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第248話 浮世音楽堂(12)

 その「ハギ」と「フジ」は魔女さんに生き写しで見た目年齢小学1年生ぐらい。

 ただ、精霊と言うだけあって、見た感じ中性っぽい。実際はわからないけど。

 

「お招きありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします」


 とりあえず、挨拶だけはしてみる。

  

「挨拶とか久しぶりに聞いた。実のところ主様ぬしさま以外がこの家に立ち入ったことはないし、我らに会ったこともない。まあ、中を見て驚いてほしいぐらいだよ」

「ちなみにここは[オイスター]の王城から北に2キロぐらいの位置にある。先月王が亡くなったらしくてな、次の王たる王太子の魔法で結界、といいたいところなのだが[オイスター]の人間は魔力総量が低い。ゆえに探査魔法に長けるものもいないがためにここに気づく者が拠点を構えて以降ひとりもいない。いくら目隠し魔法をつかっているとはいえ、気づくものには違和感ぐらいあるだろうにな。国に結界が張られていることすら気づいていない有様だよ」

 

「まあ、ここには誰も来ないのだよ。で、今日はあの『救国の魔法使い』に代わり国に結界でも張りにきたのか?アイツが[オイスター]に結界はってただろ。アイツの使っている魔法は当代限りという条件付けのもとに大きな効力を発しているからな。王が斃れたらやり直しが必要だからな」

「しかしまあ、アイツ、今回来ないのな。代わりに来たのが主様の弟子か」

「お前が異世界の君だろう?全く結界魔法が使えるような気配がしない。もし使えるなら失礼」

「主様からは『異世界の君』と弟子が2人、ドラゴンの幼生が来ると聞いている」

 

 そう私が挨拶からの『救国の魔法使い』評や、私たちについてどう魔女さんに聞いていたかを聞いている間に実は、後ろから体調不良の気配がする。

 そう、イオくんがどうもこの一連のジェットコースターで酔っていたみたいなのである。

 

「イオお前さ、僕と同じ体の構成もってるのになんで酔ってるんだよ」

「いおいお、具合悪いの?防水袋いる?」


 元気でぴんぴんしている2人に介抱されているのはイオくん。


「あんな…不意打ち…うっ…」


 ギリギリで踏みとどまってはいるものの相当具合が悪そうでかわいそう。


「防御魔法だけじゃなくてああなったら重力関知を半減させる魔法展開させれば軽減できるだろ?チーズさんみたいに全部くらってもぴんぴんしていて喜んでる偉人もいるにはいるけどああいうのはまれだろ」

「まれ!まれ!」

「我が弟ながらこの程度で酔ってしまうなんてコントロールが甘いというかマジで情けない。少し外に出なさい外に!」

「……じゃあ兄貴が師匠の面倒みるんだろうな?うっ……」


 そこでアオくんの返事が止まる。

 イオくんは傍目にみても凄い真っ青になってるうえに涙目。しかもなんかさっきアオくん私の事を絶叫マシーン狂みたいな評してなかったかな?いや、気のせいじゃないでしょ。

 

「やっぱりお前はさ、別にナットに拘束されてるわけじゃないんだから、日帰りでいいからたまに外に出ろよ、外に。僕と違って転移魔法の制限されてなかったんだろ?」

 

 満面の笑みでニヤニヤしながらイオくんの背中をなでてあげてる。

 兄弟の関係性って兄妹とはまあ違うんだろうけど、なんだかんだ本当に仲がいい気がする。


「よし、イオといったな。これを飲むといい。一気にすっきりするぞ?」


 にこにこしながらハギさんがお茶を渡す。

 

「一気にいけ、一気に。ためらったらいかんぞ」


 フジさんにそう言われ、使い魔と弟子の差はあれど、兄弟子っぽいなにかに言われたことは従う、という気分だったらしい。


「ありがとうございます」


 そう言うとイオくんは一気にそのお茶をあおる。そして口に入ったと同時に、「苦っ!!!」といいむせかえる。苦いお茶といえばセンブリ茶とかあるけどそのたぐいのものなんだろうか。あれも確か吐き気に効いた気がしなくもないけど。


「飲んだな?じゃああとは安静にしとれ。いつまでも玄関で立ち話もなんだ。中に入れ中に」


 そう言うと、中に促される。廊下の左右には大量の本が無造作に積まれている。アオくんはイオくんに肩を貸してあげている。さっきのお茶で少しか復調してくれるといいんだけど。

 

 ◇


 案内されたリビングは、大量の本がおいてあった。というか、層をなしすぎて、魔女さんが言っていた「40年多分掃除していない」が現実だった、と思えるぐらいだった。


 大きなガラスで中が見えるようになっている冷蔵庫らしきものの中には大量の飲みものだけがおいてある。


「ここは勉強部屋だ。隣にラボがある」

「えっラボ!!」

「お?興味がおありかい?」

「私学校で菌とかの研究していたので」

「おーそうか、そうか。あとで我々の研究しているものを一部見せてやらなくもない!」


 魔女さんっぽい精霊の化身はとても嬉しそうにしている。

 で、背後から不機嫌の気配を察知。


「ソックスが真っ黒になっている……」


 アオくんである。微妙に潔癖感のあるアオくん。数々の汚部屋から掃除がされていない場所まであらゆるものを見てきた私には「まあ、あるよね」程度、本を置くにあたり湿度ないだけまし、ぐらいに思っていたが、それもまた人それぞれではあるよなあ、と。


「少年、そんなに靴下の汚れがきになるか。気にするなとは言えないが、ラボだけきれいだぞ、研究するときに異物混入は避けたいからな」

「そうなんですね……こんな光景最近も見たばっかりですよ……ああ、腹立たしい。この部屋のホコリはわざとですか?掃除するきがないですか?どっちか教えてください」

「掃除してないだけだぞ?」

「そうですか。わかりました」


 そう言うとアオくんは颯爽と杖を取り出した。

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