日の日に河原で言っただろうが。

 6日の登校日には2万円持って来ねぇとズタボロにすると。」


「知らんなぁ。

 3日の記憶は全く無いんだが、もしかしてお前たちか?

 財布盗ったのは。」


「ほう、知らん振りとはふてぶてしいじゃねぇか。

 出さねぇって言うなら、ここで締め上げてやろうか。」


「もう一度聞くが、僕の財布を盗ったのは、お前たちで間違いないか?」


「あぁ、だったらどうだって言うんだ。

 お前が(しぶ)るから取り上げただけの話だ。」


「ふーん、そいつは窃盗と言うんだが、知ってるか?

 警察に言えば、お前たち捕まるぞ。」


 明らかに表情が変わり、少し(おび)えを見せるもなおも強がる山岡である


「ふん、証拠もねぇのにポリ公が俺らを捕まえられるはずがねぇだろう。

 大体が俺の親父は公安委員会の委員だ。

 警察なんぞ何とでもなる。」


「面白いな。

 今のたわごとをネットに上げてやったら、それでもお前の親父さんが警察にごねられるかどうかやってみるかい?

 下手すると公安委員会とやらの仕事を失い、世間の評判が悪くなるぜ。」


「馬鹿な。

 どうやって、ネットに上げる?」


「ここでのやり取りは、撮影し、録音がされている。

 だから、いつでもネットに上げられるし、警察に持っていけるが、そうして欲しいか?」


 冷や汗をかきながら山岡が喚く。


「はったりをかますな。

 つべこべ言わずに金を出せ。」


「断る。

 お前の命令に従う(いわ)れはない。」


 山岡が切れて、芝生に座っている儂に向かって蹴り上げて来た。

 その足を見切って、(わず)かに身体を(かわ)しながら、奴の振り上げたかかと部分を風魔法で叩くように押し上げてやると、勢いがついて、その場で山岡の身体がほぼ一回転して、つま先で地面を蹴るように落ちて来た。


 芝生とは言いながら当然に痛い思いをしたはずだ。

 或いは、つま先が骨折したかもしれないし、何しろ不意を突かれているから、つま先が芝生に届いた直後に顔から芝生に突っ込んだ。


 しかも残念ながら庇手(かばいて)も無かったから、(じか)にかなりの勢いで地面とキスをしたわけじゃ。

 本人は悲鳴を上げていたが、儂が同情するような場面では無いのぉ。


 で、儂は芝生から立ち上がった。


「ほかに用事がないなら、これで失礼するぜ。」


 そう言って儂はその場を立ち去った。

 山岡達四人がその後どうしたかは知らないが、仮に儂を訴えたところで、証拠の画像と音声があれば、儂に罪は及ばないはずだ。


 儂は、それから学校の外周を軽いジョギングで4周してから、教室に戻った。

 一周が約1キロなので、4キロほどのジョギングだが、軽めに抑えていたこともあって左程の汗も出ていない。


 魔法での強化を行っていた所為(せい)もあるが、この地の気候がとても(さわ)やかなのだ。

 夏場に入ると湿気が多少増すようじゃが、前世の世界よりも過ごしやすい様な気がする。


 (わず)かばかりの発汗は、清浄化の魔導で臭いまで消し去った。

 昼休みにこうした運動負荷を少しずつかけて行けば、いずれ、より強靭(きょうじん)な身体もできる筈だ。


 今の幸次郎の身体は、魔導師の儂から見ても軟弱に過ぎる。

 折角与えられた唯一無二の身体で無茶をするつもりはないのじゃが、適切な体力強化の訓練をしなければならないと思っている儂じゃった。


 午後の授業は、4時限目に保健、5時限目に音楽、6時限目に物理、7時限目に英会話があった。

 水曜日と木曜日には7時限目の授業があるのじゃ。


 英会話の授業は、バーバラ女史が主で、高田教諭が従になる以外、特記事項は無いのぉ。

 ただし、バーバラ女史は意識して儂に質問を投げかけて来るから困る。


 特に難しい質問じゃないのじゃがな。

 むしろ簡単な質問の類なんじゃが、どうやら儂の発音をクラスの者に聞かせたいようじゃな。


 この後の授業についても、まぁ、教科書及び幸次郎の持っている参考書の範疇(はんちゅう)から出てはいないから、特別に興味を引く事案も無かった。

 

