第205話 ナット温泉郷・湯治(2)
実のところ数日間菌糸王国にいたおかげか、一応体を清浄に魔法でしてはいたものの、やっぱり洗い流したくなるところであったので、せっかく閃閃と閃電が造った温泉に、ダンジョン組みんなで向かうことになり、一度西の離れの中庭に集合した。
閃閃と閃電はと言うと、ちゃんと天くんの通信一つで何事もなかったように目が醒めた。ただ、その後がものすごくめんどくさかった。この2人は【神代】ダンジョンに囚われた記憶が全く持って飛んでいた。さらわれたと同時にまどろむ様に「瞬きの窟」で過ごした時間をリバイバルしていたがために、感覚的には完全に夢だったようで、目が醒めたら天くんがいないうえに、簡単に入ることが出来ない国に行ってしまっている、という事実が受け入れられなかったのか、思い切り、赤ちゃんのようにギャン泣きした。
呆気に囚われるオレたち。でも下手に声をかけて何かおきても手に負えないので泣き止むまで小一時間放置した。なにか反撃されてもものすごくめんどくさい。
結論なにもしなかったのが正解だったようで、突然泣き止んで、ケロっとした。
「すっきりしたな、閃電」
「ほんとにな、閃閃」
「問題はいかようにして天様の元に行くか、だな。竜体に変態して空を飛んで行くルートはつかえないんだろ?正式なシラタマに行くルート、我らにもたどれるのだろうか?」
いや、正規ルートを辿れば普通に行けると思うけど。オレはその緩和要件を【ステータスボード】に持っていないから、転移ではいけないけど。簡易で行き来できるのはチーズさん、アオ、うい、天、兄さん、そして救国の魔法使い。あともしかすると師匠は持っていてもおかしくはない。
「んー…じゃあ、次、兄さんたちが食事造りにこっちに来るタイミングにあわせてあっちで拠点がちゃんと作れていた場合に限り、天くん連れてきてもらって、天くんも一緒に正規ルートでシラタマに行く?」
「ぜひ、お願いしたい」
「思いのほか、主が居ない状態が不安すぎて不安定になる。うっかりすると危ない」
アオが思い切り譲歩した譲歩案を出したものの、これも不確定要素が多い。許可が下りれば、なので。これで言った言わないになって暴動を起こされても困る。
そこにまた別の、強者のオーラが闖入する。
「ははは、我が息子は生後そんなに経ってもいないのに他種族の竜をたぶらかしよるわ。愉快愉快」
そこには今日は緑色のワンピースを着たウララさんが立っていた。そして愉快とは程遠いオーラをバキバキに発していた。一言で言うと「我がままいってんじゃねー」っていうオーラ。見た目はたおやかな姫だというのに、どんなことになってるんだこの白竜。そもそもこの底知れないオーラの持ち主を拘束していたという他種族の竜ってどんな実力者だったんだろう。ほぼ兄さんが一撃で倒したと噂で伝え聞いてはいるけれど。
「息子に対して毒になりそうな気配を感じるな、お前たち。よし、一度私の傘下に入れてやろう、口答えや拒否は許されない。吉祥の白竜の勅命じゃ。その働きによっては早期に息子のところに行かせてやることもやぶさかではない」
ウララさんは閃閃、閃電それぞれの顎に指を這わせたあと、肩を叩いた。そうすると2人の虹竜は焦った様子を見せ、背筋を伸ばす。
「本調子に戻ってきたな、結構結構」
そう言い放ち手を叩いているのは、小さく戻った我らが師匠。なんかさっきまで見ていたスレンダー爆美女みたいな様子とちがってなんかちっちゃい。あのキノコ空間はまやかしを操るキノコの精が造った空間だけあって、まやかしはダンジョン主のみの仕様になり、その他の侵入者はすべて生来の正しい姿、正しい能力になる、といった性質があった。
そこにおいて【人型変異】だけは適用外であったのも不思議だった。人型変異は暴かれず、師匠の見た目偽装は暴かれた。一体どんなルールが原因でこんな適用外で起きてしまったのか、全くもって謎である。
きっとオレたちが師匠からもらったこのダンジョン主のオーナメントが育てば謎はきっと解かれることになるだろうから、漠然と受け入れてもいいが、今のうちにしっかり推理しておくのも悪くない。




