第一部〜開花編
恋に一歩踏み出せない社会人・誠人、27歳。
会社の後輩・愛花との再会から始まる、春の甘く切ない恋物語。
僕は誠人、日光市に住む27歳。
昔から女性とうまく話せず、恋愛に踏み出せずにいたが、会社の後輩、愛花ちゃんのことが気になっていた。
⸻
秋の深まるある日、会社の先輩に紹介され、ふたりで食事に行くことになった。
テーブルは向かい合わせに座った。
「愛花ちゃん、何食べるか決まった?」
「ちょっとまだ迷ってます……」と、言葉を詰まらせた。
初デートは、一時間足らずで切り上げた。
⸻
会社に戻ると、愛花ちゃんの視線を感じたが、目を合わせる勇気はなく、挨拶もぎこちなくなった。
本当はもっと話したいのに、初デートの気まずさに押されて、距離を置いてしまう自分がいた。
心の中ではまだ気になっているのに、行動は正反対――そんな自分に苛立ちを覚えた。
「またご飯に行きたい」と思ううちに、気づけば半年が過ぎていた。
⸻
冬の名残を感じるある日、久しぶりに先輩と食事に行くことになった。
席につくなり、先輩が唐突に切り出した。
「お前さ、今でも愛花ちゃんのこと……好きだろ?」
予想外の質問に頭が真っ白になり、僕は「まだ気になってます」と、中途半端な返事しかできずにいた。
先輩はニヤリと笑った。
「愛花ちゃんも、お前とまた話してみたいって言ってたよ。今度、三人でご飯でも行くか?」
「マジですか?お願いします」と戸惑いつつも返した。
⸻
三月二十日、鹿沼にある個室の焼肉店で三人で食事した。
「愛花ちゃんは今まで彼氏とかいたことある?」
「まだ一人しかできたことないんです。誠人さんはどうなんですか?」と聞かれた。
「実は俺もあまり経験ないんだよ。愛花さん、モテそうだけどね」と褒めた。
くだらない話をしてるうちに、気づけば「愛花」と呼び捨てにしていた。
⸻
帰り際、どこか寂しげな愛花の表情を見て、思い切って声をかけた。
「今度、いいお店見つけたから愛花も一緒も行かない?」
愛花は「いいですね。行きましょう!」と前のめりで答えた。
その瞬間、心に温かい光が差し込んだ。
⸻
四月一日、初めてのデート。
雲ひとつない快晴の中、鹿沼のオムライスが有名なお店でランチを楽しんだ。
レトロな店内には、懐かしい平成の曲が流れ、時間がゆっくりほどけていった。
「愛花は最近、いいことあった?」
「ジャニーズのライブに行きました!」と教えてくれた。
会話を重ね、次に会う約束も自然に決まった。
⸻
四月十日、二回目のデートはドライブ。
まずはカラオケへ。
初めてのふたりだけの空間で、声が震えたが、曲を重ね次第に落ち着いて歌えるようになった。
外に出ると、夕日が沈み、街は柔らかなオレンジ色に染まっていた。
⸻
次に向かったのは、桜の見えるテラス席のレストラン。
「愛花と遊んでると楽しくて、あっという間だよ」
「私も誠人君といるとすごく楽しい。でも、今日ももう終わっちゃうんですね」と、少し名残惜しそうな表情。
ライトアップされた宇都宮の桜が、ふたりを切なく照らしていた。
⸻
帰り道、最寄り駅に車を停め、集合場所まで歩く。
夜風に桜の香りが混ざり、足元の花びらを踏みしめて歩く。
僕は手をポケットに入れ、モゾモゾさせた。
愛花の横顔を横目で見ては、手が汗ばみ、呼吸も乱れて胸が高鳴った。
⸻
「今日しかない」
そう心の中で何度も繰り返した。
それでも、勇気がなかなか出せずにいた僕を、
街の桜がそっと背中を押してくれた。
歩みを止め、震える声で告げた。
「ずっと前から好きでした。付き合ってください!」
愛花は「私も……好きになってたんだ。お願いします」と頬を赤らめた。
その瞬間、彼女の想いが体中に広がった。
「好きな人に告白するって、こんな感じなんだ」と思い、数秒の沈黙が流れた。
⸻
その夜、先輩に報告した。
「愛花と付き合うことになりました」
先輩は驚きつつも笑顔で言った。
「あんだけ内気だったお前が告白するとはな。本当に驚いたよ」
結婚の話にも触れられたが、僕は濁さず答えた。
「将来的には……見据えています」
⸻
僕の不器用な恋心の芽は、ようやく春を迎えた。
ふたりの未来は優しく包まれ、静かな夜風に身を委ねた。
---
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
駆け出しの新人ですが、楽しんで書きました。
今回の話は三部作『恋色に咲く誠華』第一部「開花編」でした。
続きは第二部「結実編」をお届けしますので、お楽しみに!
※第二部は水曜日の朝10時、第三部(最終章)は金曜日の夜8時に投稿予定です。
感想やお気に入り登録もいただけると励みになります。




