第343話 バナクコート(22)
マガキ城。オイスター国の王城で、やっぱりというか、オイスター城とも呼ばれている。建築様式は石造り、装飾は少なめで無骨な感じ。情報として知ったシラタマ王が幽閉された場所を加味すると敷地は東京ドーム1つ分に匹敵する大きさ、だと思う。いや、ドームに加えて東京ドームシティ分ぐらいもあるかな?
「シラタマ王から王命を賜り伺いました。私の名はチーズといいます」
「ようこそ、マガキ城へ。お待ちしておりました。まず、本人確認をさせてください。こちらの石板に手をかざしていただけますか」
「わかりました。連れの者はどのようにしたら?」
「お連れの方の認証は不要です……はい、確認できました。ただいま案内の者が参りますので今しばらくこちらにかけてお待ちください」
「承知いたしました」
そう言い、石造りの冷たい石に座ると、左右に天とテミスも座る。表情は護衛然として抜け落ちている。整った顔、キラキラした夜空のような衣装も相成ってドラマの中みたい。
マガキ城のセキュリティは門番とステータスボードの情報確認。本来であれば個人情報を解析でごっそり抜かれていくところだけれど、冒険者ギルドパスさえあればそこについてはギルド登録準拠となり、私の『チーズ』という名前でも大丈夫、ということになる。天くんとテミスについては私の冒険者ギルド登録を介し、同行者として登録することで問題がない、ということらしい。
しっかりしているんだかザルなんだか良く解らないシステムだな。
ついでに言うと、今回のステータスボードへの干渉について、なぜかモニタリングシステムを構築していたシンさんも同時に監視してくれている。もとい、やりたくてやっている。
監視とはいえ、シンさんのシステムをもってしても私のステータスボードはほぼほぼ見せて良いと公開している部分までしか見れないことは確認している。というわけで、本当に干渉・探知特化、というわけだったり。
そして今回、通常商人が王族に直接謁見するなんてことは、特例中の特例となる。そこまで特殊な事例となった原因としては「シラタマからの口利き」「ほかに見ないものの展示・行商」との触れ込みによるもの。
具体的に言うと謁見以外にも、シラタマ王家の王権により、今晩1日間以上の逗留予定がすでに取り付けられている。
シラタマ王が一体何をやったのかはわからないけれど、自分の誘拐ほう助をした国に対してであり、それなりに圧力をかけた可能性も否めない。そして「1日以上」となっているという事は、こちらのアクションと品揃え如何で日数延長ができる余白が残されている、とみて良い。
全く関係ないけれど、シラタマ王みたいな高身長、男装の似合いそうな麗人、この世界でもそんなにはいない。美女からかけられる圧力、一部の人にとってはとってもご褒美になりそう、とか考えてしまうなあ。とか考えていたら、案内の声をかけられた。
「お待たせした。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
「ご存知かと思いますが、この国は国王が薨去されたばかりで喪に服しておりますので、平時の装飾等は取り払われておりますため、殺風景ですが、お気になさらず」
「もちろんです、このような場を設けていただいたことが、僥倖でございます」
こんな王城の職員と時代劇の狸の化かしあいみたいなことができるとか、物語に突入したみたいで、異世界転写って結構楽しいとか思ってしまう。楽しいよ、転写もとの私よ。ニヤニヤしちゃうよ。
そして引き続きなかなか強そうなオーラというか気合を纏ったまま、私の後ろをびたっと同距離を保ちながら、天くんとテミスはついてくる。これについてはノリさんが「出来るお付きの人に見える仕草」として、レクチャーしていたことによる成果だったりする。
「現在王が不在となっておりますので、本日ご宿泊されるお部屋にご案内後、謁見の間ではなく前王弟陛下の執務室にご案内します。」
「それは……」
「ご存知かもしれませんが、来月戴冠式が行われるまでの間、執務の代行は前王弟陛下がなされていますので。前王妃も立ち会われます」
「わかりました」
前王弟への謁見が執務室というのは、わからなくもない。ただ、お付きの人はいるにせよ、立ち会われるのは前王弟妃ではなく前王妃というのが気にならないといったらウソになる。未婚なのかな?
◇
さっきまでのんきに構えていた私を殴りたい。
これは、とても天くんそしてテミス。要するに子どもの教育にものすごく悪い状態が執務室に蔓延していた。まさかの私がポーカーフェイスバトルに巻き込まれるとは。
前王弟陛下は独身だった。それは、まあいいでしょう。
問題は今、目の前に蔓延しているエロいオーラ。応接椅子に並んで座っているのはいいとして距離が近い。太ももを密着させて隣に座ってるうえに、前王弟は前王妃のふとももを他人の面前でなでるな本当に。サブいぼが立つ。
「そなたがシラタマ王が是非にと言った商人だな」
「はい、名をチーズと申します」
「ではチーズ。我らが欲するような食品、道具を持っているというシラタマ国からの触れ込みだ。間違いないな?」
「そのように準備してまいりました。お気に召すものがあればよいのですが」
「楽しみだな?」
「ああ、楽しみだ」
前王弟と前王妃は顔を見合わせ、笑っている。そして、そこはかとなくではなく、全開でエロオーラがあふれ出ている。
いや、これ、ほぼ間違いないでしょう。
今すぐ天くんとテミスを部屋の外に出したい。ついでに私も出たい。




