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第251話 浮世音楽堂(15) 

 2人の精霊は2人に向き直り、言葉を続ける。


主様ぬしさまから概要を聞いてはいる。そもそも君たちの事我らは知らないから、気が付いたらその時に伝えることとしよう。それでいいかな?」

「よろしくお願いします」


 そこまで言って、イオくんは天を仰ぎ「あーもう!もうちょっと居たいな!」と声をあげる。


「主様を甘やかすために帰らなければならない、と?」

「ははは、主は千年近く独り、たまに使い魔で生活していたからほっといてもいいんじゃないか?」

「いや、あとが怖いんですよあとが。今はいいんですけど、戻ったあとが…ちゃんと話つけれたら、戻ってきます」


「横から口出すことじゃないかもしれないけど、可能であれば永長えながにお願いしてみたら?」

「……考えてみます。では、お暇させていただきますね」


 考えなくてもあまりにも休憩なくノンストップな動き、いくら若くてもちょっとかわいそう。でも、本人は休むとは決して言わないのも真面目さなんだろう。こういう時は、もうアレしかない。


「イオくん、これ、戻ったら食べて。兄さんがくれた菓子セット!」

「えっいいんですか?!ありがとうございます」

「3つ渡しておくから、2つ自分のにして1つ魔女さんに渡して」


 兄の作る試作は試食したあとの残りはとりあえずパッケージングして「何かのときどんどん配って、味は保障するから」と言われている。箱詰めやラッピングは私が協力したものもある。現状箱にこだわれるほどの環境もないに箱にすらこだわりだしそうなのを止めて、私が代わりやっただけ、とも言う。

 お疲れ様で多く渡したよ、と、あとで兄さんに言っておこう。


 ◇


 イオくんは風のように去っていった。


「もうちょっとこの家の中を見て行ってほしかったが、まあ、仕方なし」

「近いうちにまた来るだろ。多分な」


 そう言うと精霊の2人はすっと表情を減らす。そして目をほそめ、つられたようにそろって大きなあくびをする。


「久しぶりに人と話して疲れた。もう寝て良いか?」

「お前たちには2階にある部屋を自由に使うがいい。あと、玄関から入るとあのトラップにひっかかるうえに我らが寝ていた場合どこぞかに飛ばされる。外出するときはここめがけて転移で戻るがいい」

「あと、お前たち、我らの寝室、そこにあるのだが、人間が見ると悲鳴を上げたり卒倒したりする。主様ですら眉を潜めた。別に害はないが、不快な想いをしたくなければ見ない方がいい」


「えっそこまで言われると興味がある!見てもいいですか?」

「……まあいいが、本気か?」

「本気の本気です。興味津々です。アオくんと天くんはどう?!」

「モノによりますが……チーズさんが問題ないと判断してからでもいいですか?あと天くんはこう見えて幼いのでショックを受けたら来大変なので、チーズさんが見た後に、僕が判断します」

「え~!ぼくだってきになる!でも、なにか事件起こしちゃって、お母さまに怒られたり、閃閃と閃電がぼくのところにもどってくるのが遅くなったりすると悲しいから我慢する」


 いや、ほんとあっというまに言葉を覚えたどころか会話もよどみなくなってきた。すごいのは天くん本来の成長力なのか、兄たちとアオくんという教師なのか。いや、それにしてもどんなことになっているかわからない部屋、楽しみでしかない。


「我らはそろって眠いからな、適当に見学するだけにしておくれよ」

「とりあえず、騒がないでくれな。要望はそれだけ~……」


 今にも消え入りそうな眠い声を横目に、後ろをついて歩く。

 リビングの先に廊下があり、その先突き当りに部屋があり、部屋の入口の左側に階段、その奥にお手洗いがある。部屋のドアにはファンシーな文字で「ハギ&フジのお部屋」とかいたプレートが飾ってある。昔の漫画でみたような、小さいボードに立体的に削り出した名前のやつ。っていうかこれよく見たら手で削ってる。しかも詰めが甘いから釘でおもいきりドアに打ち付けてる。

 ワイルドすぎるだろ。

 

 いや、これがその「悲鳴や卒倒」に該当するとはおもえない。

 

「この部屋から中のものが外に出たら回収がめんどくさいんだ。だから出ないように結界を張っているからな。ひとが通れるようにはしてはあるからそっとはいっておくれよ。ゆっくり入ると入れるが、急いで入ると弾かれる」

「あと我らは部屋に入ったら寝るからな。適当に見学したら出ておくれ」


 そう言うと2人は部屋のドアノブに手をかけるわけでもなく、扉に吸い込まれていく。2人が通って行った結果、私は取り残される。これ、「部屋に入る」とは扉を通り抜けるってことらしい。


「アオくん、なにこれ」

「ゆっくり入ればいけるんじゃないですか?」

「ええ~……」


 そう言いつつ扉にそっと手を当てるとすっと通り抜ける。それを見てすっと手を抜く。


「通り抜けるね」

「ですね」

「となると試したくなるよね!」


 勢いよく手を後ろに引き、今度は勢いよくドアに手のひらを当ててみる。

 そうするとガンっていう抵抗を感じ、通り抜けられない。 


「なんかわからないけどすごいね!」

「わかりましたから、見に行ってください」

「ぼくが行けそうだったら教えてね」

「は~い。いってきます」


 そう言うと同時にゆっくり扉に向かって歩き、そして、通り抜けることに成功した。

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