初めてのヌード
俺氏の名前は恥裸 剥突(^ω^)。気軽に「ムツオッ」って呼んでくれ。オムレツでもいいぞ。
俺氏は今、大学に向かっている。机と胃に穴が空くほど勉強してやっと入った、日本一の学力を誇る頭亀好(´;ω;`)大学だ。
尊敬してくれても構わないんだぞ。
あっ、胃が痛っぇ⋯⋯
机の穴も、俺の胃の穴も一向に塞がらない。病院行ったけど「ホームセンターとかに行ってください」って言われたし、ホームセンターに行って胃を見せたら「胃を見せないでください」って言われたし、八方ツムツムだよホントに。
でもいいのさ。頭亀好(´;ω;`)大学に入れたんだから、人生安泰も決まったようなもんだもん。
もんだもん⋯⋯
おくちゅくちくちもんだもん!
もんだもんなのだ!
さて、一限までまだ900秒くらいあるな。少し食堂で休憩して、それから行くとするか。
「おーいムツオッーッ!」
食堂に行くために逆立ちで歩いていると(食堂は逆立ちでしか入れない)、後ろから渋めの声が聞こえてきた。どれくらい渋いかというと、ぶどうの皮と渋柿を掛け算したくらい渋い。
振り返ると、同じゼミのアイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会が同じく逆立ちで立っていた。
「なんだてめぇ、なんか用か」
俺氏が優しく訊ねると、アイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会が鬼のように眉を釣りあげ⋯⋯いや、逆立ちだからこれは八の字だな。申し訳なさそうな顔で言った。
「実は今日、ぽくちんのサークルの手伝いをして欲しくてな⋯⋯」
「アイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会が入ってるサークルって、確か芸術サークルだったよな?」
「ぅん、そえでね、きょうね、ヌードデッサンの予定だったんだけどね、モデルの人がね、急にね、『にゃーーーーっ!』って叫んでたからね、なにかにゃと思って見に行ったらね、全身タトゥーまみれになってたんだよどういうことだよ意味分かんねぇよふざけんなボケナちゅめぇ⋯⋯」
「もしかして、俺氏に脱げと?」
「すまん! 今度ゆで玉子丼奢るから!」
「味噌かけていい?」
「味噌⋯⋯かぁ、財布と相談だなぁ⋯⋯」
「では交渉決裂ということで」
「ごめんごめん! 大丈夫、あとでアコム行ってくるから!」
「よろしい」
そんなわけで俺氏たちは側転で芸術サークルが使っている体育館裏の小屋へと向かった。
俺氏は不安だった。人前で全裸になったことなんて今までないし、確か芸術サークルにはおにゃのこもいたはずだから、もしオッチンチンがオッピンピンしちゃったらどうしようって考えてるうちにいつの間にか全裸にひん剥かれて台に立たされてたわ。
「ごめんねアイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会くんのお友達に迷惑かけちゃって〜。悪いけど、この図の通りのポーズになってくれるかな」
アイドルのようなルックスの美女が申し訳なさそうに言った。俺氏は無視した。
メンバーは15人いた。そのうち13.6人が女子で、残りの1.4人がアイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会だ。小さな小屋なので、これだけ人数が多いと熱気が篭もる。
暑し⋯⋯汗し⋯⋯
「あの、窓開けますねっ!」
大人しそうなメガネのおにゃのこが俺氏を気遣ってか窓を開けてくれた。ありがてぇ。
あ、蝶が入ってきた。綺麗なアゲハだなぁ。大根と煮物にしたら美味そうだなぁ。
お、こっち来た。
ああ、鼻の前を通るもんだからクシャミが、ハ、ハ、ハッピョン!!!!!
「ちょっと!!動かんといて!!!!」
「す、すみません⋯⋯」
「まったくもう!!!!!!!!!」
ビックリした、こんなに怒られるのかよ。ちょっとクシャミしただけなのに。怖いからもう怒らせたくないな。終わるまで微動だにしないぞ。
ブーン⋯⋯
今度はクワガタが入ってきて、ちんこに止まった。
挟んだ。
クッッッッッッッッッソ痛いけど動いたら怒られるから頑張って耐えてます。
みんなめっちゃ心配そうな顔で見てる。あんなに怒っといてなに心配してんだよ。
ブーン⋯⋯
もう1匹クワガタが飛んできた。そして挟んだ。2人がかりで俺氏のチソコを⋯⋯痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いああああ1111111111111111RXEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAYEAHHHHHHHHZzz⋯⋯Zzz⋯⋯
Zzz⋯⋯Zzz⋯⋯
あ痛たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたほーわったぁ!!!!!
