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第210話 密室ノ会・祈(3)

 姉さんが新たな呪いに汚染されていた。

 師匠はもう姉に辛い目にはあわせない、と啖呵をきっていた手前、ばつがわるそうな顔をしているが、これは姉が自分で勝手に買ったとしか思えないので、そこは気に病まないでほしい、と伝えた。

 

 確か姉は『悪い環境、病気、傷害』を瘴気として取り込むと言う話は聞いていたが、呪いをも取り込んでしまうとは我が姉ながら……。しかしあの王の、呪われた姿。王冠を戴くスケルトンの王のようで、この国の亡国度がアップしすぎだ、って思う。

 姉の力は、身内を護ることを主な目的とし、他者の瘴気を蓄積する自己犠牲が過ぎる特殊魔法。それをあの王は理解しているんだかいないんだか。すぐ思い出さないだけ、姉はより大切なものなんだろうな、って勝手に理解することとしよう。


「ちょっとお前たちいいか?」

 例の部屋から出て、シンさんを救出し、夕飯を共にしたあと、師匠から声がかかる。

「私の名前、思い出したと言っただろう?私にこれが来たと言う事はそろそろチーズも思い出す頃が来ると思う。その時周りに誰もいないとまずいので、アオ、行ってくれるか?」

「いいですけど、王の記憶はいいんですか?」

「王の記憶は氷那の献身を考えても早い方がいいともいえるし、安全をとって放置するのがいいともいえる。王が死に至るような呪いを氷那が緩和してあの姿で留まっているものとみた。結構ギリギリの線だ、でもこれを王が知るのは氷那のことを王が思い出した時でいい。一番いいのは……まあ、そのためにわたしがこれから作戦と魔法を練る。決行のタイミングは追って伝える。急いだわ悪手だわといったら完全に手に負えないからな」


「じゃあ、とりあえず僕はチーズさんところにいきますね。って転移魔法使えないんですけど!」

「あ、そうか。お前わたしの力かチーズの力で転移してたもんな。危なっかしいから教えてなかったうえに使えないように制限かけてただけだが」

「危なっかしいってなんですか?!」

「え、アオ、自覚なかったのか?お前頭に血が登ったらなにやるかわからないってことだよ」

「なにそれイオ、いつ僕そんなことしたよ」

 

 そんな風に思われてたとか、心外甚だしい。


「そんなむくれた顔をしたところで、誰だ、お前の故郷を焦土にしたのは」

「……僕です」

「魔力覚醒直結で魔力暴走したうえ、双子のオレまで巻き込んで大暴走させたのは」

「……僕でした」


 師匠と弟からの冷静なツッコミ。穴があったら入りたい。そうだ、そうでした。頭に血が登った僕がやらかしました。

「お前に転移魔法なんて教えたら何かあったらどこまで何しに行くかわからんからな!でもな、こうなると布陣を敷くにしても不便になってくるわけだ…のんびり何年かかってもいいぞ~っていう状況ではなかったことがわかってきたしな……よし!決めた」

「え!教えてくれるんですか?!」

「教えるが、申告制にする。わたしが同行しない場合、チーズに同行しない場合に限り、わたしへの許可制」

「幼い子どもみたいじゃないですか?!」

 

 そう言うと、イオが肩に手を乗せてきて、残念なことを言い放つ。

「お前は無鉄砲さにおいて信用がない。信用を勝ち取れるまでがんばれ、そうすればお前は自由だ」

「イオ、お前はどうなんだよ?」

「オレは自由だよ。お前も頑張れ」


 まさかの、弟より出遅れが判明。

「ただ、戦闘力、チーズの護衛と育成貢献度についてはしっかり評価しているから、必要なのは感情のコントロール、その一点だけだ。今後も励め励め。まだ15歳なんだから伸びしろだらけだぞ」

「オレもなんかアオより出遅れてるんじゃないかって思って悩むことがまあまああったけど、出し抜いてる部分もあったわ。今気づいたけど」

「それ、慰めになってないんじゃ」

「だって慰めてないし」

 

 弟よ。


「というわけで、早速許可するからさっさとチーズと合流しろ。こちらの動向がどう知られているかはわからないからな、用心は怠らないように。今はアイツとチーズの兄がいるから安心といえば安心できるが、別行動するとなるとチーズと天となるだろうから、不安が大きい」

「特に天くんがなにするかわからないですからね」

「そうお前が思うように、私がお前に対してそう思わせないようにしっかり成長しておくれ」

「……はーい……」

「こら、不貞腐れるな。期待はしてるからな!ただ、感情のコントロールは失うな。感情をなくせ、と言う意味ではないからな」

「わかってますよ!!」

「……はははははは!兄さん、元気出てきたようでなにより」

「は?!」

「姉さん目視してからちょっと様子がおかしかったから。姉さんが蓄積した呪い今すぐひっこぬいて相手に全部返してやるっていうようなギラついた目してたよ。ただ今回、相手がそもそも生きてるかどうか、という疑問もあるから本当にちゃんと考えて動いた方がいい」

「むしろ、なんでお前そんな冷静でいられるんだよ」

「横で頭に血が登ってる兄さんみるとなんか、すっと冷静になる」

「マジで!」


 なんか、ちょっと自分に反省した。

 

 そして師匠と弟に一礼し、初めて自分の魔力を使って転移魔法を展開。

 シラタマへの転移ゲートに向かった。

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