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第336話 バナクコート(15)

『師匠、何してたんですか』

「お前たちがわたしたちの存在を忘れていたようだから、こちらからの通信音声を切って傍観していただけだが。そっち音声はちゃんときいていたぞ?」

『……ごめんなさい』

「素直で結構」


 なんと弟子、こちらを気にしなかった自覚があるらしい。いや、イオがこちらにいるときはイオがそれなりにアオに通信するなりアクションをとっていたから途絶えることがなかっただけか?こんなことでわたしが積極的に双子を採用しているかの本質にたどり着いてしまう。

 この世界においてこの緊急通信、思いのほか有用なわけだ。どんな妨害にも負けない血のつながりによるホットライン。実のところ一卵性双生児以外にもホットラインを繋ぐ方法はある、が、それはいろいろな問題があるといえばあるので、手段も何もかも秘匿、知っているものはおそらくこの世界に私を含めもう一人のみ、だろう。


 このホットライン、親子間や兄弟間では機能しないのもよくできたシステムではある。まあ、魔力があり才能があることが大前提となるので、双子だったとしてもだれもかれもが構わずできるものでもない。

 アオとイオが黙って相談しているのを氷那が怒っていたのをなんとなく、懐かしく思い出す。いや、そんなこと考えている場合か?!


 バラバラに切り離し捨てていた記憶を戻してから、どうもこう、無駄に思い出すとかそういう思考に脳のリソースを割いてしまうことが増えた。実のところこれがノイズだと思って切り離していた節があるのだけれど、不思議と今は再び捨てようとは思わない。我ながら謎の心境の変化。


 ただ、救国のアイツの苦手意識だけは、がっつりと残ってはいるのだけど。


 ◇


【降霊召喚】


 新たに、ほぼ強制的に覚えるに至ったこれに関しての師匠の見解は、経験として覚えるのはむしろ歓迎。ただし、此の世ならざるモノを相手にする魔法であるため、メンタルが好調な時に限り使うこと、引っ張られる可能性も考え自分の得意属性の魔法、僕で言うと炎と光魔法、重力魔法というか進化したから次元魔法であるという認識ははずさずに使用すること。そしてこの手の魔法って光魔法持ちが覚えるものなのか?という疑問には師匠は「光持ちが覚えたほうが、冥界に引っ張られない。ちなみに神聖魔法はその魔法とは別のカテゴリかつ、上位干渉魔法になるから、使うときはういを絶対に近くに置け。絶対だ」と、アドバイスをくれた。


「ういうい、アオくんを護れるんだね。ありがとね!」


 そう言ってくれるチーズさんにういはワンッと元気に答える。師匠は不必要な魔法とは言わなかった。でも、積極的に使うな、引っ張られるという見解だった。だから、万が一の場合を考えてういを近くに置け、ということらしい。

 どんなに頑張って僕が降霊魔法を編んだとしても、ういの気合の匙加減ですべて吹き飛ばすことが可能であり、清浄化してしまう、ということらしい。


 うい、強い。かつ、ありがたい。


 この手の魔法、情報を引き出す対価がでかすぎる。しかも呼び出して眷属にはできるが強制成仏はういだより。僕の実力さえあがればもうすこし使い勝手が良くなる可能性は高いけれど……それでもういには頼ったほうが良いという師匠見解。確かに中途半端に祓ったりするぐらいであれば、最初からういにお任せしたほうが複雑にはならない。

 ゼロから触るのと、誰かが触ったものを紐解くのであれば後者の手間は何倍にもなる。


「じゃあ、師匠、ちゃんと見ていてくださいね」

『そこにいるシアラとやらから習ったのだろう?わたしに聞かないほうがよいのではないのか?』

『……世界を二分する柱より私が上ということはないな、ない』


 シアラにもちゃんと師匠の通信は聞こえている、ということだな。確かに近代の王妃であれば千年以上生きている師匠のことを聞き及んでいてもおかしくない、理解も早い。名声か悪名かはわからないけど。

 

 師匠の記憶ズタズタ事件は僕たちはもうなんというか、拾ってもらった恩に加えてこういうものかという慣れがあったけれど、まったくの他人だった場合理解することは難しい。たぶんある程度理解していたのはナット王だけだと思う。

 とか考えていたら、シアラがとんでもないことを言い出した。


『凍結の魔女様は、愛する男を愛しすぎたために大切な記憶を分割して詰めて保管していて、思い出したいときに新鮮な記憶として楽しむ、と我がオイスターでは言い伝えられていたが、違うのか?』


 そこから起きたことは師匠からの通信で食器が割れる音と悲鳴が聞こえた。これはもしかしなくても、昔シラタマを訪れたときに師匠は適当言ったことが原因だろう、ってことは師匠の性格から推察される。

 問題はもう一か所だ。今通信は切っているが絶対に、確実に、見ていない訳がない。あの救国の魔法使いが。

 

 問題は、師匠の愛する男を、あの男がどう理解したかだ。何もないところかプレッシャーを感じ身の毛が粟立つ。



 そして、その魔法使いの姿が、今、ここに、現れた。


「あーちゃん、嬉しい」


 ただでも美しいその魔法使いは恍惚に満ちた表情でキラキラオーラ数倍増し、有頂天ともいえる浮かれたオーラがシアラ部屋に充満。

 

 自分以外の選択肢がないと信じ切るそのハートの強さよ。

 どうしよう、なんかほんとこれ、師匠助けて。

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