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第80話 シラタマ/刻の庭(4)

「俺が我慢できずに乗ったのは悪かった。だけど!後先考えずに『楽しい』を優先しすぎないでくれ!」


 ギャラリーに振舞いと謝罪を行った後、もう大人しくするべきとノリを引っ張って船室に戻る。


「だって魚釣ったらユウの作るごはん食べれると思ったし」


 とか言ってくるし、あーもう。

 

「私はね、ここ千年ぐらい、■■が去ってしまってから、どんどん知ってる人も、やむを得ずとった弟子も老いていなくなるし、なんとなく故郷の村には帰りづらかったという理由で厄災がおきたり、トラブルが起きた国をそっと魔法で助けるのを趣味にしながら■■を探したり、逃げられたりをしていたら、いつの間にか『救国の魔法使い』とか言われているし、相変わらず■■には逃げられっぱなしだし、感謝はされどずっと一人だしで、なんというか!人にかまってもらえてるのが久しぶりすぎて嬉しいからよろしく親友!美味しい食生活をよろしく頼むよ!」

「は?!親友?」


 なんか切々と謎の自分語りをしているかと思ったらなんだ一体。


「同じ二つ名のよしみで。断られたらまた孤独になる。マジ泣きする」

「ええ…親友…か~…?」


 俺、生まれてこのかた友達はいても親友っていた覚えはないんだけど。後、マジ泣きってなんだよ。


 正直めんどくさくなってきたことと、もうこの船の中での巻き込み事故は勘弁なので船室の個室で漫画を読むこととした。妹の蔵書は俺の影響か少年漫画も厚い。今回は欧州から帰ってきたばっかりだったせいで数年分読めていないので、読むものがたくさんあって最高だ。


 雑誌は紙で買っていたが、単行本が収納する場所がないとかいって途中から電子書籍に切り替えていたということで、今端末ごと貸してくれている。

 

 そこからそれほどの時間経過の経過を待たずにノリの限界がきた。


「私がおとなしくしていたらあなたはその板をみてばっかりですね。つまらなくなったので散策してきますっ」


 千年以上生きてる見た目は若者な爺さんが、何かわいげなしゃべりしてむくれてるんだよ…めんどくさい彼女ムーブにも見えてなんだかどっと疲れてきた。どうやらあちらの認識では親友らしいんだが?


 ◇


「先ほどはありがとうございました。魔法で護っていただいて。しかも船酔いも今回全然なくて快適です」

「いえいえ、それほどでも」

「あまりお見掛けしないお姿ですが、どちらのご出身なんですか?」

「北方です」


 ユウにかまわれないことがつまらなさすぎた反動で飛び出したものの、別にやることもないのでふらふらしていたら、甲板で他の旅客につかまった。私の見た目が珍しいのか、防御魔法が珍しかったのか。そして出てしまう、今まで、■■と別れてから、ユウに、ついでにアオ会うまでに身に着いた差しさわりのない話術と営業スマイル。

 

 これは、大変よろしくない。


 千年以上生きてきたというのに、ここ数日、最愛の君を見つけナットに潜入して以降、「距離をおけ」と■■から私を引きはがした、引きはがせる力を持ってる人間が突然現れた。


 私の幼少期から続くロングスローライフな人生とは違いかなりな激動の人生を送ってきた異世界人ユウに構われたことが刺激的すぎて、漫然と生きてきた自分のつまらなさ、面白くなさをいやというほど突きつけられている気分だ。


 人は人、自分は自分とはいうけれど、同じ二つ名を冠するのにこんなに違うものなのか。どんどんニコニコ愛想笑いしていることにも嫌になってくる。


 私はこういう人間だったのか?ナットを出てから楽しすぎて考えなしにはしゃぎ過ぎた自覚はある。今までの人生殆ど引きこもりで魔法の研究と、厄災後の補助による実証しかしていない。圧倒的に研究以外の経験値がない。


 …つまらない。本当に、つまらない。今までの私のライフ。

 一呼吸をおく。

 のこりの航海時間は6時間。

 

「……ツレのところに戻りますね」


 適当にまいて船室に大股でもどる。歩調がはやくなる。


「おかえりー」

「戻りました。のらくらと差しさわりのない会話をすることに意味が見いだせなくなって戻ってきました」

「それ、いっぺんに意味がないとか思わないほうがいいよ。全部意味がないとも限らない。知らない相手に本気や思考を押し付けると軋轢もうむし、本気で付き合うと決めた相手以外には重要なこと以外は本気で当たりすぎないことも、必要だよ。嘘はよくないけどね~喧嘩防止で躱すぐらいは許してもらおう」


 そうなんだ。

 

 また、視点が固まるところだった。


 私の人生から考えると約千年短い人生を生きていた同じ二つ名を持つこの調理人な勇者は、付き合いは短いのに新しい視点をくれる。


「すみません、さっきははしゃぎ過ぎたようです。」

「だろうね。でもおまえってずっと一人だったんだから、俺で人との付き合いリハビリするといいよ。まあ、俺も俺でそんなに練習になるような人間でもないけど。正直いって普通を知らない。まず突然親友とかいわれるとびっくりする」


 手をひらひらさせながらそんなことを宣う。確かにこちらの世界で見たことがない魔法やスキルを駆使する異端な勇者。


「ところでこれから行く先の国、映像ガイドを見る限りは俺の故郷の歴史の経過を一気に浴びるような成り立ちしているっぽいんだよ。お前、一回か行ったことある?」

「3回ほど。この国は入国を海路限定としているので厄災が起きたときには大体間に合わず、たどり着いたあとに復興のお手伝いをすることをしてきました。街や国を一回壊しちゃうのは、役立たずなのはわかっているんですが、入国できないのは仕方がなく」


「じゃあ、その辺をなんとか改善する提案でもプレゼンして導入してもらえるように、国についたら調査だな。ただ、ゲートを開けるとセキュリティをがちがちに構築してきた意味がなくなるから、配慮した内容で。採用されたら便利になるようなプレゼン考えよう、親友予備軍」


 その言葉にはっとする。そしてにやける。

 

 親友予備軍だって。

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