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第291話 ボレイリョウ(10)

 そこに書いてあった文字はものすごく少なかった。


 影武者がやられた 王は無事


 どういう事だろう、これをわざわざ僕に言ってくるということは、王宮から直にあにさんたちに連絡が取れないと言う事だろうか?


「なになに?何かあった?」

「ちょっとシラタマ王宮の知り合いから連絡があって……ちょっとあにさんに連絡とってもいいですか?」

「いいよ、後片付けはこっちでしとくから」

「ありがとうございます」

 

 心臓が本当に耳元で脈打っているようだ。

 

あにさん!無事ですか?!」

『アオか、何かあったか?って言うのも何か。ちゃんと把握してる。王は先行帰還していたから無事、しかも、影武者帰宅の時点でお忍びでミルクスタンドに来ていた』

「えええ?!ほんとお忍び好きですね?!」

『お前たち兄弟に会ったっていってたぞ。っていうか今もここにいる』

『はろはろ~!達者か?なによりなにより』

「今オイスターのカルデラ湖付近の温泉に行こうと向かってる最中だったのですが、コウコさんから連絡が入って」


 あにさんは一呼吸置く。そういえば面識がないのかコウコさんとは。通信の向こうで王がコウコさんについて説明している声が聞こえる。


『理解した。で、こちらの状況としては、王の影武者が帰国と同時に呪いが発症した』

「もしかして……」


 思い浮かぶのは姉がほぼ受けたナット王への呪い。姉の髪の色を変え昏睡状態にし、王をアンデッドにした紅鳶べにとびの呪い。あれの解呪のために僕は結構勉強はしているが、まだ糸口すら掴めていない、天才の所業。


『そこまで複雑なものではないよ。ただ、おなかを壊してるだけで』

「おなか…?」

「兄さん、それ、ノロウイルスじゃないの?!」

『お前、秒で見破るなよ!!……王が遊びに来たままここに滞在しているのは完全に感染防止だな』

「あ、ノロウイルス感染症っていうのはノロウイルスに感染した牡蠣を生で食べた時に発症するよ!だからさっきみんなで食べたときは全部鑑定してウイルスに感染してないこと確認してから食べてるから安心して」

「えっ何も見ないで食べた……」

「運が良くて良かったねテミス……」


 影武者には毒見がいないから感染したのかな?いやいやいや。まさかな?


『帰り際にみんな揃って牡蠣を食べてだな、仲良くもれなくあたったというわけだ』


 食事の後片付けをしているチーズさんがものすごく酷い顔をしている。信じられん、なにしてんだ、ぐらいの酷い顔だ。


「せめて加熱さえすれば…」

『知識のない人間には仕方ないんじゃないか?』

「その理論でいくと無知で食べてアニサキスにやられてそうなんだけど。シラタマって海洋国家なんだよね?……本当に海洋国家の人?」

『はっはっは!耳が痛いな!お前の妹は手厳しいな!』

『申し訳ございません……でも俺もちょとかなりそう思います』

『食に貪欲兄妹ってことが垣間見れるな本当に……』

「それってコウコさん僕に緊急連絡してくる意味ありました?!」


 かなり呆れすぎて、脱力してしまう。僕の心拍数が上昇した意味がなさすぎる。


『ないな、栄養管理や脱水の管理はアドバイスしてるからまあ、問題ない……いや、なくもないか。結構みんなキツそうだと思う』

『アオ、多分な、コウコは万が一の感染を避けるために1週間図書館から外に出られなくて暇だっただけだとおもうぞ、悪く思うな。アイツ友達がすくないから連絡する相手がアオしかいなかった可能性すらある』


 何気に王、酷いことを言っている。まあ、コウコさんは王の側近に近しいレベルまたは側近を越えるレベルの機密を握ってそうなので、友達が少ない方がリスクが少なくて、まあ、ちょうどいいところにいるんだろうな、とも思う。まあまあ酷いな。


「要するにコウコさんは暇ってことですね?」

『王宮はほぼ立ち入り禁止に近いからな、この先約1週間』

「そして王はあにさんの作る料理を食べれる、と。おめでとうございます。食べたがっていましたよね」

『……フフ。甘いな!実は食べたくて口説き落としに来てる最中に影武者たちが帰還してな、そのまま王宮出禁になってしまったのさ!狭くて小さい部屋もあてがわれているが結構楽しいぞ』

「状況はわかりました。では、コウコさんに連絡しておきますね。また何かありましたら通信させていただきます。ありがとうございました」

『またね~!!』


 通信が切れた。切れた、が、なんかものすごく釈然としない。


「シラタマ王家って自由なんだな、楽しそうだったな」


 今の今まで黙っていたテミスが突然口を開く。そういえば通信の間、今回は映像展開しなかったけれど、通常の画角の範囲外にいておとなしくしていた。


「テミスこそなんで隠れてたの?」

「私は悪目立ちするからな、人の王家の人間なんかに姿を見られたら最後、なにがあるかわからないからな」

「警戒するほどの何かがあったの?嫌なめにあったの?」

「私と普通に接してくれるのは、チーズだけってことがわかったってこと。容姿とええとオーラ?からものすごく避けられる。うっかり占卜に詳しい人間がいた場合、人間じゃないことがばれる」


 まあ、テミスって見た目確かに魔族といえば魔族まるだしだもんなあ、とふんわりと考えながら眺めていて、そこから1時間後ぐらいにコウコさんに返事をした。

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