第18話 ナットから隣国への出立(5)
「チーズさん、カレーって本当に美味しいですね!!」
そうでしょう、そうでしょう。
コテージに戻ってからも興奮ぎみなアオ君がとてもかわいい。
「まだまだ私の故郷の料理はいっぱいあるから、家庭料理レベルだけど作ってってあげるね」
そう約束しながら【無限フリースペース】設置のハウスからういを出す。
容量無制限なことをいいことに、家から持ち出せて当面使えそうなものをぼこぼこと突っ込んできたため、フリースペースというか、目的別プレハブ的な倉庫っぽい何かが立ち並んでるようになっている。収納した場所もしくは物を思い浮かべるだけで必要なものに到達するものだから闇雲感もなく、とても便利なことこのうえない。
ナット滞在から数えてここ数日でういはすっかりアオくんになつき、おやつくれ!とかボール投げて!とか積極的に構ってもらうように頑張っている。
ところで本当に改めて思うけど【動物言語:レベル1】は、たいしたことがないらしく、ういとの関係について何が変わったのかまったくわからない。むしろ普段から積極的に話しかけているから、私の行動は変わってはいない。ついでにういの反応も変わらない。
◇
「あっ忘れてた」
突然アオくんが声を上げる。
どうも、魔女さんから指令を受けていた定期連絡を忘れていたそうで、一応魔女さんも転移でくることはできるけれども、国外に滞在できる時間が短いことから緊急事態でもなんでもないのでこちらからの更新で、状況を説明するようにしていたとのこと。
アオくんは私がドロップで持っている魔石とは全く違う、3センチはある青く美しいそれをテーブルに並べる。そこに両手をかざし、魔力を籠めると石は空中に浮きあがり、VRモニターのような画面が浮かび上がる。
そして画面の向こうにはイオくんがいた。
「アオ!さっき食べてたカレーとかいうのオレも食べたい!あとあのボードとかいうやつ!オレもやってみたい!」
見てたんかい。
イオくんってなんかいつもおとなしそうで子どもらしい感じがあまりしていなかったんだけど、猫かぶっていた疑惑。
「いいだろ~!最高に美味しかったよ!」
にっこにこしていってるよアオくん…
「アオ、定期連絡ご苦労。遅かったがな」
ちょっと魔女さん、言葉にとげが。
「チーズ、順調な旅程でなにより。明日には隣国につくが、わたしの魔法の認識阻害のせいで隣国の名前が不明瞭のままだとおもう。ただ、隣国に着いたら認知できるようになるはずなので安心してほしい。そしてわたしにもナット帰国したときにでもカレーとやらをつくっておくれ」
魔女さんもカレーに興味津々だったのか。仕方ない、現地での代替えがまだできていないし、材料は使い切らず残しておいて、こんど戻った時に作ってあげよう。
意外とモヤ王も食いしん坊だから見ていたのであれば、きっと画面外でうろうろしてそうだ。
そして、今の言葉で考えつくことがひとつ。
目的地を隣国、隣国といっていたけど国名をまったく認識していなかったというか、気にしてもいなかった。
これ、魔女さんの魔法のせいだったんだ。
カレートークが終わったあとはアオくんが魔女さんとイオくんに業務連絡?というか情報共有をしているのをういを膝に乗せ撫でながら見学し、通信が終わった。
ボードにイオくんが乗りたいとは言っていたけど、使用することについて何も突っ込まれなかったし、明日移動に使っちゃおう。




