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第287話 ボレイリョウ(6)

 3人の名前は一番年上と思われる少年が先ほど名乗った風雲ふううん、もう一人の少年が瑞雲ずいうん、少女は雲霞うんかと自己紹介してくれた。意外に友好的で集落の開けた広場で話を聞くに至った。その間にここに住む人たちが普通に挨拶してくれるし、敵対心もないし、あれだけ警戒した分、拍子抜けだった。


「ここ、小さい集落だから閉鎖的に思われがちだけど、港町だからそんなことは全くなくて、人の行き来と流通は多いんだよ。お店はないけど!だから警戒しなくて大丈夫、危なくないというか危害は加えないよ?」

「大人が交易はしているけど、牡蠣の輸出とか加工品つくったりとか、そういう産業で成り立っているしね。とても平和だよ?」

「なんでこんなに穏やかかというと、ギルドのクエストあるでしょ?1年ぐらい前かな?村の大人が商人ギルドに呼び出されてね、冒険者ギルドのクエスト納品システムが[オイスター]の商人ギルドでも使えるようになったと言っててね、手数料は先方上乗せになるけれど、ギルド経由の納品も可能。納品してお金になるの。だから余裕があるんだよ。面白いよね?」

「……え?もうちょっと詳しく」


 今まで生乳の販路とか限定的な感じでやってきたけどこれ、もしかして、外貨獲得のチャンスだったりする?!


「食品だから資格持ってる人じゃないと販売許可下りないんだけど、詳しくは商人ギルドに聞いてみるといいよ。なにか売りたいものがあるのかな?」

「あるある、とってもある!あ、でも現在加工とかしてるのは兄なんだけど。もうちょっと余裕ができてきたら私も加工食品作り始めたいと思ってるの!」

「確か登録単位は町村または供託金を納めることができる個人で、オイスターの先行実施とかいっていたはずだから、そのうち国内、国外に広がっていくといいよね」


 外貨獲得が困難であることが一瞬でわかってしまった。まあ、広がりすぎると貿易商が困る可能性はあるし、よく地方先行実施とか先行販売とかあるけど、この世界でもあったりするんだ。道理でそう言う商機に敏感な兄からそんな話を聞かなかった、というか、シラタマにはないから知り得る環境になかったってことかな。

 まあ、現状商売は兄に任せておいた方が安全か。私に突然付与されたスキル、【オートマッピング】発生の謎も記憶がまったくなくて知りえないし。


「そういえばね、来訪者といえば昨日かな?遭難してきたこの辺でみない人がいるんだよ?」

「しかもね、飢えていたのかボレイリョウで牡蠣を大量に食べてライムリザードを10匹も呼び寄せたんだよ。無茶だよね?」

「しかも全部ワンパンで倒すの。空に次々ライムリザードが跳ね上がるからね、面白くて見に行ったら女の人が満腹で寝てたんだ」


『ライムドラゴンとしか戦ってないけど、ライムリザードってワンパン効くぐらい弱いの?』

『いえ、ちゃんと強いですよ。多分チーズさんだと単独は困難だと思いますよ?』

『ぼくは戦える?』

『天くんはいけますね……天くんほど強い女性って……』


 みんなたぶん、同じ人物が頭に浮かんでいる。いや、アレはシラタマにいるはず。気のせい気のせい。


いかだ作って海にでたら沖に流されてここまで来たっていってたよ。ここって色々な海流があつまるんだよね?」

「あ、いたいた。おーい」


 雲霞うんかが声をかけ手を振ったと同時に一瞬背中の方から過去感じたことがあるプレッシャーを感じる。

 ああ、わかった。皆、予感は正しいよ。


「誰かと思えばチーズか!チーズじゃないか!ここに温泉はないぞ!!!ただ、牡蠣は旨い!」


 明るく大きな声が近づいて来る。


「テミさん!この方とお知り合いなんですか?」

「温泉同好会の同士だよ?」

「温泉ですか?なんですかそれは」

「掘っていいか?なあ、チーズ。この地脈にあるかな?」

「……やめて。地盤の調査もしないで掘って事故ったらどうするの…あと施設作れる技術者いないよ…?」

「それもそうか……フフっ久しぶりだなあ。忘れてなかったか?」

「忘れるわけないじゃん」


 暫く会っていなかったけど本当にノリから変わらない。笑っていいのか怯えていいのかがわからないけれどとりあえずは好意はありそうなのでそこには甘えておかないと強制バッドエンディングを迎えてしまいそう。


「まあ、温泉というのはな、地面から出るお湯のことだよ」

「お湯?!あ!川が熱いみたいなかんじ?」

「随分具体的だね、瑞雲ずいうん

「だって、あるから。ここから大体6時間ぐらいかけて登った山の近くに流れている川、熱いよ。その川の下流がこの辺ではないから、影響ないけどね」

「お湯が流れたら牡蠣が煮えちゃうよね?」

「うん、煮えちゃう」

「ほら、ちょっとだけ見えない?あの、ちょっと土っぽい見た目の山。煙出てるやつ」


 そう言われてみると、遠目に赤茶色の山が見える。これ知ってるよ、活火山でしょ?まるで昭和新山じゃん。これ麓に湖があって有珠山もあるやつでしょ?


「ここからは見えないんですが、麓には湖がありますよ?」


 ほらやっぱり。カルデラ湖がある。


「ねえ、チーズ!ONSENだって!行こう!!」

「え、今から向かうってこと?!」

「うん」


 目を輝変えるテミス。後ろを振り返るとアオくん、イオくんが頷いていた。天くんはそれを真似して頷いていた。

 マジか。

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