第70話 アトル『道化の窟』(3)
アトルでは一般的な魔法と武器の併用以外に、自らの肉体を鍛えたうえで魔法を乗せていく格闘技的な戦闘スタイルの冒険者が結構いる。
ダンジョンの構造としても、その階層に足を踏み入れたら突然開けた、とか空間ごと異次元な、みたいなこともまあまああるようで、私みたいな鉄砲撃ちや、高火力魔法に耐えられるような構造になっている場所もいない場所もあるそうだ。
ゆえに、周回勢は他の冒険者に迷惑をかけないよう、一撃必殺で低レベルモンスターを狩る、そういうスタイルになっていくらしい。
ダンジョンに赴く前に市場にいくと、武器職人から仕入れを行ったり、鍛造したり鋳造したりといった自分で作った武器屋ではなく、ドロップ品を売っている武器屋がある。
そこで買ったのがマキリ包丁、ドロップで日本刀が出るのか!と思った掘り出し物の全長30センチほどの短刀、サバイバルナイフ、片刃ナイフなど、短い刃の刀を片っ端からあたって何が良いか中で試そうという算段だ。
買ったものを【無限フリースペース】の武器庫にしまい、準備完了。
ダンジョンへの行き方については、2とおりあるそうで
1,現地まで徒歩、飛行、乗り物等で行く
2,アトルの中にある王が開いてくれているゲートを使いワープし赴く
大体ダンジョンに赴く人の9割がワープを使用、残り1割は常備軍が見回りをかねて国土を巡回するパターン、物好きか高ランクがワープを使用しないで赴くパターンとなるらしい。
因みに、アトルは国の中に1都市しかない。王城の周りをダンジョンが囲んでいる1都市完結型の国なのである。他、歴代王が絶対的な力を持つせいか、過去一度もドラゴンの厄災に見舞われたことがないどころか、撃退まで行ったという伝説もあるそう。
「その時の文献、■■様が面白がって蒐集していた都合、この国の拠点の中に収蔵されていますので、あとで読んでみるといいでしょう。絵本まであるんですよ」
「魔女さんはそのときは?」
「立ち会ってはいませんが、いらっしゃいましたよ」
ということはここ千年以内なのか。
「初めてですし、ワープでいきましょう。国境を超えれるほどのレベルアップとランクアップを果たすまではワープで赴いた方が良いでしょう。因みに国境ダンジョンを超える強さが必要なダンジョンもありますよ。そこはまだ最下層に至っていません。確か今150階層は下っているという話ですが、詳しいことはおそらく王家と政府しか知りません」
王と政府について志摩が軽くレクチャーしてくれる。
王は祭祀とダンジョン維持をつかさどり、政治は政府が行う。ただ、指示系統としては王が上にあり、その下に政府がある構造となっているため、王が最高権力者であることは間違いない。公表されている情報でいうと、王には王妃が5人、息子が3人、娘が4人いるという。また、王弟が二人、王妹が5人、それぞれ家族がいる。不測の事態がない限り王の長子にのみアトルを維持する力が引き継がれ、国が護られている、ということらしいので、血の力がこの国の力なのだろう。
昔は大きな権力争いがあったりもしたが、争いが起き国が乱れるとそのまま国の戦乱どころか魔物やドラゴンにも狙われるような惨劇がおきるらしく、変な気をおこすと国ごとなくなる、といったことになりかねないのでそれ以降クーデーターまがいのことは全く起こっていない、とのこと。また、そのことが近隣諸国にも伝わっているため、この国に攻め入ろうとする者はまずいない。
「話は戻り高ランクダンジョンですが、この先高ランク冒険者とかになれば探索依頼が入ることはあるとはおもいますが、■■様や、件の魔法使いのようにどんな要請すら気が向かないとほぼ蹴り倒しているお方たちもいらっしゃるので、そこまで気にすることではありませんね」
永長がさっきの話の補足をしてくれた。
転移ゲートは祭壇のふもとにある1つの建物の中のワンフロアに行き先ごとに設置されている。
ちなみに、話に何度も出てくる王は祭壇の裏側の塀に囲われた土地に住んでいるとマップに書いてあった。しかも平な土地にお住まいである、とのことなのでまるでイメージは平安京だ。
ぞろぞろと4人並び立ち、目的の道化の窟のゲートに向かう。
ゲートに立つ常備軍にレベルチェックを受けた結果「戦力過剰」と言われつつも、出口戻りの魔石【道化の窟】を受け取る。常備軍の方々は、冒険者ギルドとはまた違った黒の制服を着ている。冷房はきいているものの少し暑そう。
今回は3人フォローで入ってくれて、バフを盛りまくられた私がとどめをさし、【経験値5倍】を活用し、レベルアップを図る作戦。
転移ゲートに通されると、目の前に空間の歪みがある。そこに歩みを進めると、砂漠が広がった。
やっぱり気候的な問題なのか、リュウゲツランぽいものが自生している。そして目の前には石造りの簡素な建物があり、入ると回復薬の店、簡易食糧の店等があり、その奥に下層に続く階段、即ちダンジョンの入り口があった。ワープ以外で訪れた冒険者用の受付も準備されている。こんなところがあと5つ、国境ダンジョンを含めるとあと7つもあるんだ。
「チーズさん、このダンジョンで取得できるアイテムで達成可能なクエストのセットは万全ですか」
「万全万全。ダンジョンに入ったらういもハウスから出すんだよね」
「出してください。あと、僕たちの半径10メートル以上遠くにいかない魔法と、チーズさんと一緒にかすり傷すら負うことのないぐらいのバフ盛りますので。ここではないと思いますが、まずいとおもったら速攻ハウスさせてくださいね」
護衛様からのチェックが入った。
「では、私たちからフォローパーティー組みますね」
志摩と永長、アオくんからの申請がはいり承認をすると【ステータスボード】の右上に名前のリストが現れた。




