第284話 ボレイリョウ(3)
牡蠣の殻を貝塚に100個分以上積み上げることで、次のクエストが発生する、と聞いている。
「何個分ぐらいあったっけ?200?」
「もっとあると思います」
「みんな準備は……いいよね」
目線をあわせ頷き、双子がコンテナに入れておいた食べた残骸もとい貝殻を、積み重ねる。
と、同時に、地響きが発生する。
容易に足元から件のモンスターが発生してくることが想像に難くないため、念のため【中空中歩行】をかけてくれた。これがまあ、悪かった。あっという間に地面が持ち上がり私が跳ね飛ばされる。
なにこれ凄い、私 飛んでる。
目測地上20メートルぐらい吹き飛ばされて再頂点に到達し、落下を開始する。
ふふ、これ、防御魔法は盛ってはあるものの、流石に痛いかな?痛いよなあ…。
「チーズ!危ないよ!」
そう聞こえるか聞こえないか、本当にその瞬間、天くんの救助が入った。
落下と同時により上空から同方向に飛ぶことにより衝撃を最低限に抑えてキャッチ、そこには昔の兄と瓜二つの顔、天くんが見えた。スピードは増したものの、ちょっと強いGを感じた程度で済んでしまった。
アオくんイオくんも足場を作り上空にあがってきて、フォローではなく、パーティーが組まれる。すこしか私、認められたのかな?
「いや、まさかチーズさんの真下から発生するとは」
「吹き飛ばされてびっくりしましたよ」
「ぼくのお手柄!だね!」
「どうもありがとう!」
そもそもの話、レアモンスター以外がでるとはおもっていない。あまりにも最近、私の異世界の君と言う立場のせいなのか、レアじゃないボスモンスターが出ない。ということは、ここもどうせ通常のものはでないだろう、とあらかじめ話していた。
そしてその予測は完全に当たり。【牡蠣の貝塚で出現するモンスターの討伐】、これは基本「ライムリザード」という、レベル300前後の体長3メートルの蜥蜴が出ることになっている。ちょうどこの前みた、レイさんの父と兄ぐらいの大きさ。そういえば、レイさん、ドラゴン体そんな小さくないけどもしかして母竜のおかげなのかな?
「あーあれ、ライムリザードどころかライムドラゴンですね。観測レベル500。まあ、ドラゴンと言うのは名ばかり、ゴーレムの亜種みたいなものですから」
「え、じゃあルーン文字の書き換えで止まる奴?」
「……?なんですか?ルーン文字って。基本ライムリザードもドラゴンも、物理です!あ、銃も雷も完全に向かないのでハンマーか【地】属性魔法つかってください」
「ああなるほど!ライムってあれか!石灰!理解理解」
地上10メートル、白くごつごつした、牡蠣の殻を集め、いびつに合体したようなモンスターが出現した。この中で一番好戦的な顔を見せているのは天くんだった。
「あれはぼくが全力だしてもいいやつだよね?」
なんとなくわかる、血族だけど一族の敵に対する制裁をしたいのに、じっと我慢したことがあったので、同族に似たかたちをしていても石くれであるこれは天くんが討伐しても特段、人道的に問題はなさそうなものなので憂さ晴らしにつかいたいのかもしれない。
「倒すのは全力出していいけど、環境保全は必要。岩礁にある牡蠣に被害があったらいやだろう?」
「それは困る。牡蠣美味しいし、また来てもっと食べたいし」
「よし、じゃあやろう。イオ!」
下でドラゴンが咆哮する。声帯もないのに咆哮できるってすごいね。
イオくんは岩礁と海、そして貝塚逆にある林を護り被害が起きないように防御結界を張る。防御結界というよりこれはもはやバリア。思い切り下で尻尾を振り回したら、バリアにぶつかり、振り回した方向と逆に跳ね返され、逆側の壁となっているバリアにぶつかる。
「ほっといても自滅しそう……さすがイオの結界……」
「さあさあ、このまま勝手に斃れちゃったらオレの経験値にしかならないから、さっさといったいった!」
「あ、うん」
「足場ちゃんとあるから踏み外さないで」
「サンキュー」
言われた先から天くんがドラゴンパンチをお見舞いする。ほえーっとみていたらアオくんもハンマーでいくらしい。
「チーズさん行きますよ!」
「がってん」
そう言い足場を駆け降りる。ほんと、こないだ貰ったハンマーが使い勝手がよすぎる状況。とりあえずしっぽが振り回されて邪魔なので破壊できないかどうか、試みることに。
上空5メートルぐらいの足場からそのしっぽめがけて奇襲をかけ、そしてすかさずサイドに潜り込み、横から上にたたき上げる。咆哮音がするものの、破壊はできてない。
そのタイミングでアオくんがネックを上からたたきつけて地面に伸びる。同時に天くんが翼に一発蹴りを入れる。正直これけっこう、相手は貝殻おばけドラゴンとはいえ、蹂躙?もしかして、いや、もしかしなくても……。うん、こういうものだ。
変に耐久力があるせいで一撃で落ちないだけで、かなり一方的な戦が展開されている。まあ、負けてはいられないので尾をおさえつつ、後ろ足にもターゲットをとる。
そんなこんなで3分ぐらい殴っていたらおとなしくなったドラゴンは姿がどんどん崩れることにより元の貝塚に戻り、私たちには経験値と白く大きな魔石、鑑定してもすべて????の謎の宝珠が手に入った。
「あーすっきりした」




