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第261話 浮世音楽堂(25)

 朝ごはんはエッグベネディクトを作った。

 

 正直うちの鶏ちゃんたちが私の眷属化していたせいでヒト型をとるようになったということ、鶏卵に変な生々しさがあることは否めないが、まあ、仕方なし。しかし自分の卵食料にどうぞっている鶏のメンタルの広さよ。あれか、無精卵だからいいのか?!いや、そんなわけあるか!いや、なんだろう。理解の範疇外にあってびっくりする。


「では、目的地に向かいましょうか」

「目くらましと気配消しの魔法は慎重かつ漏れの内容にしっかりとかけてから、向かいましょう」


 隠密魔法についてはイオくんとハギ・フジ組の複合でがっつりかけたうえで、転移する。転移の気配もわからないように魔力についても隠匿する。ものすごくカンがいいか、『救国の魔法使い』のように全世界くまなく探査魔法を趣味で走らせているような奇人でもないかぎり気が付かないと思う。


 そしてみんなで示し合わせたように頷き、目標地点へ飛んだ。


 ◆


 スキル【視力強化】を使い、眼前を見る。視力強化も結構漫然とつかっているおかげか、スキルレベルも10となった。双眼鏡とかを使ってしまうと光の都合こちらの場所が気づかれてしまう可能性が高いため、この私の便利な眼、マジでありがたい。

 

 目の前に広がる城、そしてその周りを囲む道路には警備、そして葬列を形成するオイスター国の軍人らしき人たちが隊列を組んでいるのが良く見える。

 音楽隊らしき人たちも城の外、屋根のある場所の下に見える。金管バンドっぽく見えるけど実際はどうだろう。あとここは結構距離があるからきっと音までは聞こえない。


 後ろでアオくんとイオくんが『浮世音楽堂』の展開を開始する。万全を期すためか、アオくんにはハギ、イオくんにはフジが後ろにつき、多重結界を展開、その中にみんなで鎮座している。

 私の横には閃閃と閃電の召還タイミングを待つ天くんがタイミングを見計らっている。イベント物見遊山と化しているわたしとは大違いだ。


 魔力の高まりを感じ、突然なにかが建った、影が発生したといったような圧力とともに、その『音楽堂』は建った。

 舞台の高さは1メートル、屋根までがそこから2メートルほどの高さで木造。多分、社寺建築。あとから聞いた話だと、魔力を流し込み、パズルを解くように拡張するもの、らしい。


 靴を脱ぎ、木で出来た舞台に足を踏み入れる。舞台部分は5メートル四方、外枠の舞台となっていない場所が2メートルになっている。楽器を演奏するのはこの舞台部分なんだろうか。


「チーズさん、今、何もしていませんよね」

「?なんで?」

「この音楽堂、外と時間の流れが違うみたいです。城の方を見ると、人の動きがかなり遅くなっています」


 言われて目を遣ると、ものすごくスロー。確かに本来の十分の一くらいの動き、に見える。


「……そうなんだ。わかった」

 

 そんな声が舞台の真ん中に立つ天くんから聞こえる。さすがに今回は探検ルックで来るわけにはいかなかったのと、衣装なんてものは持っていなかったのでなんとなくシャツとパンツで来てしまった、しかも天くんサイズのジャケットもなかったということで微妙な姿の連中が並び立っている。


「楽譜や楽器もあるっていってたけど見当たらないね」

「なあ、アオ。オレたちの才能がなさ過ぎて出てこないとかそう言うことは…」

「さすがにないでしょ。わかりやすいギミックがあ……あった」

 

 舞台の縁、外側に持ち手のようなものがあり、引くことが出来るようになっている。

 

「まあ、これしかないよな。引いてみるか」

「教える前に見つけるとか偉いな。時間があまりないからな、さっさと引くがいい」

「ハギ教官、ありがとうございます!」

「誰が教官だ!まあ、いいけど」

 

 ハギとフジは音楽堂の対角線上に陣取り、結界の維持を余裕な顔で続けている。


「では引きますよ~!」


 アオくんは勢いをつけてそのギミックを引くと意外と軽かったのか、勢い余って5歩ぐらい進んで転びそうになりつつ前のめりになった。そうすると音楽堂が1段せり上がり、舞台の下の部分に倉庫が現れた。


「なるほど?」

「扉の横にあるギミックを引くと戻りそうな感じ?」

「おそらく」

「いいからとっとと中に入れ」

 

 今度はハギに発破をかけられる。初めてのことで興味深く、時間が限られているというのについじっくり見たくなってしまう。現れた扉を開くと、白く開けて明るい。私の【無限フリースペース】もいじる前はこんなかんじ、のはず。

 ここまでの明るさは倉庫に必要がないことから私のところは照明をだいぶ落としてあり、ういがいるところとかは外の時間にあわせて明るさ等調整するようにしているのでここまで明るいことにはしていないけれど、本来はこの明るさが保たれていたんだよなあ、と、実際私は入ることはできないので、眼の奥に浮かぶ映像で場所とか状況を特定している感覚なんだけど、一体どうなっているのかわからないけど本当に便利なことこのうえない。

 という訳で今、私の【無限フリースペース】に酷似した【浮世音楽堂】の倉庫に入っているのは私と双子、そして天くんの4人。


 眼前には特に、楽器も楽譜もなにもない。というか、全くまっさらな白い空間が広がっているだけだった。

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