第273話 ユガミガハラ(8)
本当に誰が警戒しているのかすらわからないザル警備だった。もしくは今回のこの謀略のためだけにここが手薄になっているのか。防音魔法も防壁もなにもなく、すんなり進めすぎる。
【ステータスボード】にミニドラゴンたちの視界情報を共有し、進む。こんな機能ちょっと前までなかったきがする…まあ、便利になっていく分には問題はないけれど、開発者はなんとなくこちらの知識とか要望とかを汲み取りすぎなので見られている気がしなくもない。そのうち前の世界で得たステータスさえ見えるようになったら怖いを通り越して拍手喝采だな、とか。ナット王の側近が研究しているとかいう話も聞いているけれど、何か結果が出ているのかどうか。
『すんなり進みすぎだけどこれ、大丈夫なのかな』
『さっきの映像見る限り、自分たちの優位性で脅してそうだったから、どうにでもなるっておもってるんじゃない?』
『鳥竜種、強さ的にはドラゴンの中では中の上ぐらい、だけどね。自分より強い相手が来るとか想像していないとか、想像力の欠落だとおもうけどねえ……っと。もうすぐか』
足音がたつわけもない移動方法で移動しているうえ、気配も消している。しかも扉から漏れ出る光で思い切り明りがついているのがわかる。天の祖父と叔父、思いつきで行動してるのか?その割にはこんな問題が起きそうなことを根回しして平然とやってのけるとか、どっちにふれてるんだ?詰めが甘いだけか?
いや、まだ終わらせてないから終わってから考えよう。
これだけ光が漏れていて、声も完璧に聞こえている。そして部屋に上手く潜入しているステルスミニドラゴンのおかげで位置関係はばっちりわかる。扉を越えたところに転移しても大丈夫そうだ、ということで明度差で視力に影響がないように、直前にサングラスをかけてサクっと転移する。どうもノリは種族的な特性か、そのあたりの調整は裸眼でなんとでもなる、って便利だな。
移動した先で見たのはシラタマ王一人、そしてお付きだっただろう人が部屋の端に魔法で拘束されている。おそらくあれは呼吸はできているが、呼吸しかできていない。物理拘束だと命も危なかった可能性があるから、これは良心があったのか知識がなかったのかはわからないけれど、ラッキーとしよう。
しかも魔法拘束であれば俺でも大体解くことができるし、より得意なノリもいる。
『事が終わるまで我慢していてもらうか』
『そうだね、で、どうする?』
「吉祥の白竜の居所がわからないとなると……」
「力で脅せばどうにかなるかとはおもったが……さすが王といったところか。甘かったな」
「尋問できるようなスキルは持ち合わせていないしな…さすがにそこまではオイスター国は頼れまい」
独り言が大きいタイプなのか?話さないと思考がまとまらないタイプなのか?小声ですらなく打合せをしていて奥の木製の簡素な椅子に座る王は呆れた顔をしている。王は拘束というほどの拘束はされていないが、椅子の近辺しか動くことができないように簡易結界みたいなもので囲われていた。恐らくこれぐらいはあの王にも容易に敗れるだろうけど、そこを出たとしても一般的には倒すことが難しい竜種が2体、助けがくることが確約されている状態であれば動かないほうが得策だろう。
しかしここに来て初めて結界的なものが登場するとか、油断しすぎていて呆れる。
『こいつら、ほっとけば全部喋りそうじゃないか?』
『デカい独り言ですね』
『なんとか王だけに到着したと連絡取る方法は……アオか?』
『連絡とってみますね…………ああ、流石。私たちが出発した直後に連絡いれておいてくれたそうです。しかも潜入したら連絡が来ると思って待機していたそうです。潜入ミッションの最中に万が一気が散ったら大変だって考えてくれたそうですよ?』
『そのぐらいでどうこうなりはしないけど、ありがたいな』
『さあ、どこから手をつけたら……ああ、でももうちょっと喋らせときますか?』
『王に到着してタイミング伺ってることだけアオから伝えておいてもらうか』
『そうしましょう』
そこからは完全にスリープモードというか、くつろぎ体勢で2体の竜の話を聞く。その間王はおそらく連絡がはいっているからか、退屈そうにしている。
「まさかウララを攫うことを依頼して成功したはいいが、依頼した組織ごとそのまま姿を眩ますし、ウララを失ったことで国に戻れなくなるし」
「王がいないと国外に出ていた者は戻れなくなる、なんて思いもしなかったですよね」
「せっかくレイが王の婿になってこれから我が世の春!とおもったのに役立たずすぎたよな」
「父さんにも兄である私にも何も言わないとかレイは薄情なやつですよ」
いや、これ、雲行きがあやしくなってきた。天が怒りに任せて来そうなこといってないか。動かないとこれ、惨劇がおきる。
『そろそろ動こう』
『では、私から動きますね』
そう言うと、ノリは重力に逆らうことをやめ、足音もなく扉の内側に突然現れる。それに気が付いた、シラタマ王の視線が動く。それに気が付いた2体の竜の視線も動き、目視と同時に大きなプレッシャーをかけられる。
「お前、誰だ!!ここがどこだかわかって侵入したのか?!」
息子の方が大声をだす。威嚇どころか衝撃波が走る。
「お前とはご挨拶ですね。こんばんは、ここが『煉瓦の窯亭』ですか?」
おい、衝撃波で怯まないどころか、とぼけすぎだろう。




