第61話 ナット『移譲結果報告』
ミアカ村を一度後にし、ナットの王城に経過報告のため、今回は魔女さんの力を利用したアオくんの転移魔法により帰還。
大広間へ向かいモヤ王に帰還の挨拶をした後、魔女さんとイオくんを含めミアカ村で行った事業譲渡について、経過報告をする。
魔石を使用したモニターでミアカ村の住民への営農指導の様子を報告、また、今の状況について牛舎につけたカメラからリアルタイムで確認する。
ミアカ村のみんなは、私の牛ちゃんたちを今現在はとても可愛がってくれている。特段疑問も問題点もなく、牛と【動物言語】スキルもあることから会話しながら楽しく作業をしてくれているよう。やはり、意思の疎通ができる事はとても大きい。
私の【無限フリースペース】内の生乳倉庫には、時間凍結をした生乳が日に日に順調に増えて行っている。
念のため牛ちゃん達に危害等が及ぶようなことがあれば自動的に防護魔法が発動するように救国の魔法使いの指導により設定。私が移譲した一体にトラップというか、賊が侵入した場合体が動かすことができないレベルの電撃を浴びるように仕掛けてはあるけれど、今の状態から鑑みるにまず外敵が現れない限り、発動することはないと思う。
この世界が正常に戻った後で盗賊が出るといった事件が起きた場合は、その賊には地獄が待っているだろうけど。
「チーズ、ご苦労だったね。」
「ありがとうございます。なんだか牛たちも、私たち家族だけで飼育していたときよりも幸せそうなのが何とも複雑なのですが。」
そうなんだよ。なんかいっぱいの人に構われるのが楽しいのか、興味をひかれているのが楽しいのか、牛ちゃん達の感情の色が明るかった。
そしてこの報告の間、救国の魔法使いは兄にがっちり手首を掴まれ、前には飛び出し防止のように、アオくんが立っている。そして凍結の魔女はかなり腰がひけながら報告を聞いていて、イオくんはその真横にすっと控えている。
生乳生産部分の譲渡は出来たことから、これからはレベル上げと並行して、生乳の加工、販売ルートの確立による外貨の取得、ナットの調度品の買い戻しによる国の安定を図るなど、まずは国を正常化していく算段をつけること、復興手順等を考えなくてはならない。
私はというと、就農と同時に家業酪農を一部卒業した、みたいな感じになった。
『私』の特性としては、みんなの言葉を信じるならば、高度魔術や高度戦闘技術の素養があるらしいけれど、まず今の協力者と比べ、レベルもギルドランクもかなり落ちているので、頑張って自分を育てないとただただ足を引っ張ってしまう。いや、ギルドに加入しているの、私だけだったりするのかな?
巻き込まれ転写された、久しぶりに会った兄なんて、なんか全くそこが知れないし。
報告会終了後、元々別行動宣言をしていた兄は、「ここの世界各国にファストフードチェーン店を作って繁盛させて経済支援をするとかどうよ!」とか言い出し、戦略会議をすると宣言したうえで救国の魔法使いを拉致、実家を拠点にすると言い放つと同時に、「じゃあまたな!」と手をあげ当たり前のように【転移魔法】で連れ去った。行動が早いわ。
私以外のみんなは息を吸うように転移をする。気が早いというかなんというか。なぜかアオくんの口の端が笑いをこらえるようにゆがんでいるけど。
魔法使いさんが去ったことで、魔女さんは安堵の表情を浮かべている。
ほんとこの二人に一体なにがあったのか。
◇
「あーーもう、奴がいると緊張してしょうがない!お前の兄に感謝じゃな!」
「ほんとに何があったのか教えてほしいんですけど!でも記憶捨てちゃったんですよね?」
「捨てた記憶を思い出させようとするではないわ」
「はーい…」
「それはそうとて、お主の次の目的地を決めないとな。」
王の間を後にし、もとい王を置き去りにし、応接室で戦略会議を行うこととなった。どうも、王は内政も何もいまはほぼ稼働はしていないとはおもうのだが、やることがあるらしい。
応接室のテーブルにはこの場合地球ではないとはおもうから地球儀っぽい何かと、地図が広げてある。地の球の儀だから地球じゃなくても地球儀でいいのか?改めて地図を見ると、この世界は北半球に12か国、南半球に8か国、あわせて20か国があるようで、ナット王国の左横にはネルド王国、北東にもう一国隣接した国がある。ここ3国で一つの大陸となっているが。北東の隣国はまだ、私のレベルではお勧めできない、という。
「裏側の南半球には今のチーズにちょうどいいと思われる場所あるんじゃが、例のごとく到着しないと言語化して認識することはできぬのじゃ。あと、国内や、ネルド程度であれば問題なく転移の手伝いができたが、遠くなると送ったあとに戻すことが、状況にもよるが、1カ月程度はかかってしまう」
要するにその間、護衛アオくんの両肩におんぶにだっこになる可能性がままある。
「絶対兄は無駄には手を貸してこないタイプなので、兄を頼るのも難しいですね」
「じゃよなあ…」
「なんかアオくん、いい方法ない?」
地図をじっと見、アオくんが考えながら話しだす。
「この、行く先の国って、飛行アイテム先進国ではなかったでしょうか。転移魔法を覚えるに越したことはないのですが、こればかりは素養とかがあるので何とも言えないですよね」
「そうじゃったか…?」
「そうですよ。転移が使えてしまうと必要がないでしょうが、その国にも拠点があるのですから、ちゃんと覚えていてください。あと僕にもそろそろ転移魔法のコードください」
「あそこは!ごはんが!美味しいのじゃ!あとアオ、お前に転移魔法…ああもう、あとで考える」
魔女さんはちょっとむくれる。いや、かなりむくれる。
「では、次の目的地はここに決定しますから、■■様の力がチャージできたら教えてくださいね。では、ういの散歩しつつ、チーズさん宅に帰りますね」
そう言い放つアオくん。一緒に王城を後にし、徒歩で時間が動いている自宅へ帰宅した。




