第34話 ネルド『研究者ギルド』(1)
大雨にはフェス用に買ったポンチョと長靴は最強だった。
とかいいつつ研究者ギルドと冒険者用の宿の間の距離は約100メートル、どんなに荒天でもビビるほどは全く遠くない。
あと少し考えてみた結果、天気が悪い時に銃を買うのはなんかしけりそうで縁起が悪い気がするので今度にしよう。
研究者ギルドは冒険者ギルドの次に高ランク冒険者を擁しているそう。
次に比較される医療ギルドは素養とか魔法属性が大いに影響してしまうため、その次だ。
研究者ギルドの設定するランクはSランクからEランクまで。Cランクまであがれば冒険中でも【ステータスボード】を使用してポーション合成、毒消しや麻痺消し等、随時合成が可能となるため、MPが切れた際の生存率を上げるという点で必要不可欠なギルドランクといえる。
大規模小規模問わず、チーム内にCランク以上が1人以上はいてほしい、ぐらいの重要度なので第2位という訳。
さて、素材はそろっている。テストを受けよう、テストを。
あらかじめ渡された『ポーションの作り方マニュアル』を読んだ感じだと、薬草を均等に配合しすりつぶし、汲んできた水で煮だし、特殊な機械で蒸留のようなことををするとポーションが出来上がるらしい。正直計ったり温度管理をしたりそういうことは大学で学んできたし、得意技なので、早くこの世界でやってみたい。
テストの受付は随時行われている。
まず、「テストを受けたい」という意思表示をしたうえで、採取してきた材料を研究者ギルドの受付に提出する。
その後座学があり、マニュアルにも書いてあるけれど、改めて器具の取り扱い方法と、テストの方法と合格基準が説明される。
その後、個室実験室に案内され、後ろに試験官が控える。
不正防止なのか、アオくんは待合で待機するようにギルド側から指示があった。そもそも不正が可能なのかは謎だけど。
さあ、楽しい実験を開始しよう。
まず薬草2種類を同一グラム、均等に混ぜ合わせ大きな乳鉢ですりつぶす。乳鉢あるんだなあとか思いつつきれいに均等に混ざったところでフラスコに移し、湖の水を入れ攪拌。そこに微力の魔力を流しこみながら蒸留器のようなもので精製する。
そうすると、ポーションができる。
本来なら本来の質量1:ポーション1ぐらいの割合で錬成となるということになっているのだが、蒸留した先の量がおかしい。
1:5ぐらいの割合で水が噴き出る。一体どこから出てきたものか!
試験官も驚きながらポーション(仮)を採取。
「こんなこと初めてですよ。明らかに何かが混ざって増えてるとは思いますが、無から生じるのは難しいと思うので大気上の水でしょうかね」
そんなことをいいながら、試験管の一人が別室に出来たものを持っていく。
なんか全く別のおかしなものとか実際ただの水でした、とかじゃなければいいんだけど。現時点で自分の精製したものを【鑑定】することはできないことになっている。
片付けも試験の一部、ということできれいに片づけを行ったうえで待合に戻り、アオくんと合流、結果を待つ。
結果は鑑定ボードというものがあり、精製したものをその上に乗せることで詳細がわかるということ、その立ち合いは職員3人によるものという事前説明もあった。
それから5分後、呼び出しを受ける。
「ポーション精製試験を受けられたチーズ研究員、試験結論がでました。これは紛れもなくポーションです。Dランクへのランクアップおめでとうございます。登録情報の書き換えがありますので、準備が終わるまで待合でお待ちください」
とだけ言うと、手続きに必要と思われる書類を取りそろえに職員さんは去っていった。
「思いのほかあっけないね」
「実際最初はこんなものですよ。研究者ギルドはCランクまでが厳しいと聞きます。この先もがんばりましょうか」
「そうだね」
その後お役所仕事全開で、書類準備だけだというのに1時間ぐらい待たされることになった。




