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第341話 バナクコート(20)

 なかなかに美味しくできたハヤシライスを振るまった翌日朝、シラタマ王のお墨付き手形……といっていいのかな?が届き、オイスター城へのアポまでとりつけていてくれた。

 さすが元貴族の屋敷、ちゃんと掃除さえすれば、快適な寝所が提供されている、むしろ最高の環境だった。部屋数もちゃんと人数分以上あるので、


「チーズさん、頑張ってきてくださいね。しかしシラタマ王、昨日申請して今日謁見とか、限度があるというか……」

「善は急げなんじゃない?たぶん」

「トラブルが起きたら、即逃げてきてくださいね?!転移魔法で」

「ははは…最悪2人を連れてナットに戻るわ。さすがにそうはならないとは思うけど。まあ、最悪ね?」

「シラタマ王、オイスター国に貸しがありますからね。大事にしなかったという」

「あ、国側には知れていたんだ」

「らしいですよ。処分したかどうか、犯人がだれかの報告はきていない、らしいですが」

 

 イオくんがアオくんが張った防音結界をより強固に、別の他愛のない話に変換する魔法式を編んだとかで、普通に話すことができるようになった。パーティーを組んでもいいけれど、無言で過ごしている変な人にならないことを優先したことからこうなったわけで。


「ただこれ、この屋敷って庭も含んでますけど、あたりまえのように敷地から出てしまったらこの結界の効力はなくなりますので、僕たちの力の及ばないところでは気を使ってくださいね」

「ありがとう!」


 そう言ってにっこり笑ってみる。

 よし、ちゃんと笑える。大丈夫だよ?


 考え込む時間が増えた。

 感情が平坦になった。


 思い当たる節はある。しかしこれ、気のせいではなかったことを自覚した。ちゃんと指摘してくれる、気づいてくれ、言ってくれる人が周りにいてよかった。


 そう、原因は【オートマッピング(精密)】を覚えた経過にある、と分析している。

 このスキルを私に付与してきた謎の存在はとりあえず「スキル神」としておく。その「スキル神」、あのイベントをきっかけにたまに私に交信をしてくる。

 その話かけてきたタイミングで私がとる行動は、から返事をしたり、考えこんでいる、そう見えるらしい。


 加えてこの「スキル神」、突然話かけてきて突然話が終わる。幻聴かと思ってだれにも話してこなかったけれど、これ、もしかしてシンさんが日々研究している【ステータスボード】の謎案件なのかな、と思いつつ「スキル神」に聞いたらまったく連絡がこなくなる不利益を考えると誰にも話せないでいる。

 

 こういうややこしそうな御仁はあっという間にへそを曲げてる交信してこなくなる。気がする。しかも、へそを曲げたときのあたりは天災級の事件が起きないとも限らない。


 そして話かけてくる内容が実のところ、何を言ってきてるかがわからない。最初の【オートマッピング(精密)】付与してきた時はしっかり聞き取れたのに、それ以降、同じ声だというのに謎の言語に置き換わっている。


 言語としてサンプルをとるにしてもそんなに語学には自信がないし、そもそもの話この世界に転写されてこの方、言語は自動翻訳対象となっていたからもう語学については完ぺきに気にしてもいなかったわけで。

 例とするのであれば、ラジオのチューニングがずれている状態にちかいと分析してみる。もしかして「スキル神」、私へ自分のチャンネルが開いたままであることを、気が付いてない?または、わざと?


 まあ、このことについてはまだよくわからないし、相談するとしても性急、だと思う。


 となると当面の問題は私がこの突然心ここにあらず、といった感じになった時、どうにかカバーしてくれるかどうか。今はぼーっとしてるだけだけど、敵地の真ん中とかそういう場所でこの現象がおこったら、うっかりにしても命が危険すぎる。万が一が起きると、私がこの世界に転写された意味がなくなってしまう。


「天、チーズさんの護衛、頑張ってね」

「ぼく、つよいから大丈夫だよ?テミちゃんもいるし」

「いや、天はよっぽどのことがない限り大丈夫なのはわかっているよ。テミスもね」

「あおあお、もしかしてチーズのつよさ、わかってない?」


 天くんのその言葉にびっくりする。私の強さというか強みは多少はある。ほぼほぼ狙撃に関するところだと思うけど。なにかそれ以外にあったりするのかな?

 

「天くん、それ私自身もわかってないわ」

「そのうちわかるよ。たぶん名前を思い出したらね、その強さ、自分でもわかるようになると思うな」

「思わせぶりなことばっかりいってるな?まあ、私にはさっぱりなんのこと、だ」

「なんていうんだろう……覚醒だっけ?そんなかんじかなあ。できるといいね」


 吉祥の白竜(跡取り)は、はっきりとしないヒントをくれた。しかしこの天くん、見た目年齢に中身が追いついたらもう一段階育つらしい、という話はウララさんに聞いている。身長伸びてバカでかくなったりするのかな。

 いやいや、今はそういう話じゃない、本題に戻そう。


「そういえば王城に入れるような服装、何かもっているんですか?」


 そういえば当初ナット王城にはいったときの服装はジャージ。毎日着まわしているのは作業着。私のクローゼットを見たことがなければ、理解におよばないのは当たり前か。

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