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第330話 バナクコート(9)

「通信が途絶えた。つまらんな。まあ、私がされたことを考えるとリスクは最小限にしたいことがわかるが、実につまらん。何か別の手立てで覗き見することは可能か?なあ、魔法使い殿」

「え!私?!」

「そう、私」


 眼前で謎の駆け引きといっていいかわからない会話が続いているけれど、こっちは貰ったハマボウフウの処理をどんどん進める。きっちり処理してきっちり保管。妹の【無限フリースペース】が便利すぎるうえに、妹自身が食品衛生、保存、発酵にも詳しいから、鮮度とか寝かせるとか温度管理とかそういうことに理解が深く、細かく設定したものをいくつか作ってくれていて、設定していないカテゴリのものを新たに欲したときは連絡がつけばすぐつくってくれる。マジでできた妹。ストレスとかたまっていなきゃいいけど。


「いや、さっきまで使用していた魔石モニターと比べれば像の見えかたが荒くなるとは思いますが、できない訳ではまったくないのですが」

「ですが?」


 わざとらしく肩をすくめるポーズをとるノリ。


「現地作戦中の実働部隊のリスクを最小限とするならば、こちらから干渉している様子は見せないほうがいいでしょう?」

「いや、見るだけでいい、見るだけで」

「干渉したくなったら?」

「そんなもの、【ステータスボード】を使用するにきまってるだろう。私から連絡はできないからな、お前たちにやってもらうことになるが。まあ、そもそもお前が連絡が途絶えた状態で作戦行動中の愛する人の弟子を放置する、とは思っていないのだがな?」

「……」


 俺はいったいこれは何を見せられているのだ。別に仲が悪いわけじゃないのはわかっているけれど、これ、ノリが手の内を明かすか、折れるかしない限りこの問答続く、としか思えない。

 実際のところ、世界を常にモニタリングして異常があれば手助けするのが趣味であった『救国の魔法使い』。絶対何かしているどころか見ていそう、ではある。そしてこちらからの動きがあったとき、直接こちらが動くのではなく指示を行ったとき現地組のリスクが格段にあがるのは大変理解できる。


「……王もおわかりでしょう?ノリが何か気が付いて話してくるまでは、触らないが吉ですよ」

「……わかっていてごねているだけなんだが?そもそもお前たちの力を持って探査活動をしているのであれば、痕跡なんてものはまず残らないだろうし、万が一それに気付ける者がいたとしたら、才能があるな?」

「オイスターでそれほど才能のある人がいるかどうかはわからないですけれど、シラタマ王を出し抜いて誘拐できる環境は有しているわけで、油断はできない、と思いませんか?」

「アハハハハ!そこを突くか!!勇気があるな!」


 眼が笑ってないな。確かに、不意打ちだったとはいえ、一国の王に起きていいことではないし、国の不祥事、国の間の不祥事であることは確か。

 鳥竜種側が主犯であり、オイスター国側中枢が知っているかどうかはわからないけれど環境を容認したのは確か。国への貸しがある状況と判断しても仕方がない現状。


 まあ、シラタマ側も国内で隠ぺいはしていないものの、ノロウイルス事件で公表タイミングが失われたこと、国の中でも知っているのは側近のみであること、国際問題のリスクをはらむこと。俺とノリという戦力になるカードがあったがために事なきを得たものの、この先はシラタマ側の政治判断となってくるのかもしれない。 せっかくこちらが優位に立てる交渉カードを持っている状況で、下手に動くのは全くよくない。そのことをこの王がわからないわけもなく、わがままを言っているだけだろう。


「なんだユウ、なにか見透かしたか?」

「いえ、何も。王には健やかにお過ごしいただいて、王城が正常に機能した時点で無事にお届けしたいだけですよ?」

「本当か~?本心か~?」

「本当です、本心です」


 そんなことを話しているうちに作業も終盤。この王は話している最中に作業をしていても無礼!とか言わないことは大変ありがたくもあるな。


「仕方ない、何かがあれば教えてくれ。ヒマになった、昼寝する」

「ではお部屋をお仕度……」

「ソファでいい、ソファで。じゃあな」


 そう言い残すと、本当にあっという間に、寝る体勢になる。


「シラタマ王、自由だな」

「ほんとですね、このぐらいじゃないと国の運営はできないのかもしれないですね」

「そういえば、厄災を倒して付与される権能って何なんだ?」

「それはですね……必要になったときか、チーズさんたちと合流した時に教えます」

「気を持たせるな、気を」

「これ、知られるリスクがあるものなので」

「ほ~う」


 まあ、大体想像はついてはいる。


 ◆


 再び5人で怨霊部屋の前に立つ。

 しかしもってここ最近は細かいサブミッションが連続して発生してきたのをかたっぱしから片づけている感じ、ではある。メインクエストの進行にレベル上げを兼ねたサブミッションの消化が必要、まるで『ミッション:オイスターの秘密を暴け』みたいな。


「僕の準備は大丈夫です。チーズさんは万が一に備えてういを抱っこ、天とテミスはその二人の護衛。イオは……」

「言わなくても大丈夫、伝わってるから」

「そうだね、じゃあ、やりましょう!」


 5人と1匹でハイタッチ。さあ、挑もう。 


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