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第269話 ユガミガハラ(4)

 その後は探索魔法の維持に集中力をつかう。

 

 近いところで大きな反応があったけれどそれは、今回の探索には無関係であることはわかっているので、それは無視。その無視するという指令はミニドラゴンたちにも有効になっている。

 今回の探査魔法は粒子状の魔力を使って均等にまき散らすように浸透させていく、粒子が細かいがために魔力防壁なんてものを張られていても浸透浸食が可能らしく、なんて恐ろしい探査魔法だよ。と思いつつ、ありがたく使用する。

 探査粒子を纏ったミニドラゴンたちも指令どおり散っていく。


 これは本当に敵に回したらめんどくさそう、あにさんとノリさん。

 その2人が2人がかりでどうにかしようとする紅鳶さんの遺したものの凄さ。それと対峙しなくてはならない僕たち兄弟。


 とか考えていたら、横で天が立ち上がって何かしようとている。さっきの舞踊装束をまだ脱がずにいるためになんかちょっと神職みたいだ。って何か魔法使う?白い陣?こっちくる?


 そう考えた刹那、視界が白く光る。


「あおあお!幸運値を上げる魔法だよ!きっと役に立つよ!」


 天の嬉しそうな声が聞こえたと同時に、[オイスター]全体に向け散布されていっているこの探査魔法のクリアさが増したようなきがする。気のせいかもしれないけれど、ありがたい。


 そして視界が開けると同時に、ソファーに座っているチーズさんの様子がおかしい。あまり魔法以外にいま集中することは良くはないけれど、なんか、眼が虚ろで生気がない。


『なあ、イオ、見てるか?』

『ちょっとまずそうだよな』

『あ、天が気が付いた』


 チーズさんの横に座った時に、その異変に気が付いた。こちらに向かって声をあげる。

 

「チーズ?どうしたの?あおあお!いお!どうしたらいい?!」

『落ち着いて、動かさないほうがいい。多分天の幸運アップ魔法の影響だとは思うけれど、まずういがこっちにいる時点で命に別状がある状態ではないことはわかるから、動かさず、様子を見ていて。なにか変化があればすぐ教えて』

『うん、わかった』

 

 ハギとフジもチーズさんの周りに合流。ミニドラゴンは放ってしまえば自律式なのか。いやいやいや。

 無用に心臓がバクバクする。だけど、平常心を心掛けないと。ここで失敗はできない。


 一刻も早くこの粒子が広がってシラタマ王を見つけ出してほしい。


 ああ、どうすれば。


 そう思った刹那、チーズさんがすくっと立ち上がる。

 目は虚ろ。

 

 そして僕たちの魔法の中心を指さすと何かをの魔法を撃ちこみ、また、ソファーに座り込む。そして今回もういは動かない。が、先ほどと違い【動物言語】スキルを使って「飼い主は大丈夫だよ」と話しかけてくれた。足元をみるとあくびをしながら僕の足の甲におしりをのせたういが見える。

 飼い主と飼い犬の関係、なにかあるのであれば一番に飛んで行きそうなのに。大物だな。そんなことを考えながら探査魔法に集中する。


『イオ、これ、チーズさんからの追加魔法の影響かな?』

『オイスター全域の様子が手に取るようにわかる。これ、魔法式がアップデートされている』

『気が付いた?』

『これ、王城だよな?』

『王城の後ろ…塔?』


 完全に反応する地区だけは特定できるようになった。

 それを踏まえ【パーティートーク】を使用して会話をしているけど、やはりというか、チーズさんからの返事はない。ただ、今フリーで動けるハギとフジが立ち上がる。

 今度はこっちの2人も表情が抜け落ち、抑揚のない早口で言葉が紡ぎだす。どうもこの精霊というのは何か一つに大きくちからを使うときは外面を取り繕うところから切り落としていくみたいだ。


『我らの出番が来たな。王城近くにいるミニドラゴンに集中し、他の子はすべて帰還命令』

『リソースをすべて王城近くの個体に集中』

『現地個体による近隣モンスターの撃破…………』

『映像魔石の必要数確保。アオ、イオ、王城の探査魔法にかける魔力濃度をあげてくれ。偽装はこちらで行う』

『映像魔石回路接続、映像展開』


 その言葉と同時に壁一面にさっき遠目に見えていた[オイスター城]がクリアビジョンで展開する。いつも使用している通信モニターがいくつもつながり、様々な角度で確認できるようになっている。ものすごい盗撮技術といえばそれまでだけど、正直凄い。


『シラタマ王、のいる棟はここだな…いや、棟にはいないな。地下か?』

『アオ、イオ、位置特定が必要だ。探査魔法の向きを棟に集中的に向けてくれ』

『わかりました!』


 研究好きの精霊たちの魔法の精度はあにさんたちとは別の方向性でわけがわからないが、過去一度も見たこともない魔法を付属展開し続ける。この世界、面白い人がいっぱいいるじゃないか。

 数年前までちからをつけて村を出ることばかり考えていたのが嘘みたいだ……って外壁に映し出される人物に心当たりがありすぎて声を上げてしまう。


『あっ!ちょっとイオあれ』

『まさかだろ!生きてたのか!』


 左の端から二番目、上から四番目のモニターの拡大をお願いする。

 この人たちは僕たちの探査魔法の練習台か何かなのか?とちょっと変なことを考えてしまったりもしたのだけれど、そんなわけはないな。偶然偶然。

 何より一番問題があると思うのは、血縁の天くんがいる、ということだ。

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