第28話 ネルド『ギルドミッション』(2)
続いてのミッションは、薬草「オオバコ」「ヨモギ」の採取で、私の世界でもよくある。いずれもポーション合成の1材料に該当し、とりあえず先に集めておこうと群生地に先ほど学んだ【鑑定:(広範囲表示,検索:オオバコ,ヨモギ)】とすることで、誤りなく取集できる。
切った薬草については【オート収納】で【無限フリースペース】に分類され蓄積されてゆく。
一気に切ってハゲ野原にしては、後続の冒険者たちに悪いので、一本一本園芸はさみで切っていく。低レベルの狩場なようなので、後続はいるかどうかわからないけれど念のため。
後からアオくんに聞いたのだが、異世界から転写された人は【広範囲表示】や【オート収納】が低レベルで習得可能となるけれど、一般的な冒険者は人によるものの[レベル350]程度で初めて習得可能なスキルとなるそうだ。
「あとポーション製作ミッションにはこの先の湖の水を汲む必要があるみたい。まだ明るいし行ってみてもいい?」
「いいですよ」
しっぽをふり駆け寄ってきたういをだっこし、ひとしきり撫でたあと【無限フリースペース】の所定の位置にハウスさせる。
慣れない異世界、何かがあったら危ないので。
「さあ、いってみよーー」
◇
そこから湖のほとりまでモンスターの襲来を振り切りつつ、マップをたどることで難なくたどり着いた。
「あれ、もしかして水汲むのって湖の真ん中の小島かも。」
そこまでたどり着くには【飛行】スキルで飛ぶか、【水中歩行】スキルで水上を歩くか、丁度目の前にある洞窟がつながっていると立看板に描いてあるので洞窟を使って目的地にたどり着くルートがあるようで、私は洞窟ルート一択だ。
湖の地下を抜けるため、洞窟の地下3階まで行き、湖の底を抜けて中央の小島にでるという一般ルートとマップに書いてある。ただし、ダンジョンとして潜行したい場合、地下10階まではあるようだ。
「チーズさんどこまで潜ります?ちょっと今の戦闘内容だとちょっと物足りなくないですか?」
「確かにちょっとスリルはないけど、レベル15だとどこぐらいまで潜れそうなの?」
「だいたい、ギリギリ5階層が限度ですが、中で鍛えればもっと潜れますよ」
なるほど。
洞窟の入り口あたりにには開けた土地があり、前に宿泊した旅の宿屋コテージとは違い、簡素なキャンプ地が設置されている。すべてセルフな野営地のようなつくりだ。
実際もう日も陰ってきたため、野営地はほかの冒険者たちも居てにぎやかになってきている。
このあたりのクエストは簡易なもの、低ランクなものが殆どであるため、初心者向けダンジョンであることも相成ってそこそこの冒険者の人数が見える。
◇
「嬢ちゃん、新参冒険者か。よろしくな。」
そう、知らない冒険者おじさんに声をかけられた。嬢ちゃんとか、漫画の中だけだとおもってたよそんな呼び方。しかも、みんな明日があるというのに明らかに酒を飲んでいる。
知らないおじさん、と言ったけれど、私の知ってる人間はナットのみんなとギルドの受付の人ぐらいなので新たな出会いは新鮮ではあるけれど、何があるかはわからない。警戒心だけは余計に持ち合わせておこう。
そもそもこのおじさん常連風吹かせているようなんだけど、ここ、初心者ダンジョンなのでは?何か特殊なドロップとか、美味しい素材があるのか何なのか。
野営地にほかの冒険者たちはテントをはっている。
私たちは今日は様子見ということでネルドにもどるか、私が転写前の世界から持ってきたキャンプ用品を【無限フリースペース】に収納してきているので取り出して悠々自適キャンパー生活をするか、アオくんと相談を開始した。
一般的にみると女子と少年のコンビなので一定以上の危機管理は必要だ。それ以外に、アオくんから魔女さんに定期報告もやらないとまずいはず。
「どうしようかな、危険がないのが一番だよね。なにより私が初心者だし」
「何かあったら大事件ですしね。戻ります?」
そんな感じで相談していた時、先ほど感じたものよりももっと近くに強い気配、ももといぞっとする殺気を感じ空を見上げる。
何かいる。
「アオくん、あれ」
声をかけた時点でアオくんもしっかり上空を見据えている。
ドラゴンというよりプテラノドンみたいな鳥?トカゲ?がギャアギャア声を上げだし、4匹ほどが上空を旋回している。
試しに【解析】を使ってみても、相手のレベルが高くて何も私には見ることができない。
このあたりは比較的安全な狩場って聞いていたんだけど。このモンスターを目的にベテラン風冒険者は狩りにきているのかとおもって視線をそちらにおくると、高レベルな人はいないらしく、総じて怯えて動けなくなっている。
明らかに私がいままでのんびり戦ってきたモンスターたちとは気配がちがう。
「理解しました。ナットが今まで張ってきた結界が凍結魔法が発動したことにより完全に”ナットに限定”されたことによりネルドが完全にノーガードになったんですよね。そのことに気づいて防護結界を張りなおせばよかったんでしょうけどこの国の人は気づかなかったのか、放置してしまったんでしょうね。今まで近づかなかったランクの敵の襲撃も想定の範囲内となってますよ」
「それは大変」
戦えるかどうか、わからないけど、そっと猟銃をとりだし弾を込める。これはもしかしなくても、対応しなくてはいけない敵襲。




