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第327話 バナクコート(6)

 その洋館の中は、地球で言う中世の欧州っぽい様相を呈した、貴族の屋敷のようだった。ただ、エントランスの掃除は通路のみ、おそらくはこの先にある泊まれる部屋しか掃除していない。

 

 宿屋コーディネーターのくれた約款やっかんを読んでみると、家具を持ちだしたりすると何かが起こるのでくれぐれも変な気を起こさないように、とか、掃除をしてほかの部屋を使えるようにしてもらっても結構だけれど報酬も何もでないこと、置いてある本はその部屋であれば良いということが書いてあった。


「結論、無償だけど掃除していいってよ?約款に書いてる」

「そうなんですね、どんな塊ができるかな」

「外の草もあとでやろうか」

 

 アオくんもイオくんも掃除魔法のやる気を出しているなあ、と瞬きをした瞬間もうそれは開始されていた。どんどん集まるチリほこり。これは時間の問題かな?と思ったところで双子は顔を見合わせ、魔法を一時停止、ここにいるメンバーを全員さそったパーティーを無言で組んできたので承認する。


『この家、何かが居ます。たぶん、ういが一撃にするアレです。だから宿泊する人がいないのかも』

『そして音声伝達魔石が仕込まれているな』

『盗聴器?』

『とうちょうき、とはなんだ』

『こちらがわの会話を遠くから盗み聴くためのものだよ』

『わかった。じゃあ、壊す?』

『いや、怪しい動きをするとなにかもっと良くないことが起きてもめんどくさいし、放置しようよ。会話はこれで足りるよね……あ、シラタマ王』


 チーム年少、さすがに盗聴器という言葉を知らなかった。当たり前といえばそうだけど。そして、絶対通信再開するつもりでワクワクしてそうな美しきシラタマ王が思い浮かぶ。これ、中継つながなかったら拗ねるだろう。


『どうも映像まで送れる魔石の設置はなさそうだから、音だけ遮断するか、別の音を流すか、何かしらの対応をすれば問題なく過ごせるかとおもうんですよ。ちなみに設置してあるのはエントランスと宿泊できそうな部屋、そして禍々しいオーラを放つナニカが居る部屋ですね』

『じゃあ、掃除終わったらういと一仕事しに行ってみる?』

『それもいいですね。ではとりあえずここのどこの部屋も使えるようチリほこりを除去しますね』


 そう言うと双子は一時停止していた魔法を再開。みるみる集まりどんどん固まり、結果1メートルほどの大きな球ができた。ゴミありすぎでしょ。


 ◇


「ゴミの塊、庭に埋めます?」

「庭なんてあるの?!」

「そもそもがここまで圧縮している……あ、そうだ。アオお前さっきやった水ぐらいの圧縮度、再現できるか?」

『ああ、あれ?やってもいいけどまだ使いこなし方があやしい次元魔法絡んでるから条件が揃ったら余計なものまで巻き込んで吸収して消滅しかねないと思うんだけど。最初は何の問題もないことだと思っていたのになあ』

「……やめとくか。1か月限定の借家でやるべきではない、か」

「そゆこと。水の圧縮は何も考えないでやったけど、今この家で圧縮して何かしくじったら結構怖すぎるかも」

 

 ここまで立ち話。掃除しているのがベッドルームとエントランス、そしてその2か所にミーティングスペースは、おそらくない……。


「ごみの収集あればそれで出すのがいいんでしょうが、この質量のもの持って行ってくれるんでしょうか。重いし硬いし」

「どうだろう、物は試しで小さい袋にちょっとずつ、というふうにしてみる」

「どれだけかかるかわからないですよ?元の量に戻ると……いや、固めなければいいのかな?もう固めちゃったけど」

「とりあえず外においておけば?外の草刈りしてから考えようよ」

「じゃあそうします」


 そう言うとアオくんは玄関横に1メートルある大きなホコリの塊を置いた。もうホコリなんだか土なんだかわからない。巨大な磨いていない泥だんご。


「ホコリって日数経っていくと土みたいになりますよね……この家結構使われていなかったんでしょうね……」

「ところで掃除したら、噂の禍々しいナニカ、怒ってるかも」

「行かなきゃ危害がないのか、敷地にいたら危害が及ぶのかはわかりませんが、どうなんですかね?」


 その言葉を聞き、そっと【無限フリースペース】から勇敢なういを出す。すると待ってましたとばかりワン!ワン!と、2回吠える。空気がピンと張りつめて、ちょっと重苦しかったこの屋敷の空気が正常化したきがした。

 ここ、マジもののお化け屋敷だったりするのだろうか。


「あ、なんか対象、怒りの波長が委縮した波長に変わった」

「うい、今吠えたのどういう意味……あ、そうなんだ。ありがとう。やっぱり屋敷まるごと浄化できますね。ただ、ちゃんとその相手の姿をみてからしたいみたいですよ?」

「わざわざ対峙したいとか、なんでそんな勇敢なの?うちの子は」

 

 その言葉を私が言うか否かぐらいのタイミングでういは屋敷に戻るように促してくる。私の歩調にあわせてビタっとくっついて歩き、しかも殆ど吠えないこの子が先に歩き、またワン!と吠える。


「討伐に行くからついてきて、だそうですよ?」

「うい、すごいね~。ぼく、強そうなアンデッド?初めて会うんじゃないかな?」

「シラタマで怪異にあってるでしょう?天くんもテミスも」

「そういえば、そうだった」

「確かに」


 勇敢なお犬様に随行する人型生物が5人。そもそも今回、遠隔で一撃必殺をしないういはいったい何を考えているんだろう。いにしえのホコリや薄汚れた壁紙。そこここに張っていた蜘蛛の巣、まるでゴーストハウスから一転、綺麗になった屋敷の中、1階の階段裏の突き当りの倉庫の手前にういが立ち止まる。

 ここなんだろうな。

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