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第319話 ハリギリの風(8)

 両手を前ならえした状態でそのマグマの塊は起き上がった。赤黒く、継ぎ目からはマグマの流れが見える。そして時々噴き出している。

 距離はまあまああるけど、熱はそれなりに感じる。

 これはもしかしなくても、さっきの低速歩行からの空飛ぶ石灰より、早期決着を目指さないとこっちも削られる可能性があるってやつかも?


 さあ、ここからが正念場、というか、なんとかしないと防衛手段をどう考えても持っていないマガキが壊滅する。いや、実は持っていたりして……いやないか……大きな砲撃とか……。

 反撃手段もなくただのうのうとしているものかどうかが疑わしいといえば疑わしい。

 

 正直なにかしらこちらへの偵察とか、接触とかあってもいいところなのに本当に、恐ろしいほどに何もない。いままで訪れたナット、ネルド、アトルそしてシラタマ。そこそこの治世が行われていたことが少しの期間だけだけど、わかった。


「私たちが戦っているこのこと自体が娯楽として消化されていたとしたら……」

「今のところこの国に接触したことがある人が言うにはその見解になっていることは間違いない、ですね」

「オレたちもオレたちでステルス魔法と合わせ技で戦ってるから、傍目には勝手にだれかが攻撃して削ってるようにしか見えない可能性すらある」


 上空を見て天くんが手をふる。相互モニターを繋いでいるシラタマ王が手を振り返してくれている。なんだかんだやさしげ。

 

「ぼくたちのことをちゃんと捉えて観察できてるのはノリ兄ちゃんとあともう一人、かなあ」

「ああ、僕たちの師匠」

「あたり!」


 わかっていたことだろうに微妙に動揺した救国の魔法使いがモニター越しに見える。そこできょろきょろしたところで捉えることなんてできないだろうになあ。


 そんな話をしながら観察していたアルティメットマグマティックドラゴンがゆっくりと立ち上がる。おそらくはタイミングは一瞬、ここの一帯をこえて歩みをすすめたら間違いなく、森林が燃える。

 森林が燃えると、ハギとフジにも影響がでる、確実にしくじれない。そういえばあの二人は今何をしているんだろう?ハマボウフウの下処理の準備しながらワクワクしてたらどうしよう。


「チーズさん!動きます」

「進行方向、問題なさそう。位置につくね」


 もともとといえば害獣対策でとった狩猟免許。これもう、狩猟超えてるよなあ。

 コピー元の私、元気に人生歩んでますか。コピー先の私は一生触ることのないとおもっていたファンタジー銃器を手にしてマグマの塊と対峙しているよ。


 標的に集中、している。ランチャーの方向も照準をあわせ、タイミングを待つ。ここにきてみんな無言、集中する。しかし集中力が高まると、時間がとてつもなく長く感じる。ここで集中力を切らさずに、標的とタイミングをあわせて、撃ち込むしかない。


 動くアルティメットマグマティックドラゴン。

 正しくは動いた、ではない。しゃがみ込み、斜め45度、測ったように地を蹴った。きっとそのまま飛ぼうとおもったんだろう、とおもう。


 結論は斜めに飛び出しものの距離も稼げず倒れ、カルデラ湖外にボディ全体で着地した。すごい地鳴りがあり、あわせて轟音も鳴り響く。


「ええ~……鈍い……」


 あまりのことにぼやいてしまった。照準はずらしてはいないが、位置的にはちょうどいいポジションには差し掛かってはいるけれど倒れてる時点で標的としては弱い。立ち上がったところで、しっかり撃ち込んでカタをつけたい。


「チーズさん」

「立ち上がったタイミングで撃ち込む」

「わかりました!」


 そう言うとイオくんの魔力が上がった、と思う。水球をランチャー発射に連動するように、最終調整をしてくれている。異様な質量の水を連れ立って飛ぶランチャー、重さで失速しそうではあるけれどそこについても対策を講じてくれているって言っていたので信用する。

 私は照準をあわせ、叩き込むだけだ。


 標的が大きい。でもやはり今マグマ魔人になっているアレをみると、一番効果的な照準は胸から腹にかけて、一番マグマが対流しているあたりだろう。炎の噴き出しもそのあたりが一番多い。


 ズズっというよりむしろぬるっと、アルティメットマグマティックドラゴンは立ち上がる。流動形態ではなく、頭部分は頭部分として機能、定着しているみたい。


 さあ、もうすこし、もうすこしだ。


 ◇

 

「おうおう、みんな頑張っているね」

「しかしここは暑い、もとい熱い。あ、集中したままでいて。ここで失策したら主様に叱られる」

「いや、叱るか?何年もこっちに来ないのに」

「ああ、どうだろう」


 背後に転移魔法の魔力のうねりが生じたとおもったら、2つの気配が現れた。


「ハギ!フジ!なんでここに!」

「主に頼まれた。お前たちの作戦は正解だ、でも少々持つ属性の相性がわるい」

「というわけでだ。ちょっとばかりのお手伝いをしにきたというわけさ。あ、テミスさん、主から聞いている。そうおびえずとも隠れずとよい。貴殿が危害を加えないように我らも危害を加えない」

「ふりかえらず、タイミングを狙い集中して」


 視力強化が進化したのか、どんどんクリアに見えるレベルがあがってくる。


 よし、今だ。

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