第9話 オタクはヤンデレロリと登校する
そうして朝食を食べ終わった後、登校したのだが……
「あの、カナタさん? もうすこし離れませんか……?」
「や、せっかく緋凪くんと仲良くなれたのに離れたくないもん」
可愛すぎかよ、おい。いや、実際に可愛い美少女だったわ。
今がどういう状況かというと、カナタさんが俺の腕に抱きついている状態で登校している。なぜかというと家から駅までは手を繋ぐだけで良かった(めっちゃ緊張した)けど割と混んでる電車に乗っているときに俺と密着したせいで緋凪成分過剰摂取状態になってしまいその結果こうなってしまった。
それなら断れよ、って話だが……俺もやんわり離れて、と言った瞬間に雰囲気が変わり狂愛情暴走状態に突入しかけたので許可した。……だって刺されたくないから。まぁ、カナタさんに刺されることがない代わりに他の男の嫉妬が込められた視線でメンタルが瀕死だけどね!
さらにこのまま学校についてしまうと学校の奴ら(主に男子)に殺されかねんし、カナタさんにも迷惑をかけてしまいそうなので嬉しそうな顔をして俺の腕に抱きついているカナタさんに話題を切り出した。
「その……もうすぐ学校だからさ、離れたほうがいいと思うんだ。他の人に見られたら面倒そうだし」
そう言うと戸惑いの表情を浮かべた後、何かを悟ったような顔をしてこちらを見つめてきた。その瞳は光のない『底なしの闇』を宿したかのように昏く憎しみが込められていた様に感じる。
「そっか、ボクといっしょにいると不都合なんだね。きっと他の人間にちょっかいを掛けられると思っているんだよね? でも大丈夫だよ。そんな奴らはすぐにヤってあげるからね……!」
「っ!? ……いや、そんな些細なことでカナタさんに手を汚してほしくない。それに捕まったら、俺が悲しいから」
〜ッ! はっっっっっず! 何が『俺が悲しいから』だよ、そんなこと言われてもキモいだけだろ! ……本心だけれども恥ずかしいものは恥ずかしい。
そんなふうに羞恥で爆発しそうなほど顔を赤くして俯いていると、カナタさんが頬を赤くして嬉しそうにはにかみながらこちらを向いて――!?
――ちゅ、と俺の頬にキスをした。
突然のことに赤面し驚くが、彼方さんは笑みを浮かべ言った。
「えへへ、我慢できなくてついやっちゃった。緋凪くんだぁーい好きだよ!」
「っ!?」
不意打ちのキスからのその台詞はちょっとまずいよ! 尊死しちゃうよ!
嬉しくもあり、死の恐怖を感じる登校は終わりを告げた。
……が、彼方さんと教室に入った俺はカナタさんから引き離され速攻オタク仲間の高森に捕まり、他のクラスメイトからの視線がグサグサと突き刺さってメンタルが死にかけていた。
「おーい、小鳥遊ー! なんで昨日転校してきたばかりの彼方さんと仲良さそうに教室に入ってきてんだ? 羨ま……じゃなくって、何があったんだよ!?」
「それがなぁ……俺にもよくわからん」
「いや、そんなわけ無いでしょ!? さぁ、一体何があったのかを全て話してもらおうか」
ということで信用できるオタク仲間である高森に、誰にも言わないという条件付きで昨日あった出来事を『押し倒され、キスをされたこと』と『カナタさんがヤンデレである』ということを伏せ、カナタさんが近所に住んでいたと真実をぼかして話した。
「なんでそんなギャルゲ主人公みたいなことしてるの……?」
困惑したように唖然とした顔でつぶやきながら、『女性を暴漢から助けるなんてすげぇ』と俺を見てくる。
「いや、誰だろうが困っている人は助けようぜ。しかも相手は俺らの成れの果てだし」
「そうだねー。……そう思っていても普通は行動に移せないんだよ(ボソッ)」
「今なんて?」
「んー? なんでもないヨ」
なにか隠している気がとてもするが、気にしないことした。
今日も一日平和に過ごしたいな……。
「あっ、緋凪くん! 今日から一緒に毎日帰ろうね!」
うん……無理かも。