 ◇◇◇◇

 

 その日、7時限目の授業が終わると、教室に教頭先生が来て名指しで儂が呼ばれた。

 この後授業は無く、部活動をしている者は、そちらに向かうことになるのじゃが、幸次郎は部活動をやっていない所謂(いわゆる)「帰宅組」なので、家に帰るだけなのじゃが、教頭にドナドナ(?)されながら辿(たど)り着いたのは、教職員事務室の中からしか入れない小部屋である。


 進路指導室という看板が表示されているから、進路指導なのかと思いきや違っていた。

 儂の目の前にいる教頭先生は、斎藤何某(なにがし)という50代後半の髪の毛の薄い男じゃ。


 儂を椅子に座らせた教頭は、向かいの椅子に座り、机を挟んで対峙(たいじ)する格好じゃ。

 何を言うかと思えば予想外の事だった。


「君ぃ、困ったことをしてくれたね。

 学内で暴力をふるうなんて許しがたい行為だよ。

 場合によっては警察沙汰(ざた)になるかもしれないんだが、君の両親に連絡せざるを得ないね。

 一体何で山岡君に暴力をふるったのかね。」


「は?

 あの、・・・。

 山岡って、山岡篤史のことでしょうか?」


「決まってるじゃないか。

 先ほど運ばれた病院から連絡がきたけれど、右足親指骨折、全治3か月の重傷だよ。

 どうしたら、そんなことになるのかね?」


「あの、失礼ですが、僕がその骨折の加害者だとおっしゃるのですか?」


「そうだよ。

 傍にいた山岡君の仲間三人が口を揃えて君がやったと言っている。」


「なるほど、で、教頭先生はそれを信じたと・・・。」


「うん?

 三人も証人がいるのに否定するのかね。」


「証人ってどうせ山岡の仲間でしょう?

 で、僕がどうやって山岡の足の親指を骨折させたと言っているのですか?

 教えてください。」


「そりゃぁ、君が山岡君の足を蹴ったと言っている。」


「ほうほう、どう蹴ったら人の足の指を骨折するように蹴ることができるんでしょう。

 教えていただけますか?」


「そりゃぁ、足の指めがけて蹴れば、足の指だって骨折するだろう。」


「蹴った方の僕の足はどうなるんでしょうね?

 教頭先生は反作用って知ってますよね。

 足で蹴れば、自分の足にも同じ力がかかるはずです。

 僕の足は別に怪我などありませんけれど・・・。」


「そりゃぁ、・・・・。

 力のかかり具合で一方にだけ被害が出ることもあるだろう?」


「普通はそうはなりませんけれどね。

 面倒なので、結論から言いますと、彼が怪我をしたにしても自業自得ですよ。

 僕の責任ではありません。

 単なる口裏合わせの証言ではなく、明確な証拠をお見せしましょうか?

 その代わり、証拠を見る以上は教頭先生が事後処理を含めてきちんとやってくださいね。

 学校の評判がどうのこうの、親御さんがどうのこうのと、途中で逃げることは許されませんからね。

 警察沙汰にするのも結構です。

 その代わり4人ほど退学者が出る覚悟でやってください。」


 教頭先生の顔がさっと青くなった。


「君ぃ、私を脅しているのかね。」


「教頭先生を脅してどうにかなるものじゃないでしょう。

 起こり得る未来を申し上げたにすぎません。

 では、宜しいですね。」


「何がだ?」


「証拠を見る覚悟を聞いています。」


 教頭先生は、若干ブルっているがそれでも(うなず)いた。

 儂は、ポケットからスマホを取り出し、昼休み録画録音した部分を再生して見せた。


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