第46話 ナット『凍結の魔女の憂鬱』(1)
ナットには無事帰還。
帰還後、早速王城の応接の間に呼ばれ、王様と魔女さん、イオ君との再会となった。そこで目にしたのは苦虫を嚙み潰したような顔をした魔女さん。美少女ビジュアルが台無しである。
「あ~~~あいつのこと思い出せなくしていたのに!!タイミング悪くドラゴンの厄災が起きるとか!わたしが一体何をしたというのか!!」
謎なぐらいに魔女さんが嘆いている。
足跡を追われないようにしてほしいという要望どおり、移動に魔法を使わずに帰ってきた。そして、冒険者ギルドランクEになるための狩りはナットの中でできるだろうから、しばらくナット国内に滞在して、この国の中をちゃんと見るのも悪くない、と思うので私の気持ち的には問題ない。
「正直、『救国の魔法使い』については説明したくもないんじゃが、急に魔法を使わずに帰ってこいとか言っちゃった手前、お前たちに説明しないということはできないということは、重々理解しておる」
「なるほど?」
横で弟子らしからぬ態度でアオくんが腕を組み、師匠である魔女さんの話を聞いている。私はというと、来たばっかりだし言われたとおり動くのが限界なのもあるので何とも実は思っていない。
「簡単に言うとじゃな、『救国の魔法使い』はもう覚えていないぐらい昔、once upon a timeといっていいぐらい前、同郷かつ同時期の生まれであることから縁が発生している正直言って腐れ縁、しかも家が隣同士という、まあ、幼馴染というやつなのじゃ」
そこで入った「ancient timesの間違いでは?」とイオくんの突っ込みには、「誰が古代じゃ!」と魔女さんのどつきが入った。
そして気を取り直したように話は続く。
「幼少期はほら、女子の方が成長が早いじゃろ。そのおかげで結構お姉さん風をふかせてあやつの面倒をみてたのだが、わたしの故郷では子どもが産まれるのは相当まれでな、年近いのがあいつしかいなかった。因みにわたちたちの前に産まれた同族は百年ほど前といった感じじゃな」
「百年とかいうと私の世界ではひと家庭でも4代前後かわりますよ?!」
「長命種という、まあ、そういう一族だから誰もかれものんびりしてるんじゃ」
ほう、なるほど?……理解の及ぶ範囲はこえているので、そういうものとして咀嚼するしかない。
「子どもの頃は二人で村の洞窟を探検しにいって叱られたり、山にトンネルを掘って開通したり、魔法を暴発させて家を5軒ぐらい消し飛ばしたりまあ、いろいろなことを一緒にやっていて本当に楽しかったのじゃ」
「やんちゃが過ぎませんか二人とも」
「そんな子ども居たら嫌だ」
「勘弁してほしい」
双子とモヤ王がそろってボロクソに言う。私も言いたいところだったけどぐっと我慢した。オトナだから。
そして、魔女さんは続ける。
「わたしたちの両親たちは完全に我々を手にあましたようで、6歳ごろ二人そろって下界…じゃなかった、この世界の寄宿舎型魔法学校入れられた。そこではわたしたちは成績は常にトップを走り、それにあわせて危険な実験と探検を繰り返し、新たな素材や資材を見つけ、かつ先生をおちょくることも忘れない、我ながら手に負えないガキだったと思うよ。そしてまあ、二人ともよくモテた」
「モテたとかそういう話はいいから」
「続けて」
アオくんとイオくんの表情がどんどんなくなっていく。
「チーズ!弟子が冷たいんじゃが!」
わからないでもないですよ、魔女さま。
「大体10歳ぐらいになった時に、基礎魔法は満遍なくつかえるようになり、そのぐらいに適正魔法の鑑定方法が発見されたので、鑑定をしてみたら、2つの特殊魔法特性が見つかり、あいつにもわたしとは別の特性で2つの特殊魔法の特性がみつかったのじゃ。」
「特殊魔法は基本秘匿事項だから口を滑らさないでくださいね」
「僕たちは知っていますが、だれかれ構わず言うことじゃないのわかってますよね」
突っ込みがとどまることを知らない。
私は聞いているうちに本題を忘れそうだよ。




