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第280話 ユガミガハラ(15)

 師匠はほんと興味があることには無茶苦茶貪欲、ではあると思う。今回も案の定というか、身を乗り出してきた。


「【オートマッピング】なんて聞いたことがないぞ!しかもレベル100と!で、どんな能力なんだ?!」

「それはですね、『救国の魔法使い』さんが解析してくれたんですけど、立ち入ったことのない国に入った時点でその国に属する土地の詳細マップが【ステータスボード】上のマップ機能に反映されるというとんでもスキルですね。マップを共有して解析すればこの世界で行ったことない場所がなくなるようなものなので、他言はしないようにって話がすでにされています」

「な!!!アイツ!!!!」

あにさんと一緒にシラタマ王の救出作戦にあたってくれたんですよ、ありがたいですよね。オレたちは今回、本当に視覚補助ぐらいの役割だったんですよ」


 今回は師匠が先に介入することは困難だった、ってことは本人もわかってはいるけれど悔しいものは悔しい様子。むくれたような表情をしているので年甲斐とかおもったりもするけれど言う事はやめておこう。


「そういえば……その時なんですけど何故かあのお二方、老人偽装していておもしろかったんですよ。コンセプトは70歳越えの歴戦の戦士と高名な魔法使いっていう感じらしいです」

「……70…?千歳を超えている奴が何を言っているんだ?」 

「一般的な人間の年齢ですよ」

「そんなわたしたちが人間じゃないみたいなことを言うのかこの弟子は」

「種族格差ですよね、一般的な見た目です見た目」


 そもそもの話、大体オレたちと同じぐらいの見た目を偽装している師匠に救国の魔法使いも言われたくないだろう、いや、言われてもあの人なら許容するか、べた惚れだもんな。


「その時の映像はあるのか?」

「師匠見たいんですか?」

「正直いって見たい!というかお前、質問に質問で返すとは偉くなったもんだな?」

「……気絶するほど逃げていた相手の映像を好き好んでみるとは思えなかったものですから」

「ああもう!記憶戻したからその辺は大丈夫!大丈夫なんだよ!」

「本当に師匠は自由ですね…ではこれですよ」


 あの時ミニドラゴンが終始中継してくれていて、それを記録機能のある魔石に記録していたために、転移してきた時点からの動画がしっかりのこっている、という訳で上映を開始した。


 ◇


 適度に早送りをしながら映像記録の全編を見終わった師匠はなんだかものすごいしかめっ面をしていた。


「あいつら、いつもこんな感じにふざけてるのか?」

「成果は出ているからよいのでは?」

「やることはやっているが、おちょくりすぎじゃないのか?」

「あれだけの経験則と圧倒的な実力があるんですから、遊びみたいなことになるのは致し方無いと思いますけどね、オレは」

「確かにそうではあるけれど、一国の王の救出作戦、しくじったらとか考えないのか!」

あにさんもいますしね……上位竜も一撃な人たちですから、一般的な尺度で考えるのは野暮かと」

「お前、あいつらのことべた褒めじゃないか?!」

「あんな凄い人たちの戦闘が見れるなんてそうそうないですから、最高の娯楽ですよ。チーズさんも「ポップコーンとコーラがいるね」って映像確認しながら言っていましたから。ポップコーンとコーラってなんでしょうね」

「知らんわ!チーズに聞け、チーズに」


 いじりすぎてキレだしたぞ師匠。失敗失敗。しかし映像記録を見る師匠が心なしか楽しそうで、切り離した記憶を戻したことで結構落ち着いたと思うんだよな。言うと怒りだしそうだから言わないけれど。

 オレたちも本番中は魔力のコントロールに注視していたから割とちゃんと見れていなくて、チーズさんと一緒に映像記録を確認をしたときにちゃんと勉強させてもらった。この2人を。

 遊んでいるように見えて常に余裕を持ち、相手の情報を最大限引き出したうえでぐうの音も出ないほどの叩き潰しをするとか、オレもそのうちできるようになるのだろうか。目標のゆく先はかなり遠いな。まあ、前衛はアオなんだろうけど。


「結局ウララ、もとい『吉祥の白竜』の後継が産まれていることは、この男どもにはバレてはいないと」

「天は怒りに震えながらも僕たちの近くにいてくれましたよ?しかも、あの2体の竜の正体が自分の血縁だろう、ということは聡すぎて察していました。生後半年でこんなことになっているのかが本当によくわからないんですが、竜種ってこんなもんなんですか?」

「あまり一般的ではないな。いまウララのところにいる4匹を見たらわかるとおもうが、成長もゆっくりだし基本数年親にべったりなんだよ、竜種の仔は。ただ、天はユウに遺伝情報を魔力に変換したエネルギーをもらっていること、吉祥の白竜の後継者としての力を受け継いでいることで特殊まっしぐらってわけだ」

「誘拐してでも手に入れたいちからをもっている、というわけですね?」

「そうよなあ……あやつらは『すべての竜の里』と言われる謎に包まれたかの国出身、ということだろうなあ。わたしの故郷同様主要20か国の内にははいっていないからな、おなじようなものだろう……たしか名前は」

「謎に包まれている国に名前あるんですか」

「あるにはあるわ。本当にあるのか違うのかは立ち入ったことがないから判らないだけで」

「そうなんですか」


「そこはな、”ユガミガハラ”にあると言われている」

「それ、国名じゃなくて地区名なんじゃないですか?」

「そうとも言う」

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