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第214話 密室ノ会・祈(7)

 朝から天くんは虫取りルックに身を包んでいた。兄の見立てらしい。

 私はTシャツに緑色のつなぎ、上半身部分を腰で結び、兄はTシャツにデニム、魔法使いさんはTシャツにハーフパンツ。なんかみんな軽装だ。

「巨大なトンボなんでしょ?なんか速そうだよね」

「切り傷とかできないように気をつけろよ!すぐ回復魔法はできるけど」

「ぼくが返り討ちにします!この網楽しいですね!」

 天くんはまるで魚釣りで掬い上げるような、巨大な網をぶんぶんまわしている。見た目は結構華奢な少年だというのに、パワーが無尽蔵すぎて焦る。そして、武器の点検をしながら呟く。

「今日のミッションはトンボの数を減らして畑の襲撃を防ぐってことだから、群れを形成できないぐらいの殲滅戦ね。了解了解」

 その言葉を聞き、兄がぎょっとした顔をする。

「俺の妹が物騒だ。いつこんな戦闘民族に…」

「昔からだよ!しってるじゃん兄さん!」

「それはそうだけどさ~お前年々物騒だぞ」

「気にしない、気にしない」


 ◇


 玄関にはミルクスタンドホッカイドウの常連さんが貢物としてもってきた、アトル産の空飛ぶ絨毯がある。西の森にはこれを使って行くことになった。

「よし、準備はいいな。絨毯のコントロールは一番慣れてそうだからノリ、よろしくな」

「わかりましたよー」

 そう言うと、指揮者のように手をふわっと振ると同時に、絨毯が地上から1センチぐらい浮く。その絨毯は4人が余裕で乗れる大きさ、2畳程度あった。

「これ、安定感どんなかんじ?」

「車でも、飛行機でもなく、アトラクション?でもなぜか振り落とされない」

「あとらくしょん」


 それは要するに急上昇急降下急旋回するという訳ですか。


「お前そういうの好きだろ?しかもアトルには行ってるんだろう?」

「行ってるけど乗ったことない!見かけはするけど。そしてジェットコースター好きだけど…ベルトもガードもなし?!」

「不思議とむち打ちにもならない。ファンタジーの世界なんだから、そう言う事もある」

「ええ~…」

 

 不安なことしか言わない兄。

 

 絨毯に順番に乗り込み、座る。そうすると、ぐんっと上空に浮き上がる。その勢いといえば完全にフリーフォール系アトラクション。そして上空で停滞したと思ったら急にまた前に向かって飛び出していく。オープンカーの速度を超えている気さえする。なんだこれ、ヤバイ。舌を噛みそうで言葉を発することさえ憚られる勢いで目的地まで飛ぶ。しかも障害物があれば急カーブや急上昇、急降下をする。

 何故か振り落とされないし、酔いもしないけど、とりあえず風も感じるし、何よりもメンタルに来る怖さ。

 安全、なんだよね?なんだよね!!!という不安が常に付きまとうのがアトル原産の乗り物か。

 志摩とアオくんのまえで醜態をさらさずに済んだ…とかかなりしょうもないことを考えつつ息つくこともできない間に目的地に到着。またもや今度は急降下のアトラクションと言う感じで、地面スレスレに着地する。


「おもしろかった~!!自分で飛ぶより楽しいね」

「でしょ~!これはこれで面白いとおもいますよね」

 天くんと魔法使いさんはふたりでにこにこ笑いあっているが、私はそうはいかなかった。

 結論からいうと面白かったといえば面白かった、が、この乗り物が常態していること、みんなが平気なこと、しかも魔法使いさんがコントロール慣れしているという状態でこのすごい動き。

「もしかして、キツかった?」

「キツいに決まってるでしょ!!でも、面白かったけど、初回にはマジで心臓に悪い!」

 ちょっと一気に叫んでしまったが、それを聞いた魔法使いさんがこんなことを言う。


「多分私以上の安全運行する人、居ないですよ?慣れてくださいね」


 これで一番難易度が低い、らしい。

 一般的な人はどんな乗りこなし方をしているのかな、いや、知りたくないや、と思った。

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