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第247話 浮世音楽堂(11)

「僕、なんとなくわかっちゃいました。精霊に姿を与えるとき、自分を転写しちゃったんですね、師匠。まるであにさんと天くんのような…」

「オレもなんかそんな気がするよ……」

「それって大好きって意味だよね!ユウにいちゃんが言ってた!姿が一緒なのは大好きの証拠だって」


 にこにこしている天くんを見て、まさか魔女さんは多分めんどくさかっただけだよ、と誰も言えなかったどころか、兄が手を当てろと言われて当てたらすっかり卵の中の遺伝子がどういうわけだか書き換わって天くんの姿ができあがったとか、絶対言えるはずもない。むしろ誰も口を滑らすな、と言う話だ。

 うっかり思春期時分になったときに誰かが口を滑らすとかそういうことは、無いように願いたい。


「大好きか。40年もこっちに来てすらいないがな。まあ、自分たちは草木が無くならない限り寿命は永遠みたいなものだから、まあ気が向いたら来るだろうとは思っていたが、ここしばらく研究成果すらプレゼンする機会にも恵まれないのは完全に魔女の落ち度だな」

「そうだな。もう40年前に研究したものなんて10回以上はブラッシュアップしてるからな。もう当初研究結果と比較したら全く見る影もないわ」

 

 ははははは と2人揃って笑っている。


「まあ、こんな玄関先でもなんだ。寒いだろう、家に入れ。家の暖房も役立たずで冷えてしまうからな」

「では、お言葉に甘えて。みんな、行こう!」


 相手は精霊と聞いた。こういう時振り返って声をかけるとかそういうことをすると、機嫌を損ねるとかそう言う話を聞いたことがある。ということで招かれたわけだから、点呼もせずみんなついてくるように声かけだけをして前へ進む。


「君、面白いね」


 家に立ち入り玄関に差し掛かってそんな声が聞こえたところで、世界が暗転した。

 右手と左手、それぞれの手が子どもの手に握られる。

 

「君が迷わなければ、続く3人も問題なく我らいついてこれるだろう」

「我らが導くのだからな、迷われても困るな。主様の寄こした客でもあるしな」

「凍結の魔女さんとの付き合いは長いの?」

「おそらく精霊という存在に気が付いたんだろうな、最初はただの好奇心っだったのだろうな。 ■■ 様が精霊に名を与え、形を与えたという実験例が我々だ。結構この姿かたちには満足している」

「さあ、そろそろ、上昇するぞ。話していると舌を噛むぞ、しっかり構えておけ」


 そう言われたかどうかのタイミングで転移のときにかかるGの3倍ぐらいのGがかかり、びたっととまる。なんかこれ、急上昇急降下するフリーフォール型アトラクションなのでは?と思ったとたん、想像を裏切ることなく急降下を開始。明らかに上昇した距離をゆうに超える距離を急降下急旋回急上昇をする。どちらかというと絶叫マシーン好きでよかった。風景はなんというか、サイエンスフィクションで見るような星間飛行をするようなワープの風景。

 

 まあそんな感じなので、途中で楽しくなってキャーキャー言いながら心の底から楽しんでいたら、どちらがハギでどちらがフジかわからないけれど、小型魔女さんの双子に「こんなもの好き珍しいな」と言われてしまった。


 ◇


 アトラクションの時間はおおよそ3分程度、地面にしっかり足が着いたと思ったら、普通の民家の玄関だった。

 

「ようこそ、オイスターハウスへ。あの移動でへばらなかっただけで君は合格だ」

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