お前はもう死んでいる。
痛たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたどんだけ現実逃避してもクワガタのひと挟みで現実に引き戻されるぁぁあああああああああああああ猿専門の美容外科ああああああああああ=→@yahoo.co.jp&BBBBBBBBBBBハム助ぎゃああっポ! あーあーのーーーーぎゃっポ!
やっと離れてくれた⋯⋯
ブーン⋯⋯
今度はカブトムシかよ。
胸に止まった。
ブーン⋯⋯
またカブトムシ。
ブーンブーン
カブトムシカブトムシ
ブーンブーンブーン
カブトムシカブトムシカブトムシ
ブンブンブン
蜂。
さっきまで心配していたメンバーたちが、今度は笑いをこらえるのに必死になっている。こんなにカブトムシをつけたヌードモデルは俺氏が初めてだろうから仕方ないといえば仕方ないけど出来ればとってほしいしもう窓閉めて欲しい。みんな、カブトムシも描いてんのかな。
ブーン⋯⋯
背中に止まった。
ミーンミンミンミンミンミーン!
うるさぁ⋯⋯
みんなもウザそうな顔をしている。俺氏悪くないよな?
ブーン
ミンミーン
ブーン
ミンミーン
ブーン
ミンミンミーン
今度はセミフィーバーかよ。
今、背中とお腹にセミとカブトムシが10匹くらいずついるんだが⋯⋯
こんなのもうヌードデッサンじゃないだろ。なんで中断しないんだろ。みんなデッサンどころじゃないだろフグホッ!!!!!!
痛たたたた⋯⋯なんか飛んできた⋯⋯頬っぺた痛⋯⋯
「すいませーん! ボール取ってくださーい!」
ボウリングサークルだった。外でやってたとして、どうやったら俺氏の顔に飛んでくるんだよ。わざとやってるだろ。
「もう! 動かないでって言ったのに!」
鬼かよ!
「次動いたらアイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会くんと絶交してもらいますからね!」
「なんでそんなことおぬしらに決められにゃならんのにゃ! 俺氏が従う理由なんぞないぞ!」
「あれれ〜? そんなこと言っていいのかなぁ? この写真ばら撒いちゃうよ〜?」
セミ&カブトムシだらけの全裸の俺氏の写真だった。
「ボール取ってくださーい!」
はよ取ったって!
「勝手にばら撒けばいいさ」
「なんだと?」
「写真をよく見てみな」
「ん? ⋯⋯こ、これは!」
そう、写真には肝心なところが写っていなかったのだ。ちょうど俺氏のツノがカブトムシのツノによって隠されていたのだ。
「カブトムシのツノに隠れる大きさってヤバいだろ! そうめん3本でもはみ出すぞ!」
アイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会アルティメットフィーバー彦4世の言葉に俺はショックを受けた。
確かに、細すぎる⋯⋯
俺氏はあまりのショックに体勢を崩してしまった。左手の小指だけでは全体重は支えられても、ショックまでは支えきれなかったのだ。
「ボール取ってくださーい!」
そろそろ自分で取りに来いよ。
「アイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会コンビ! こいつ捨ててきて!」
さっきのアイドル美女が酷いことを言っている。それにしても、アイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会とアイスクリーム信用金庫株式社会数学理科社会アルティメットフィーバー彦4世って本当に顔そっくりだよなぁ。双子でもなければ兄弟でもないのに。歳も40くらい違うのに。
「なぁアイス、ゆで玉子丼feat味噌はどうなるんだ?」
「そんなのあるに決まってるだろ! プロミスも行ってくるぜ!」
「やりぃ!」
後日、俺氏たちはゆで玉子丼屋に来ていた。俺氏はあの時からずっと全裸featセミカブトムシで、風呂にも入れていないがコイツらが幸せなら俺氏はもう何もいらねぇ。
ゆで玉子丼も全部セミカブトたちにあげたよ。
家に帰ると、机の穴が直っていた。
俺氏の胃の穴もいつの間にか治っていた。
大学の廊下にあの時の日付入りのデッサンが並べられていたので全部見てみたところ、誰1人として俺氏の絵を描いていなかった。なぜか全員カービィがロースカツ定食を食べている絵だった。
動いた時激怒されたのはなんだったんだ。




