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第49話 ナット『救国の魔法使いの来訪』(1)

 城の大広間に移動し、私がどさくさに紛れて回収したナットの調度品を一気に開放、並べた。どれだけこの国が国策の失敗からとはいえ、貧困にあえいで手放すべきではないものを手放したのかがわかる、美術品から豪奢な家具、日用品に至るまで、輸出産業を通り越した、買い叩かれた搾取の跡が、見て取れた。


 二次輸出も結構されてしまっていたようで、実際放出した量から考えると私が回収してきたもののは、総量の十分の一以下だという。


「これで全部だね、国の中のあるべき場所へ戻すよ!」

 救国の魔法使いはふわっと大きな古木で作ったであろう大きな杖を振るう。そうすると、私が持ち込んだナット産のものたちは、ふわっと姿を消した。


 1つの銃を残して。


 それは、魔石がたくさんはめ込まれた飾り銃だった。

 

「いま君は武器がないのだろう?それほど強くはないけどそこそこ丈夫な飾り銃だから、急場しのぎにはなるだろうから持って行くといいよ」


「えっありがとうございます」

 本当にキラキラして、多種多様な魔石が装飾された銃。ものすごく嬉しかったけれど、場所が場所だけにさっそくの試射はやめておいた。 

 

「君がこの国に再び持ち込んだこの国の産業がつくりだした物たちは、この国にとってあるべき場所へ設置したので、【凍結魔法】が場所により不安定化したり、ほころびが起きる状況が少し改善できると思うよ。今後も買い戻し等による入手を積極的に行いナット国内に持ち込み設置することで、【凍結魔法】をより安定させることができて、再興までの時間稼ぎが可能となるわけ。気にかけて復興に挑んでね」


 そう言い、物凄く柔らかくほほ笑む。さすが人呼んで『救国の魔法使い』、この国が置かれてる状況で改善可能なウイークポイントを見抜き修繕するまでのアドバイスが的確過ぎて、確かにこれならばぼったくりでふっかけられても納得して支払ってしまうかもしれない。


 いや、魔女さんがぼったくりって勝手に言ってるだけかもしれない。いやどうだろう。


 しかもこの魔法使い、なかなかの自信家で、「僕は仕事ができるからね」だそうですよ。


 その様子を見ているモヤ王も表情はわからないものの、嬉しそうに感じられる。アオくんとイオくんも『凍結の魔女』さんとは違うアプローチの魔法に真剣だ。


「あと、ナットの【凍結魔法】が不具合を引き起こすに至る大きな原因がもう一つあるんだ。わかってるかもしれないけど、時間がとまりっぱなしな君の家だよ。異世界の君」


 振り返るとふわっと袖が揺れ、シャランと飾りが鳴る。


「牛たちを置いて長期外出することが直接牛たちの健康を害すことをよく知っているからこその恐怖があるんだろうね。君の持つ【時間干渉】がフルに稼働しちゃうんだろう」


 確かに、牛は一日搾乳しないだけで健康を害す。しかも牛だけじゃないんですよ。鶏もいるんですよ、鶏。しかしなぜこんなにこの人は私の世界の動物に詳しいんだ。

 

「解決してあげられるかもしれないから、家に招待してもらえないかな。ちょっと異世界の式と■■の召喚時使った式と、君の式が絡みすぎて意味不明なぐらい渦巻いたまがまがしさが君の家にあるんだよ。なんでこうなったんだか」


 正直に言おう、知らんよ。

 

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