第22話 ネルド『城下町とギルド』(1)
[ネルドにようこそ]
先ほど遠目に見かけた衛兵は城門をくぐる際、特に何をするわけでもなく、呼び止められることもなかった。
石でできた高い塀に囲まれたその国の城門を超えると城下町、入ってすぐの立て看板[ネルドにようこそ]そう記載がある。
とりあえず、右も左もわからない上に、ステータスボードには身の回り3メートルぐらいのマップしか見えないため、立て看板横の露店で『マップ・国の制度ハンドブック・観光ガイドセット[ステータスボードにインストール可能な魔石つき]』を2つ購入し、近くにあった広場のベンチに陣取る。
広場の真ん中に大きすぎはしない噴水と街灯があり、その周りに銅像が2体立っている。
ネルド国首都ネルド。
王都と取り囲む壁をこえると城下町、その先の高台には再び城壁があり、城下町から城壁までは取り囲むような長い階段が延びている。
城下町も高さが何層にも分かれているので立地的に山を切り崩して作った国なんだろう。
城にほど近いあたりには冒険者ギルド、商人ギルド、研究者ギルド、医療ギルド等各種ギルドが立ち並ぶ。
国の制度ハンドブックによると、都市部であれば成人と同時に、それ以外の郡部であれば必要としたタイミングで貴賤問わずギルド申請所に申請を行い、全てのギルドに登録できるよう基礎情報が録される。その後は各々のギルドを訪れ所属登録を行い、分野ごとの素養を伸ばしていく。磨きたい分野に特化するもよし、自分の生来の適性に合わせ複数ギルドのランクアップをするもよし、全ての登録を行い知見を広げるもよし、という公的支援だ。
登録される情報は悪用を避けるために名前と静脈認証、血液情報のみ。
冒険者ギルドでは、高ランク者のみ該当ギルドで呼び出すためのデータベースとして保管、その他ギルドではその”必要”となる内容に応じてステータスボードを使用した呼び出し要請が行われるようにシステムが組まれているようで、ギルドのランクアップシステムもギルドの分野により異なる。
ちなみに各国のギルドでは、魔石を使用した静脈認証に似た認証機器で現在のランクがわかるようになっていると書いてある。
医療ギルドや研究者ギルドでは、なにか大規模災害が起きたときは適合するレベルや研究内容を所持する冒険者が積極的に呼び出しをされたりといった協力体制が敷かれている。
血液検査はとくには書いていないけど、大きな怪我をしたときに対応するために行っているものかな?剣と魔法の世界だから、一概には言えないだろうけど。
因みにギルドは登録料は無料であり、各国が出資かつ、素材・資材・技術の売買による積み立て・運用により成り立っている。
アオくんによるとこの説明は各国のガイドブックにはそれぞれ絶対に記載するように義務付けられていること、才覚さえあればいくらでも開始時期が違っても取り返しがつくことをふまえ、平等なシステムとしてこの世界で構築され、受け入れられているという。
「私も早く登録しに行かないと~というか、ないと仕事にならないか」
「おそらく商売もするでしょうし、狩りもするでしょうし、ナットの復興は別としてまず第一にこの世界で生活していくにあたって確実に必要となるものですから、ぜひとも行きましょう」
ちなみに銀行口座などもこのギルドカードに紐づけられているとのことで、要するにマイナンバーカードみたいなものとおもって良いのかも。
ほかにも初めて都市部に来た時にやったほうが良いことがチェックシートとともに記載があるので田舎者にも優しいシステムすぎて助かりすぎる。
そして次にマップと観光ガイドを見る。
マップにはここの城下町と城の面と、裏面はネルド国全体がわかる面の2面構成で、大きい面には昨晩から今朝にかけて宿泊した宿の記載もある。
そこでも、やっぱりナット王国の部分は完全にブランク、なかったものになっている。マップのその道にはどこに至るかの記載もなく、魔女さんの魔法の影響の強さをここでも知ることとなった。
そこまで見た後に、ステータスボードの右上にある四角いウインドウ、魔石のインストールホールについてアオくんに教えてもらい、そこに先ほどのガイドマップに付録でついていた、ネルドのガイドブック・マップ・観光ガイドの【ステータスボード】インストール用の魔石を乗せるとすっと吸収され、私のステータスボードに該当情報がインストールされた。
便利だ。




